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うつくしい経営の実現 / 2009年6月(設立9周年記念講演会)

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うつくしい経営の実現
講師: 大久保寛司氏 (人と経営研究所 代表)

 みなさん、こんにちは。例年のこの時がやってきました。私にとって10回目、実質11回目ですか・・・。実は私は1泊2日のセミナーでも、講演でも、いつもまず事前に内容を深く考えることはほとんどしません。それが良い悪いは別ですが・・・。しかしこの茨城の講演だけは実は半年前からしゃべる内容を考えています。何もさして浮かばないんですが、浮かばないんですけど考えるんです。結構真剣に。
それでまず題名を決めます。題名を決めて、その題だったら自分は何をしゃべったらいいだろうという順番で考えるのです。そういう意味では私にとっては非常に素晴らしいトレーニングの場というか、ある意味厳しい場ですが、しかしこういう場があるからまたいろいろ考えられるのかなということでは、大変感謝をしている次第です。

<うつくしい経営の実現>
 今回、「うつくしい経営の実現」という表題、演題というのですかね、これを考えました。約半年前です。演題を考えておいてさて何なんだろうということです。「うつくしい経営」というのはどういうものだろうなとずっと考えて、最後は結局いつもの雑談になりますけども・・・。
なぜこんなことを考えたのかなというと、経営にうつくしさというものが大事じゃないかなということがフト浮んだんです。そうするとうつくしくない経営というのはどういうのかな。見苦しいとか、みっともない経営というのは多分あるだろうなと・・・。自分だけ儲かれば他はどうでもいい、相手なんか潰れればいいんだというのが美しいかというと、これは一まず美しくないなということです。
それから、自分たちは非常に良いのだけれど、その自分たちもその会社の中の一部だけ。多くの人は結構苦しんでいる。これは美しいかな?やはり美しくないだろうなというわけです。
それから企業ではいろいろな関係の業者さんというか、ビジネスパートナーという存在があるわけですけども、そういう所を痛めつけておいて、最高の利益を追求する姿が本当に美しいのだろうか?
私の目から見たとき、それは美しくないなと感じたのです。そしてうつくしい経営をする企業がたくさんあったら、世の中はすごい幸せになるんじゃないかなと・・・。

この場で随分ご紹介してきた企業、伊那食品工業が昨日もNHKの「クローズアップ現代」に出ていました。塚越会長、最近メヂアによく出てみえます。その前はNHKの「経済最前線」に出ておられました。今のテレビのビジネス番組でこれを見たらどうですかというのは、やはり「プロフェッショナル」か「ガイヤの夜明け」か「カンブリア宮殿」、この三つだと思います。伊那食品工業はやはり全部から依頼が来ているわけです。でも断っていて・・・。ああいうのに出るのは良くないという思いがあるようです。ただ「経済最前線」は生でしたし、「クローズアップ現代」も非常に前向きに捉えられたので出られたようですけども・・・。

<伊那食品はうつくしい経営そのもの>
ずっと考えていたら、うつくしい経営というのは、まさにいつもこの場でご紹介している企業そのものだなという結論に至りました。
それは何かというと、伊那食品であれば「いい会社をつくりましょう」というのが社是になっています。その「いい会社をつくる」という「いい会社」の定義は何か。誰に聞いてもいい会社と言われるのがいい会社。じゃあ誰に聞いても、というその「誰」はどこにいるのか、どういう人たちなのか。当然お客様からは支持されなければだめです。地域の人、協力業者さん、もちろん従業員、誰に聞いてもいい会社と言われるのがいい会社。究極の定義だと思います。
今のこの定義に沿って考えると、実は今日の会は経営品質協議会の会であるわけですけども、経営品質で定義しているところの考えかたそのものなのです。やはり地域に喜ばれ、お客様に喜ばれ、従業員も喜び、関係会社も喜び、会社全体としてもきっちりと業績を上げ続けるということが大事であるわけです。そういう意味では見事に合致しているなということです。

伊那食品工業の塚越会長には何十時間もご指導いただいたというか、お話をうかがうことができて、その中でたくさんのことを教えていただきましたけども、本当に周りを企業を取り巻く環境を大事にされますよね。
美しいというのは、長野県の伊那市、今月末に伊那フォーラムがありますけども、伊那食品工業の建屋のある所をご覧になられたらいいと思います。まず本当に物理的に美しいです。丘陵地帯のような所で、林の中に建ててあるわけです。普通だったら、いろいろな効率を考えると木を沢山切ってしまいます。ではなぜあった木をそのままにして・・・。レストランの入り口を見ると分かりますけども、レストランなんかは大事な木を活かすというので、屋根に穴を開けてその木だけ残してありますからね。それで美しさを保っているわけですから、まさに美しい、見た目がまず美しいというのは事実なんですけども、なぜそういう建物を造ったか。これが大事です。それは何か!「美しい環境で仕事をしたら社員が幸せでしょう」と。そこからきているのです。

<基本の判断軸>
 伊那食品の塚越会長の基本の軸は全て従業員、社員にとってどうかが一番大切なんです。だから社員にとって良かれと思うことをまずやっていこう。これが基本です。
非常に大事だと思うのは、何が大事かというと、基本にどんな思いを持っているか、もしくはどんな判断軸で企業経営をやっていくのか、組織経営をしていくのか、もしくは自分自身の人生を生きていくのかということも含めて同じだと思いますが、どういう判断軸を持っているかというのはものすごく大事だと思います。
企業で社員の幸せを最初の優先順位トップの基軸に置いている所がどれだけあるでしょうか。その対極が去年から今年にかけてのアメリカのいろいろな企業だと思うんです。儲かるのが善。善、というか良し。儲からないのは愚かでダメな奴だという発想でしょう。そこに周りを幸せにするという発想はまるでない。欲の塊ですよね。合法的ですが詐欺にちかいことも多かったと思います。
着ている服は上等で、住居も豪華、食事も上質のものをとっていても、見方を変えると醜い集団、人として醜い生き方をしている人たちだという感じがします。一人ひとりとお会いしたらそうじゃないのかもしれませんが。そういう生き方もあるのかもしれないけれど、少なくとも私はそのような生き方はいくら財をなすことができたとしても、それが確実であったとしても絶対に選択しないだろうと思います。

<MESHサポート>
 ちょっと話を変えますが、これ、ちょっとメモしてみてください。MESHサポート、これでインターネットを検索すると出てきます。
ドクターヘリという言葉を聞かれた方がいらっしゃると思います。僻地医療です。ヘリコプターにドクターが乗り込んでの医療活動ということです。沖縄にMESHサポートというNPO法人を創られた小濱ドクターという方がいらっしゃいます。先般沖縄でリッツ・カールトンの高野さんと二人でその方のお話を聴く機会がありまして、大変感動しました。
彼自身は東京のそれなりの病院で働いていて、言ってみれば出世コースに乗っていて、そこは最新の設備と最新の技術、かつ素晴らしい仲間達、その中で働いておられたのです。何の不自由も不満もありません。ところが自分の中に何か物足りなさがあったんですね。それで10年経った時、彼はどうしたか。自分は何が足りないのか、何を求めているのか分からないけれども、どこか僻地に行くと言うことで、沖縄の伊江島という所に飛びます。
その当時はやはり医療の世界というのは大学病院のトップがいちばん偉くて、その人がある意味人事権を持っていて、医局というか、すごい世界なのです。その先生が若い先生に「はい、島に行ってらっしゃい」と・・・。そして島に行くわけです。
あの仕組みはある意味優れています。なぜか。無医村地区がなくなるのです。あの制度というのはマイナス面もあったのですけども、相当プラス面もあったなと・・・。あれを自由にした結果、無医村地区がたくさんできてしまうのです。かつ強制で行きますが、2、3年、だいたい2年ですよね。それで戻ってくる。ある意味伊江島の診療所には自分自身で手を上げて来たドクターというのはかつていなかったのです。彼は自ら手を上げて行くわけです。
そこでは大病院で手術をしている時とは全然違うのです。昼間は学校に検診に行ったり、寝たきりの人を介護したり、ありとあらゆる患者さんをたった一人で全部見ていかなければいけない。その医療設備、仕組、その他ものすごいしっかりしたものを彼は4年間で作り上げるのです。
その途中であることに遭遇しました。それは何か。そこにも米軍の基地の一部があるのすが、その中で自動車事故を起こした農民の方がいたわけです。当然担ぎ込まれる。でも怪我の程度が重い、それなりの病院で・・・。診療所では無理です。手術をしなければならない。その時に米軍の兵士が目の前で電話をしたのだそうです。15分後にヘリコプターが飛んで来た。自衛隊や海上保安庁に頼んでも1時間や2時間かかるそうです。それが15分で来た。なんだ、これは・・・。というのは相当な大怪我をして血を大量に出しているとか、体内が相当傷んでいる時には、5分、10分というのはそのまま命にストレートに関係してしまうわけです。1、2時間かかると思ったら、15分後にヘリが飛んでくるわけです。
何なんだというところで、また彼に一つの疑問が出てくる。ある意味追求したい課題です。そういう医療制度を日本で構築することはできないのだろうか。それで世界中のいろいろな航空医療制度を見ていたら、実はオーストラリアがドクターヘリというか、ヘリコプターを使っての医療活動の制度、仕組みがいちばんしっかりしている。4年間の伊江島で医療体制が落ち着いたところで、制度仕組み、サポート体制ができ上がったところで、今度彼はオーストラリアに行くのです。
そこで2年間、ものすごく勉強されるわけです。ドクターとしても勉強される。ドクターですけど、かつ飛行機のライセンスも持っているのです。
そして今、沖縄に戻ってある病院の副院長をされていて、その病院でドクターヘリをやるんだと飛ばしたんです。年間1億数千万円かかるのです。やり出したんですけど予算が続かない、そうじゃなくても病院というのは黒字経営できていない所が多いわけですから、行き詰まってしまって、今へリがストップしてしまっています。
でもドクターヘリの存在というのは大切だということで、今は国も県も力を入れて予算をつけます。残念だけど、彼のやっている内容では国の作った条件に合わない。現実に半年間で二百何十人救われているのです。驚きました。そのうちの3分の1は沖縄の人じゃないそうです。観光客です。二百何十人命を救っているのです。にも関わらず認可が下りないというか、予算がつかない。
HPの中にいろいろな思いが書かれています。動画も入っていますので、ご覧いただきたいと思います。
大変に感動したこと、いくつかありますけども、実際映像も見させてもらって、そのドクターがサポーターを募るために休日にスーパーマーケットのイベントに出て行って頭を下げて回っているのです。普通ドクターってそんなことしないです。でもものすごく志が高いわけです。そうするとその志に共感して、その医療チームのメンバーになった一人は鹿児島の大病院の院長をやっていた人です。その方が一メンバーで入ってくるのです。そうやってそういうメンバーが医療チームを作っているのです。その人たちもみんなで、イベントの時にはイベント会場に出て行って旗をぶら下げて、机を出して、そしてサポートメンバーを募るのです。頭を下げて回っている。頭を下げてやっておられるのです。すごいなと思います。

<思いの大切さ>
 その時いちばん思ったこと、いくつかあるんですけども、思いの高さというか、強さですね。思いはただ一つです。救える命を救いたい。ヘリで運べば、特に沖縄の離島以上に大事なのは北部地区らしいのですけども、救急車でも片道1時間以上かかってしまう。往復2時間になっちゃう。ヘリでパッと行けば10分ぐらいで行くわけです。命が救われるわけです。その救える命を救えていない。だからただ一つ、救える命を救いたい。それだけなのです。その思いだけでやっている。
やっぱり目が輝いているんですよね。生き生きされています。思ったのは、そういう所には自分のことなんか放っておいてでも命を救うんだという、そういう思いで自分はドクターになったんだという人がまた集まってくるんです。看護師にしても、何にしても・・・。
何を申し上げたいかというと、そこからいちばん申し上げたいのは、思いの大切さなのです。全てはここからスタートするなと・・・。いかなる思いをもっているか。事業経営にしてもそうです。組織運営にしてもしかり。お一人おひとりが仕事をするときも同じだと思います。皆さん、日頃どのような思いで仕事をしていますか?

今日の会はなぜ実現したんでしょうか!鬼澤さんが茨城県でも経営品質協議会を立ち上げたいと・・・。全国にたくさん協議会がありますけども、そこには企業が主体的にやった所、経済同友会、生産性本部、いろいろな組織があって、そこが立ち上げていた。鬼澤さんの水戸は何もない。でもあったんですよ。一番大切なものが。彼の思いです!この経営品質の考え方を広めることによって、たくさんの企業を元気にして、茨城県を良くしたいという思いからスタートしたわけです。私も彼のその思いに共感してお邪魔させていただいているわけです。思いってすごく大事です。

さっきの伊那食品工業もそうです。企業経営を行うことにおいていちばんの基本の思いは従業員が幸せかどうか。そのように考えていると色々なことを為すときにその後展開してくることが変わってくるのです。短期の利益とか瞬間の売上増に優先順位を置くのとは全く違います。対極です!何が違うかというと、いちばん従業員にとって不幸なのは、企業そのものがなくなることだ、職を失うことだと・・・。ならばどうしたらいいのか、企業は永続しなければいけない。永続するためにはどうしたいいんだと考えていったときに、急成長は悪だという結論になったわけです。

<急成長は社員によくない>
 なぜか。急成長したときには必ず収縮が起きる。その縮む時に雇った人や設備を切らなければいけない。すなわち人を幸せにしていない。だからだめなんだ。そういう展開ですよね。
みなさんもご存知かもしれません。寒天の技術を作ったときにすごいものができた。水に溶くだけで美味しい寒天、いろいろなゼリーができてくる。全国区のスーパーが売らせてほしいと言ってきた。多分売上が一気に何倍にもなるビジネスだったと思います。「断ってくれ」と・・・。その営業に、「悪いけれどそれはなかったことにしてくれ」と・・・。
なぜそんな意思決定ができたのか。急成長したときに、もしそのスーパーでもう要らないと言われたら、それ用に造った設備とそれ用に雇った人はどうなりますか。全部カットせざるを得なくなりますよね。「そうなったら私の企業経営の目指す働く人を幸せにするところの本質とずれる。だから断ってくれ。」
言われた営業の人、今の社長の井上さんです。意味が分からなかったと・・・。スーパーからやっとものすごい大きな注文をとったわけです。一気に全国区ですよ。
今、何と言われているか。「いかに正しかったかが今になってよく分かる。」
儲けだけに走る所は、売れるぞとなったらもっと設備を造れ、もっと人を雇え、もっと工場を造れ。そしてある日ドーンとひっくり返る。歴史を見たらそのようなのはすぐ分かるのです。だけどもなかなか難しいところではあると思います。その軸は何かというと、基本の思い、従業員、人だと・・・。
寒天を作る時は足が濡れてビチャビチャな所で、すごい過酷な環境で作っていた。それでも1年終わった。何とか黒字になった。ありがとう。だから今の塚越会長が社長になった時、まだあの方が21歳ぐらいの時ですか、担当されて数年経って利益がきっちり出るようになった時に、従業員の旅行をやり出すわけです。2年に1回、大きくなった今も全従業員が海外旅行です。なぜ海外旅行なのですか。従業員が頑張ってくれる。その彼らに報いたかった、お礼を言いたかったということでやっているわけです。

<不況期に伸びる企業>
 今、経済環境は去年から相当きついです。アメリカと日本が多分いちばん厳しいでしょう。場合によっては日本の方が経済の鈍化率というのは歴史上類を見ないほど厳しい。GDPマイナス10何%。ヨーロッパがきついといったって、そんなになっていないわけです。実は日本がいちばんインパクトを受けている。これは海外への輸出が中心だったせいもあるのかもしれません。この領域は僕の本業ではありませんが、素人目に見てもそれぐらいは分かるわけです。厳しい環境が多い。ところが、一つ申し上げたいのは、その中でも伸ばし続けている企業というのがあるということです。

ブロックスという存在、みなさんもよくご存知だと思いますし、ご覧になられている方も多いと思いますけども、私自身、ブロックスの経営者の人たちとずっと勉強会を重ねてきました。実はちょうど明日、明後日もホンダカーズ中央神奈川という相澤会長の所にお邪魔させていただきます。それを皮切りに四国のネッツトヨタ南国とか、四国管財とか、美容院のバグジーとか、沖縄教育出版とか、伊那食品工業と川越胃腸病院、そういった所にお邪魔させていただいて、従業員との対話を通して学ぶ場をお手伝いさせていただいています。私にとって大変嬉しかったのは、今申し上げた企業は全部この厳しい経済状況の中、業績を伸ばし続けているのです。
日経の1面に随分大きく出たのでご存知だと思います。ネッツトヨタ南国、三月ごろ出た新聞の記事、覚えておられる方もいるかもしれません。1面左囲み記事で、1月の販売業績、対前年比137%。他の車の販売会社は3割から5割ダウンしています。多い所は6割ダウンです。しかし4割近く伸ばしているんですよね。
同じ四国にある四国管財という会社もそうです。掃除の会社です。1週間に1回頼んでいたのが2週間に1回になります。1ヶ月に1回になります。いや、もううちでやります。何を申し上げたいか。総需要は減る一方です。にも関わらず去年創業以来の業績です。
伊那食品工業は寒天バブルというのがあったので下がっています。でも従来の線から見ると、実は伊那食品工業は48年からずっと成長し続けてきたわけです。49年目に寒天バブルでワーッと伸びてしまったので、トントントンと下がっていますけども、塚越会長に言わせると従来の延長線上に乗っている、やっと巡航速度に戻ったと・・・。
会長にお会いした時にすごいと思いました。4年前に売上がダーンと上がり出してしまったのです。それは従業員が、「あんなにお客さんが健康のために欲しいと言っているのだから作りましょうよ」と言って夜勤をやり出してしまったわけです。そして1人かな、体をちょっと悪くして・・・。夜勤は即やめです。どんなに売れても従業員が倒れたら意味がない。なぜなら目的が従業員を幸せにするためだから、ということです。
そのブームの時にお会いしたら「大久保さん、我が社にとって最大の危機が来た。」「なぜですか。」「ブームになってしまった。」
普通は売り上げ増で喜ぶのです。しかし創業以来の最大の危機だとおっしゃっていました。この感覚が大事なのです。ブームというのは必ず去る。かつブームになった時、人は、企業は努力しなくても売れる。そしてだめな体質を作っていく。この見方をできる経営者がどれだけいるのでしょうか。
ブームになった時、多くの所はどうするかご存知ですか。設備を拡張するんですよ。例えばテレビ番組でこれが健康に良いと言った時にワーッと売れ出す。実は多くの企業はその時急激に設備を増強する。増強して作れるようになったころはもうブームが終わっているというのがいっぱいあったじゃないですか。やっぱり物事の本質を見ていないとこのようなことになってしまうわけです。
でも今儲かるから儲けようという短期で見たら、一見正しいのかもしれません。でもその短期でさえ実現できていないわけです。これもやはり基本の思いということがものすごく大事じゃないのかなというふうに思います。
もう一度繰り返しますけども、あなたの企業、あなたの組織はどのような思いで何を実現しようとしているのか?そしてもう一つ、あなた自身はどのような思いで仕事をされているのですか?あなたの人生の中で実現したいと思いますか?ということが大事じゃないのかなというふうに思います。

<雰囲気・空気は仕事力>
 伊那食品工業もそうですけども、敷地に入るだけで空気が違いますね。先般も川越胃腸病院の院長先生が、私が随分お勧めしたので、休みの日にドライブで行って来られたそうです。敷地に入って、誰にも会わないで帰ってこられたのです。「なぜ会わなかったのですか。」「いや、敷地に入っただけで空気が違うのが分かったからもういい」と帰ってこられたのです。敷地に入った途端、全然空気が違っていたと仰ってました。空気が違います。
実は私の母も、もう亡くなりましたけども、東京と名古屋を往復する間によくそこに寄りました。「ここは空気が良いね。雰囲気が良いね」と私の母がよく言っていました。
ここでもう一つ大切なお話をしたいんですね。それは空気です。企業にも、職場にも、人にも、空気というものがあります。空気は誰でもやはり必須不可欠なものであるわけです。ここでもう一つ大事なことを申し上げたい。それは何か。あなたの職場はどのような空気ですか?ということなのです。実は空気の種類によっては、そこにいる人の能力とやる気を引き出すのです。空気の種類によっては、やる気と能力のある人の良い面をマイナスにしてしまう空気があるのです。

私が最近非常に大事だと思っているのはこの空気なのです。別の観点で申し上げると雰囲気。職場の雰囲気ってありますでしょう。その企業の雰囲気。その人の雰囲気。
これは1つ覚えておかれたらいいです。人のかもし出す雰囲気というのは仕事力そのものです。物事を判断したり、作ったりというのはもちろん仕事ですよ。でも雰囲気はそのまま仕事をするのです。仕事力です。ですからこの雰囲気が高いということ、素晴らしい企業は高いということは、そのままその企業の仕事力が高いということでもあるわけです。
個人も同じです。雰囲気というのはものすごく大事です。みなさんの職場にもいらっしゃいませんか。あの人がいると職場の空気が変わる。空気清浄機みたいな方、いらっしゃるじゃないですか。反対もいますよ。ばい菌噴霧器みたいな・・・。その噴霧器の方の特徴があるんですね。「私は立派だとか、私がいないとだめだ」と思っている人が多いですね。これは残念ですけどね・・・。周りからするといない方がいい人ですよね。分からないんです。その話を真剣にやると、これだけで1日分ありますけども、それぐらい人は自分が見えないわけです。

<雰囲気のよい職場>
 この雰囲気を良くする、空気を良くするというのはすごい大事だなと・・・。川越胃腸病院もそうです。前回も随分お話ししましたが、川越胃腸病院は、とにかくリッツ・カールトンの高野さんがロビーを見ただけ、受付を見ただけで涙が出そうになったと・・・。胃腸病院です。ガン患者が7、8割です。日々人が亡くなられる職場です。にも関わらず穏やかで透き通っています。鬼澤さんも行かれましたけども・・・。素晴らしいものがあるんですね。
この間もっと感動した人が出ました。それはある知事さんをお連れしたのです。「どうしても行きたい、大久保さん連れて行ってくれ」と・・・。東京から遠い所の県の知事さんだったので、東京には必ず県の出先の事務所長さんというのがいて、東京に来られた時は必ずその方がお付きでずっと歩くわけです。その方と3人で、ちょうど1ヶ月ちょっとぐらい前かな、お邪魔しました。
入っていった時に、知事がまずびっくりされていました。何にびっくりしたか。「完全に迎え入れられている。拒絶されるという雰囲気か、何もないと・・・。雰囲気がどうぞ、」という感じだということをおっしゃっていました。そして東京から行った事務所長がすごかったです。ドアがガラスで透き通っているのですが、ドア越しに受付が見えるのです。雰囲気がちょっと分かる。東京のその事務所長さんはどうしたかというと、しばらく入ってこなかったのです。後で「どうして入ってこられなかったのですか」と聞いたら、「ドア越しに中を見た時に、ちょっと涙が出て止まらなくなってしまって、中に入れなくなってしまいました。」
嘘みたいな話でしょう。ドア越しに中の事務所の雰囲気を見ただけで涙が止め処もなく流れてきました。実は私がお連れした人でこの類の話は結構あるのです。それを可能にしちるのは空気なんです。その場の雰囲気なんです。

<思いがその場の空気を創る>
 こういう所で働いている人たちというのはどんな人が働いていると思いますか?どんな人というよりは、どんな思いで働いていると思いますか?なんでどんな思いで、と申し上げたかというと、雰囲気とか空気というのは思いがつくるからです。物理的につくるものではありません。もちろん物理的なものも大事です。どうでもいいとは言いません。でもそこに働いている人がどんな思いで働いているかがその職場の空気をつくっていくわけですからとても大切だと思います。
一つ簡単なことが言えます。それは何か。良い空気、良い雰囲気を持った所は必ずその中のコミュニケーションが良いです。一体感があります。必ず一体感があるんです。
一体感があるというのはどういうことか。切り口を変えるとこういうことです。隣の人が苦しんでいたら手助けをするということです。別の観点で申し上げれば、常に他人に関して関心を持っている集団なのです。そしてその根底においてもっと大事なことがあります。それは優しさと思いやりに満ちているということです。
実は私からすると、ビジネスでいちばん大切なのは思いやりであり優しさだということをずっと、十年以上前からお話ししてきました。一見甘いように思うかもしれません。今、今さらながらにこれは大切であると私自身思っています。
優しさと思いやり、仕事が甘いというのとは違います。真の優しさというのは、本当の優しさを持てる人というのは、多分自分自身を相当深堀りした人でないと持てないような気がします。相手をしっかり観ることができる人でないと本当の優しさを表すことはできない。すなわち正確に申し上げると、知恵を伴った優しさでないとだめです。知恵がないと、ただ優しいだけでは相手の能力を潰す可能性があります。これでは本当の思いやりとは言わないと思います。
知恵のない優しさというのはこういうことです。例えて言えば、ミツバチはよく働く。一年中花の咲いている所に連れて行けばミツバチはずっと働くだろう。といってミツバチを一年中花の咲いている所に連れて行くとどうなりますか。蜜を取らなくなる。いつでも取れるから・・・。ということですよね。一見賢いようだけれど知恵がないのです。
例えば、例えが適切かどうか分からないですけど、自分の大事な子供に虫が張り付いた。この虫を取らなければいけない。そして取ろうとするのは思いやりであり、優しさです。手で強く張り倒した、棒で叩いた、例え話です。知恵がない人はこれをやってしまうのです。すなわち相手を潰してしまうんですね。
だから根底において思いやりと優しさをもっていることが大切ですが、同時に、もう一つの軸としては知恵というもの、知識ではありません、知恵というのがやはり大変重要なのではないかなというふうに思います。

<出てくる雰囲気>
 この雰囲気というのは今申し上げたようにそれだけで仕事をするんだということです。この雰囲気が仕事をします。雰囲気というのは間違いなく出ているものです。
私なんかどちらかと言うと鈍い方なのでよく分からない方なんですけども、犬なんてすぐ嗅ぎ分けるでしょう。犬の嫌いな人はすぐ吠え付かれるじゃないですか。犬の好きな人には尻尾を振ってくる。じっと見ていると言うけれど、犬は近眼だから見えないわけでしょう。だからあの人は怖がっているなと表情を見分けているわけではないのです。空気でしょう。やはり人が出している何かがあるわけです。
子育てで小さい赤ん坊を育てているとよく分かります。別に私が育てたわけではないですけども、うちは子供がたくさんいましたから・・・、今もいますけども、片手以上にいますから随分赤ん坊を見てきましたが、何を申し上げたいかというと、嫌な人が来ると、遠くからその人が来るだけで赤ん坊は嫌な顔をするのです。分かります、これ・・・。かわいがってくれる人が来ると、遠くからでも赤ん坊は笑顔になります。何を申し上げたいかというと、空気、雰囲気というものがあるということです。背中からも出ているわけです。そしてその空気がものすごい仕事をするということです。

<不思議な体験>
 最近、人以上に空気というものを感じた所があります。この間宇治の平等院に行ってきました。最近もう少し時間的に豊かな人生を送りたいなと少し考えるようになりました。今までだと沖縄日帰りとか、札幌日帰りとか、こういう感じでやっているわけです。札幌の後東京に行って、また沖縄に行くとか・・・。「いいですね、沖縄ですか。」「いえ、飛行場と会場の往復しかしたことがありません。」こういう人生を送っていて、さすがに還暦を迎えて考えるようになったんですね。私はこれでいいのだろうか。豊かな人生を送るべきだと言っておいて、自分はどうなのだろう。ですから行った時に少し時間的に余裕を持つようにしています。
この間も時間があったというか、作って、連休明けに平等院に行きました。連休明けなので空いていたのです。それも夕方なのでほとんど人がいない。何回か行ったことはあったのですが、初めてでしたね。平等院、前に池がありますよね。その池の淵からずっと見ていたのですけども、静かなんです。その時初めてこういう感覚を持ったのです。
私はあまり言葉が足りていないので十分説明できないですけども、静けさに包まれているのではないのです。静けさをかもし出しているのです。全然違うと思いました。静けさに包まれているのではないのです。その建物が静けさをかもし出しているんです。そのような感覚は初めてでした。そこで2時間ぐらいボーッと立っていました。ものすごく心地良かったです。
なんて不思議なんだろう。かといって静けさがワーッと出てきたら騒がしいです。だからワーッと出ているわけではないんです。でもその静けさというのが出てきているんです。そこで考えました。なぜそのような建物ができたのだろうか。
最近京都のお寺とか神社に行くのも好きになりました。その前は一日京都でお寺、神社巡りをしました。仁和寺というお寺があります。朝早く行くと人がいなくていいです。あそこは庭が有名らしいですけど、その庭の見える所で、やっぱり2時間ぐらい座っていました。
かつて自分はそういうタイプではなかったです。例えば絵画鑑賞に行く。観た。観た。観た。観た。すごい生産性ですよね。それで一通り観たぞと・・・。30分で全部観れてしまった。観た。全然大切な何かを味わっていないですね。
私自身、実はそういう生き方をしてきました。全く分からない人間だったのです。感性がなかったです。最近はほんのちょっとですけど、そういうことを感じるようになりました。
その仁和寺の庭を見ている時も非常に不思議で、これまた初めての感じだったのです。自分は庭を見ているでしょう。見ているけれど見ている自分が消えるのです。その庭の空間と一つになっていくんですね。初めての経験でした。自分が消えるんです。にも関わらずなぜか心地が良いという・・・。初めての経験でした。なぜかな。なぜそうなるのか、私には分かりません。ただそういう感覚を持ったということです。

<思いの凝縮>
 先ほどの平等院に戻りますが、なぜこういうものができたのだろうかと考えたとき、正しいか、間違っているか分かりませんが、多分造った人の思いが凝縮して、そのエネルギーが残っているのではないのかなと・・・。造った方たちの思いが根底にある。それはもちろん芸術性というのはあると思いますよ。深く強い思いがあるんじゃないか。
例えばここ10年、20年、30年造られたコンクリートとアルミとガラスの大きな建物を見てその気が漂っているか。ほとんどないです。もっと言いましょう。何もないです。効率を追いかけて、造っている人も全く高い思いを持たず、短時間に使いやすいものだけを造るという発想ではその空気は生まれないんじゃないのかと思います。

何が違うのかというと、手間ひまというか、思いのかけ方が違うのかな、その思いというのが多分残っているんじゃないかな、というのが今の私の感覚です。
だから思いが込められた料理というのはものすごいものを感じますよね。私は感性が鈍いのでよく分かりません。でもこの間ある方と行った時に、私の近い人間だったのですが、料理を食べた瞬間、「なんて優しい思いで作られているんですか」と言われて、シェフが出てきた時に「お分かりいただけますか?」私だけ横に外れていました。よく分からないのです。「素材、作り方もあります。でも本当に喜んで、優しい思いで作られたのが一口一口感じられます」とその彼女は言ったのです。私の娘なんですけども・・・。私は「そっか・・・」と言って横で食べているわけです。このギャップ・・・。人間性のなさというのですか、日々自分自身の感性のなさを、名前は「かんじ」というのですけども、どうもだめだなという感じを本当に持ちます。
それ以外にもそういうことがたくさんありまして、料理の方にうかがったら、やっぱり思いだと言うんですね。
ちなみにこの間こういう方にお会いしました。ちょっとこじんまりしたというか、今日一日その人にだけ料理を作りますという方がいらっしゃる。料理を作る時、すごいですね。まず事前に履歴書を出さなければだめなんです。もうほとんどそれに近いですね。それで素材を集めて作るんです。何週間も前からその人のために作るんですって。信じられないことが起きます。その料理を食べた人はみんななぜか涙が出る。私、「料理を食べて涙が出るんですか? あ、辛かったんですか?」と思わず言ったぐらいですよ。違うんです。別に辛くて涙が出たわけじゃない。辛子がついていたわけじゃないんです。その根底は何かというと、料理を作られた方の思いなのです。

最近思うのは、思いというのがいちばん大事なのかなと・・・。何のためにビジネスをしているのか。経営品質で言う、あなたの所は何を目指しているのですか。まず最初にこの質問があります。ここをやっぱり明確にすること。そして、明確にするだけではだめです。「うちは明確です。儲けるだけです。」これは確かに明確は明確です。でも高さがないです。その明確なものに高さというものがあるといいのかなという感じがします。
そういうのは多分人は分かるのでしょう。先ほどの雰囲気が分かるという意味では、障がいを持たれた方というのは感受性がものすごく鋭いですよね。行くと、避けられる人と近寄って来られる人がいます。やはり近寄って来られる方というのは穏やかな方なのです。避けられる人というのは厳しい波動を出しているのです。彼らには敏感に感じ取られます。
これはちょっと自慢話みたいになって恐縮ですが、あるそういう方から話があったのですけども「最近、おじさん優しくなった」と言われました。「あ、そう・・・。前は?」エヘッと言って言わないところがすごい知恵がありますよね。怖かったとは言わないです。エへッと笑って・・・。やっぱりそういうふうに感じられていたんだろうなというふうに思いました。

<見えないものを観る>
 空気とか雰囲気というのは見えないです。感じることでしょう。大事なことは、見えないところが見えるところをつくり出していきますから、見えるところだけ見てそれを直そうとしても、良くならないということ。本質的な原因は見えないところにあるのです。その見えないところを観なければいけないのです。
見るというのはこういうことですよね。観る、観察する、観るということでしょう。でも観るというのは「観」でもあるでしょう。これは感じる「感」にも通じるのかなと・・・。感じる、見えないところを観る。単なる目ではなくて、感じるということで、感じることがものすごく大事です。そのためには感受性というか感性を、多分自分の方が磨いておく必要があるんだろうなというふうに思います。

先ほどの川越胃腸病院であれば、みなさんが笑顔です。なぜ笑顔なんですかといったら、仕事をしていて楽しくて仕方がないと・・・。医療の世界では、職種間でものすごく垣根のあるのが当たり前の世界で、「職種間、組織間の垣根は一切ありません」と言い切るのです。そしてみなが、この思いは何かというと、徹底して患者さんの方を向いていて、かつ自ら動いているということです。これもすごく大事ですよね。同じ方向に向かって動いていても、強制、受身ではパワーというのは出ないわけです。自ら動いていく。
先ほどの知事の時の話をしますと、応接室に入って、院長先生と看護部長とお話をしました。二人の事務の方がお茶を持ってきてくださいました。私はここのスタッフの方70人ぐらいにインタビューさせていただいているので、もうほとんど知り合いなんです。「ちょっと寄って座っていって。知事さん、院長や看護部長と話す時間はまだありますから、せっかく来られたのだから、彼女たちに何か質問してみませんか。」
なぜ知事が行ったかというと、一つがこれだったのです。「僕は大久保さんのことは結構信じていたんだけど、川越胃腸病院のことを聞いた時、嘘だと思った。いちばん嘘だと思ったのは、職員が月曜日が楽しいというのだけは信じられなかった」と言うのです。しかし病院に来てスタッフとちょっと話しているだけで、本当だと分かったと言っていました。
面白かったのは、その知事が若い事務の職員の方に言われたのです。「ここで上からの指示はどうなっていますか。」どういう意味で聞いたのか全然分からないのですが・・・。「一つ二つ質問してください」と言ったら、「上からの指示はどうなっていますか。」二人の事務の女性の方のその時の反応がすごかったです。「指示ですか・・・。指示・・・?」二人で見合って「指示ね・・・」と言っているのです。
分かりますか。上から指示は出ないんです。全て自分で考えて行動するから上から指示を受けたことがないんです。最強の組織はこれなんです。
この反対、分かりますか。手足の上げ下ろしまでずっと指示され続ける組織。弱い組織。もう一つ言いましょうか。つまらない組織。もう一つ言いましょう。決して雰囲気は良くない。受身の集団だから・・・。なぜか。楽しくない。人は指示はされたくないです。自分で判断して行動したい。ただし判断して行動する時に、判断の軸がそれぞれ違うものさしを持たれては困るのです。だから川越胃腸病院はその判断のものさしを共通にすることには話し合い、上からの理念の確認の話はいっぱいあるわけです。
多くの所、どうですか。判断のものさしを徹底するために、同じものさしを持つために時間を割かないで、手足の上げ下ろしの指示に専念している組織ってありませんか。弱い組織です。もう一つ申し上げましょうか。そういう所で本当にお客さん側に立って仕事をすることは不可能です。無理です。一人ひとりが自立していないから・・・。

<一体感>
 感じるということをもう一つ別の観点で申し上げます。それはどうしたら相手のことを感じることができるかということです。これも自分なりの考えで、正しいか、間違いか分かりませんけども、いちばん大事なのはやっぱり一体感、一体感かなと・・・。もちろん気配りというのが根底に・・・、大事ですよ。相手と一体感を持つということが大事です。なぜ一体感が大事かというと、自分がいて相手がいる時に、一体感というのは一つなのです。そうすると何かというと、相手の気持ちが分かるというわけです。
別の観点でこれを表現しますと、最近大事だなと思うのは相手との距離。相手との距離を縮めることがものすごく大事なのです。それは企業とお客様の距離もあります。従業員同士、上司と部下、組織間、現場と本社、距離が離れるほどつまらなくなります。距離がいちばん短いのが一体感ですね。これがすごく大事だなと思うようになりました。
組織の中でうまくコミュニケーションをとれていない人、あいつはどうも・・・と思っている方、必ず距離があるはずです。違いますか。
伊那食品の塚越会長でも、川越胃腸病院の望月院長でも、一人ひとりとの距離を常に縮めることをやっているんです。やっぱりそこをやっているんです。努力しているんです。バグジーの久保社長も同じです。距離を縮めるというのはものすごく大事だなと・・・。
もう一度繰り返しますけども、一体感を持つことができた時にどうなるかというと、相手に言われなくても動けるようになるということです。患者さん、お客様と一体感を持っていたら、相手がこうしてほしいというのが分かるわけです。距離があると分からないんです。距離があると、もう一つ、何と言うのかな、嫌な感じになってしまいますね。
一つになる時には汚いという感覚がなくなるというのをご存知ですか?人間の体の中から出てきたものをまた体の中に入れる方っていらっしゃいますか。上から出たものも下から出たものも汚いと思いませんか?
もっと分かりやすい例、きれいな例?で申し上げると、髪の毛。風呂場でたくさん落ちている。きれいだと思います? 何となくつかむのもいやな感じがする人の方が多いはずです。「ちょっとそれ、きれいにしたら?ゴミ箱に捨てておいてよ」「いやだよ、だって汚いもん。」いや、待てよ。ここでよく考えていただきたいことは、その汚いのがまだ頭にいっぱい生えているよ、ということです。
これ、大事なメッセージなのです。何か離れた瞬間、人は汚いというイメージを持つのです。体の中、汚いものだらけですよ。そうでしょう、出したもの、また入れます? 中には訳の分からん健康法で飲むんだという人もいますけど、それは例外でしょう。ということは一体感ということは汚いという感覚を超えるんだなというふうに理解することができると思います。
マザー・テレサみたいな人もそうだと思います。僕はよく知りません。本を読んだこともありません。ただ勝手な推測で申し上げれば、どんなに体中醜い、傷んだ人でも手当をされたんだろう。なぜか。その人との一体感を持つことができるから、汚いとか、嫌だとかいう感じがなかったんじゃないのかな。私の勝手な推測ですけどそういうふうに思います。
一体感を持つということがものすごく大事だなと・・・。そうすると相手の苦しみは苦しみと感じます。一体感を持った時、自分だけ良しという発想にはならないはずです。自分は幸せであの人は苦しんでいる。知らん。距離がある、離れているからそれができるわけでしょう。
だからもし「うつくしい経営」というものがあるのだとすれば、それは地域との一体感であり、取引業者さんとの一体感であり、従業員との一体感であり、ということになっていくのかなと考えることができると思います。
だから伊那食品工業の塚越会長の所は、ビジネスパートナー、納入業者に対して値切ったことはないわけです。ある意味言い値で購入されるわけです。なぜか。お互いに栄えなければいけない。お互いに栄えるというのは一体感に近いものがあります。
でもそこから何を学ばなければいけないかというと、そのような思いでやり続けた結果が今まさに出ているのです。短期で、その時だけ値切らせて、いちばん安い所からその都度買え。実は十数年前、私はそう言っていました。「グローバルの時代は世界中でいちばん安い所から仕入れていちばん高い所に売るんだ。これがグローバル経営だ」というふうに愚かなことを言っていました。短期間に儲けるのが目的なら正しかったのです。でもそれで経営が長く続くのか。続かないことはもう証明されました。

<働いている人の目が輝いているか>
 私が今いちばん重要視していることの一つはそこで働いている人の目の輝きです。なぜか。先ほど雰囲気ということを申し上げました。もちろんそれと本質的に同じことになるんですけども、目が輝くかどうかということはものすごく難しいのです。トレーニングで表情を笑顔にすることはできます。でも顔は笑っているけれど目が怒っているってあるでしょう。
何を申し上げたいか。目の輝きは意思で作れないのです。メイクできない。「目は心の眼」と昔から言われます。すなわちその人の思い全てが目に出てしまうのです。目だけはごまかしようがないのです。
だから川越胃腸病院の人たちの目が輝いているというのは心が輝いているということです。心が輝いている従業員がたくさんいるという所はまさにうつくしい経営そのものじゃないのか。「うつくしい経営」という課題を持っていろいろなものを見ている時に、本当にそう思いました。
本当に美しいものというのは外から作りあげたり張り付けたものではなくて、相手の心の中から出てくるものだと思います。多分どんな人もその美しいものを本質的に持っているんだと思います。ただそれが出るかどうかは周りの環境、条件によって異なってくるのでしょう。勿論一番重要なのは自分自身の心ですが。
別の観点で申し上げます。この中に経営者の方が何人かいらっしゃると思います。従業員の美しい心を育んでいますか、ということを申し上げたいのです。従業員の心が美しくなるような何かをされていますか?
今、業績を上げ続けている企業、冒頭申し上げた企業、みんなそれをなにがしかの形でやっている企業ばかりなのです。ものすごい学びでした。一見、短期での業績とは何の連動もありません。でも人が輝くようになるわけです。そうすると出てくる結果も、結果としてやはりうつくしいものが出てくるなという気がします。
鬼澤さんが川越胃腸病院に行かれた時、彼はこう言われたんですね。病院の方たちに向かって「ここの方たちは使う言葉が美しいですね」と言われました。その時高野さんは何と言われたか。「ここの方は動作が美しいですね。」所作、ふるまい、動作と言葉が美しい。そして表情が美しい。最高じゃないですか!表情は美しくても使う言葉が美しくなかったら美しくないでしょう。表情と言葉は良いんだけど動作が醜いと、これまた美しさが欠けちゃうんです。
一人ひとりがみなそういうものを兼ね備えている。そういう組織集団になったからこそ、先ほど申し上げたようにガラス越しに中を見ただけで涙が出てきたというようなことが可能になってくるのだと思います。そうでないとそんなことはあり得ないです。私も今までいくつかいろいろな企業にお邪魔させていただきましたけど、それほどの企業に出会ったことはありません。
青梅慶友病院なんかもそれに近いものがあるかもしれないですね。終末医療の所です。青梅慶友病院ってご存知ですか? 入ったら二度と生きて出られない病院ですよ。それはなぜかというと最後までいるからです。でも入りたいという人が半年、一年待ちです。
あそこも使う言葉が美しいし、一人ひとりの挨拶がみんな美しいです。やはり経営者はそこに重点を置いているのです。重要視しているのです。望月院長も美しい動作を身につけてくださいということを重要視されています。
従業員に対して美しい所作、ふるまい、動作が大事ですと言っている経営者がどれだけいると思います? ほとんどいませんね。そんなことより売ってこい、そんなことよりコスト削減しろ、と言うのがほとんどじゃないですか。残念だけどそうですね。それでは本当の経営、本当の経営というのがどういう経営かは定義が難しいですけど、本物にはなっていかないんじゃないかなということを思うようになりました。

<本物は360度>
 この美しさ、自分自身の空気が良くなった時にどうなるかというと、もう一つ大事な言葉が一つあるんですよね。それは360度ということです。本物の美しさは360度。なぜか?何故か?お客様が来られた。満面笑みで応対する。後ろに向かって従業員を罵倒する。これは180度ですよね。180度はニセモノです。
すなわち本物の企業、本物の組織は従業員同士も美しい言葉で、笑顔のやりとりで、励まし合い、しかし仕事に対しては厳しく対応していくということができています。
有名なホテルであれば、リッツ・カールトン・ホテルがそうですよね。お互いが社員同士が紳士淑女です。それが紳士淑女であるお客様に仕えるんだというわけです。

リッツ・カールトンでいちばん大事なものは何か。従業員です。次に大事なのは従業員の家族。その次に大事なのはホテルをサポートしてくれるいろいろな協力業者の人たちだと言って、そしてだんだん終わりの方にお客様が出てくるわけです。
川越胃腸病院も伊那食品もみんな同じなんです。いちばん大事なのはまず働いている人。そこを大切にする。でも大切にするということは甘やかすことではないんです。
人を大切にするってどういうことかというと、その人に良い生き方をしていただく、成長していただく、良い意味で存在感が高まるような形にもっていくことがその人を大切にすることだと思います。
よく、人を大切にするというと、「うちはもう給料上げられないんで大切にできないよ。」そうおっしゃる方がいますが違うと思います。そうじゃないです。その人を大切にする。もっと本質的なことを申し上げれば、その人の人生とその人の家族を大切にするということだと思うんですね。そこから発展していくとどうなるかというと、やはり人に対する接し方というのは変わってくると思います。
ろくな仕事をさせないで、つまらない仕事で、何の価値も生み出す仕事をさせないで、それなりに高い給料を払うのは、真に人を大切にしているとは思えません。それどころか堕落させている可能性さへあります。なぜか。その人が能力を発揮していないから。その人が生きていないから。そんな活かし方しかしていない経営というのは人を大事にしているとは言えないと思います。
素晴らしい企業というのは上からやれと言われなくても一人ひとりが自らやるわけです。人間の能力というのは自らと楽しいいう以外に100%発揮できないようになっています。受身と強制では100%の能力の発揮は期待できません。いままで受身と強制でずっとマネージメントをやっている方、結果もそのまま出てくるでしょう。結果が落ちていくでしょう。当たり前です。落ちるようにやっているからです。
本当に人を大切にして、人が輝き出した時、さっきお話したように雰囲気というのがやはり全く変わるわけです。それは先ほど申し上げたように目を見れば分かるということじゃないのかなというふうに思います。

バランスがとれているというのも大事なのかな。だからそういう意味では、適切かどうか分からないですけども、ほんの一部の人が高給取りで、ほとんどの人の給料はわずかだというのがバランスがとれているのだろうか。塚越会長が言っていました。「ウォルマート? そんなに素晴らしいんですか? 4分の1は生活保護を受けているそうじゃないですか。」経営として素晴らしいですか? 業績は良いかもしれませんよ。何分の1かが正規に勤めている人でさえ生活保護を受けている。「僕はそういうのあまり良いとは思えないんですよ。」最終目的が儲けるだけだったら正しいんです。人を幸せにするが目的になると、目的と反対の結果ですからそれではだめだということになります。

<一人ひとりが自ら改善>
 伊那食品工業も川越胃腸病院も、経営品質で言うところの、プロセスを改善し続けています。改善し続ける時に、改善しろとか、改善報告を出せなんていうことは何一つありません。みな一人ひとりが自分の役割に沿って与えられた仕事をしている時に、これをやったらもっと良くなるなと・・・。そしてその時に、こうやりたいと思うけれどいかがでしょうか、なんていうことは言わない。その場で思った人がやるんです。そしてうまくいかなかったらどうするか。隣りの人が、周りが、よってたかって上手くいくように手伝う。これこそが強い組織です。
その反対が何か。「改善提案? うーん、じゃあまずしっかり出しなさい。各課でまず10件づつだすように!」このようなやり方でどのぐらいの成果があるんですか? 全く無意味だとは思いませんが、甘いんじゃないですか? 何も生み出されていないことが多いです。生み出されるのは紙と管理資料だけだと・・・。そういうのをやっている企業ってありますよね。別の観点から言うと、エネルギーロスの塊です。
組織内のエネルギーというのは一定です。そのエネルギーをどこに使うか。創造的な方向に使うのか。それとも何も価値を生まないところに使うのか。実は価値を生まないところにエネルギーを使っている企業、組織というのはやはり相当あります。そういう所で働いているとやはり人は輝けないでしょうね。輝けないと思うんですよ。何故か?自分の命を生かしていないからです。

<美しさ>
 「真善美」という言葉がありますよね。言葉というか、文字が三つ並んでいる・・・。私はあまり学がないので意味はよく分かりません。いろいろな解説もあるようです。勝手にこのように解釈しました。私の勝手な解釈です。真善美とはこういうものだとは言わないでくださいね。
何かというと、最初に真の思いを持って、善を成す時、美しいものではないかと理解すると分かりやすいなと思いました。最初はやはり真、真の思いというのがものすごく大事だなと・・・。そして善きことを行う時、美しいものが生まれる。もしくはその姿自身が美しい。
美しいというのも確かにいろいろあると思います。生命の躍動する美しさ・・・。プロのスポーツ選手なんか見ていると、写真とかスローモーション、ものすごく美しいですよね。やはり生命の躍動というものは美しいんだなと・・・。一所懸命仕事をしている時の、知的活動をやっている時の美しさというのもあります。知的な美です。それから人に対する思いやり、優しさ。その思いやり、優しさという観点での美しさというのもあるます。多分いろいろな美しさがあると思います。
ただ一つ言えることが、一つでも二つでもいい、美しいと思えるような、周りから見てそのように見えるような生き方ができるといいなというふうに思います。

<信頼の絆は最高>
 先ほどの雰囲気に戻りますけども、良い組織の雰囲気、良い雰囲気を持った組織はやはりその中が信頼関係で結ばれています。そこにいる人たちが信というもので結ばれているんです。これはすごく大事だと思います。信頼の絆というもので結ばれたチームはものすごく強いです。信頼というのはとても良いです。
実は私事で勝手なお話をしますと、今日世田谷の実家から出てきました。出ると誰もいなくなるけれど、家の中に一ヶ所不具合があったのでどうしたか。隣の隣が工務店で、私の父親の代からずっと付き合っています。鍵を渡すだけです。この間は床の張替えを全部やってもらいました。「私は、いないんで・・・。」「いいよ、心配しなくて。私が全部やっておくから・・・。お父さんの時もそうだったから、鍵を貸してくれればいいよ。」信頼というのは本当に楽ですね。あれほどコストのかからない世界ってないですね。
信頼がないとどうなるか分かりますか。セキュリティ。あれは何も価値を生まないんですよ。セキュリティというのはマイナスにならないように、ゼロにするだけでしょう。膨大な経費をかけています。いちばんお金をかけているのがアメリカですよね。信頼というものがないから、豪邸に住みながらセキュリティを張り巡らせている。それでも足らないから警護要員をいっぱい雇う。それでも安心できない。だからものすごい世界に住みながら、心は常に不安に満たされている。こういう生き方をされている人、いますよね。
この対極は何か。沖縄の離島に行く。鍵なんかない。泥棒? いない。警官もいない。お互いが信頼し合っている。日本にはこの信頼の世界がたくさんあったんです。最高の財産だったんです。そういう意味では戦後の日本は世界的に最高の素晴らしい財産を失う日々だったということができると思います。それこそ経済的な意味ではなくて失われた日々かもしれません。いちばん大事なお互いの信というもの・・・。
何を申し上げたいか。今から自分の周りだけでもその信を築く生き方をしてみたいなと・・・。信頼できるって大事です。上司と部下の関係でも、信頼というのは全てになります。
昨日もある大きな企業の幹部研修をお手伝いしていました。お伝えしました。「思いが届くか、届かないか。言葉が届くか、届かないか。受け入れてもらえるか、もらえないか。それはただ一つですよ。あなたが正しいことを言っているか、言っていないかは全く関係ありません。あなたが信頼されているか、尊敬されているか、それだけです。」
信頼されていない人、何を言っても無駄です。相手は聞かないです。人は正しいことを言ったからといって受け入れるものではありません。誰が言ったかです。その誰が、というのは信頼というベースができているかどうかです。
みなさんも自分自身を振り返られたらいいです。「私は常に正しいことを言っている。しかし誰も聞いてくれないんだ。なぜだ。」回答は鏡を見てください。原因が目の前に出てきますから・・・。その映った人が原因なのです。あなたが言っているからなのですよ。
みなさん自身も上司に対して同じでしょう。尊敬と信頼のない上司の言うことを聞きましたか? 聞いていないはずです。大袈裟に言いますと、正しい、間違いなんか一切関係ないでしょう。信頼し、尊敬している人がいたら、ちょっと間違っても、もうしょうがない、あの人が言うんだから頑張っちゃおう、ってなるじゃないですか。
ここがロボットとの人間の違いなのです。ロボットはソフトウェアのプログラムの指示どおりに動くのです。人間は指示どおりに動かないのです。相手の思いのとおりに動くのです。だからベースに信頼と尊敬というものがなかったら、先ほど申し上げたように何を言っても無駄だということです。
お客様に対しても同じです。組織間に対しても同じです。やはり信頼というものをどう作っていくかということです。そして信頼し、助け合っている組織というのはやはり美しいわけです。

<自分自身を観ている>
 最近はそういういろいろなことが「美しい」というところの言葉に収斂するようになってきました。もっとも、来年来たらまた別のことを言うかもしれません。私も常に変化していますから・・・。これが成長しているのかどうかは分かりません。でも、ここの講演録が10年間ずっとありますから見てみると、言っていることが変わっていますから・・・。その都度良いと思っていたんです。でも何というか、浅いのです、自分の思考が。だから分からないんです。ですから今言っていることも来年になると、「去年はいろいろ言ったけど、ちょっとリセットです。今年言うのが正しいです」と言う可能性はあります。
その時大切なことがあります。受ける側の能力です。みなさん次第ということですよね。どこをどう受け取るかもみなさん次第ですから・・・。情報提供というか、情報を学ぶのであれば、それは紙に書くか何かすれば、もしくは紙に書いたものを渡せば、ある意味正確に伝わるんですけども、思いとか考え方というのは千差万別なんです。ですから人の話を聴いたり本を読んだりして、人は何を感じ、何を思うか。
感想文を見るとよく分かります。これほど違うのかということですよね。去年ブロックスのセミナーをやった時に、秋の大会に塚越会長に来ていただいたのです。それはそれは素晴らしいセミナーで、みなさん大感動だったんです。私も本当に素晴らしいセミナーをお手伝いできたなと・・・。このようなセミナーはそう感嘆に再現できるものではないと思いました。聴講された皆さんの感想というのも素晴らしい内容ばかりで、みんな絶賛されていました。その中で一人こういう人がいました。「自慢話ばかりでしたね。」そういうふうに捉える人がいるんだと・・・。その人にとっては塚越会長の話が自慢話にしか聞こえなかったのです。素晴らしい話だ、自分も学ぼうという姿勢が全くないのだけれど、その人にとってはつまらない話だ、自慢話ばかりだというふうに感じたのです。この感想はすごいです。このように感じることもできるのかと。
人の話を聴いて、人の本を読んで、先ほど申し上げたように情報を学ぶものは別です。でも感じたり、考えたりするための本とか講演というのは、何を感じ、何を思うかはただ一つです。自分の中を見ているだけです。全て自分の中です。あなた自身が知りたかったら、そこで何を感じたかを書いて、それを目の前に張り出せばいいのです。それがあなただ、ということになります。同じものしか感じることができないから・・・。
波長が合わないと分からないのです。つまらないと言う人は、つまらないところからつまらない部分だけを感じ取ったのです。そうなのです。これはある意味大変厳しい、重たいメッセージです。
いろいろな話を聴いて、いろいろな本を読んでも、本当にいろいろな感想があるわけです。私は今まで何千人の方の感想をうかがってきました。これほど、いろいろあるのかと・・・。合宿セミナーの前にはいつも本を読んでいただきます。それは本を読むことによって、1日事前にセミナーをやったのと同じ成果が期待できるものですから・・・。2泊3日もやるのは難しいですから、せいぜい1・5日、だいたい1日、短い時は半日になりますから、事前に本を読んでください、そして感想を聞かせてくださいと何千人もお願いしてきました。
本当にいろいろな感想があるわけです。究極の感想はこういうのがありました。「値段が高い。」これを感想と言うのか。その人にとってはそれしかなかったんです。誤字脱字を指摘してくださった方もいらっしゃいます。これを感想というのか。「ここの字が違っていました。」感想文、その一行ですよ。かつ字が小さい。何かミミズが這ったようになっていて、何かその人の人間性が透けて見えるわけです。字の形って人間を表すって言うじゃないですか。全部出ているかどうかは分からないですよ。でも少なくとも僕はあまりお会いしたいとは思わなかったですね。自分の人間ができていないせいもあるでしょうけど。

<実際の行動に展開するのは?>
 それこそそういう方たちでも悠然と一体感を持たなければいけないのでしょうけれど、それは話すだけで実際は難しいわけです。実際やるというのは大変です。
村上和雄先生っていらっしゃるじゃないですか。DNA、遺伝子の世界的な権威の先生です。遺伝子というのは本当にオン、オフでまるで変わってしまうわけです。一つのある所をオンにしただけで全然人間が変わる。あの先生の本には、思いを変えると遺伝子のオンオフがある意味意思で変えられると論理的に全部説明してあるわけです。それを発表されているわけです。
あの方のお話も面白かったです。ある時、研究で行き詰まった時に奥さんに言われたんですって。「あなた、暗い顔をしていたら良い遺伝子がオンにならないじゃないですか。ご自分の本に書いてあるじゃないですか」と奥さんに言われたというんです。そうしたら彼は何と言ったか。「あれは本の上だ。なかなか実態はうまくいかないもんだ」と言ったというところに人間性が出ています。
今度京都の経営品質協議会で呼ばれて、秋に一緒に講演させていただくのですけど、もう世界的な権威です。ダライ・ラマさんと対談されたり・・・。
あの方も謙虚です。飄々としていますね。自分は偉いという感覚がまるでない方です。ちなみに、自分は偉いんだという人、美しいと思います? 醜いですよ、あの姿は。もう何かぎらぎらしているものを身につけているような感じです。

濁点というのは濁るのです。「ぎ」の「゛」を取るといいのです。「きらきら」ですから・・・。「゛」をつけると濁っちゃうんですね。あの人はきらきらしてるね。あの人はぎらぎらしてるね。全然違うでしょう。濁点というのは濁る点、日本語というのはよくできていますね。
是非みなさんも「゛」のつかない、きらきら輝くような仕事のやり方というのですか、もう一つ言えば、ご自身が働いておられる職場そのものが美しい、穏やかな、それでいて仕事に対して妥協しないという、そういう職場ができるといいですね。多分そういう職場というのは、今ありとあらゆる業種で問題になっているメンタル上の問題が出てこないです。メンタル上の問題が出るというのは、みんなに距離があって、隣は何する人ぞ、で自分だけ落ち込んでいく。そういう世界ですから、メンタル上の問題も突き詰めていくとやはり職場の人間関係がいちばん大事になるわけです。これはもうメンタルヘルスに関するドクターがみなさんそうおっしゃっているわけです。いかにお互い良い関係性を持って職場をつくっていくかが大事なんだということを言われています。
あっち行ったり、こっち行ったりの話でしたけども、是非横から見て自分は美しい生き方というか、美しい職場づくりに貢献できているのかどうかということですね。できているかどうかということに関して、これからちょっと考えていただけると嬉しいです。そのための何かきっかけ、ヒントにでもなれば幸いです。

3時半になりました。今から何分休憩取るんでしたっけ? 15分休憩します。今から事務局になり代わりまして・・・。3時45分、その間、もしご質問があれば書くんですね。質問票に書いて下さいと顔で言っていますから、書いていただいて、事務局に出していただければと思います。

 ここはいつも定刻が早いですね。本当にここは毎回ものすごい数の質問票をいただくものですから。数枚読んでいたら、定刻です、定刻ですと言われて、簡単に言うと、あれは早く上がれというメッセージでしょうね。上がってきましたけども、多分全部答えるのは無理だと思いますので、例によって当たった人は宝くじ当たった、というぐらいの感覚で・・・。どうして宝くじか。当たらないのが普通だと、こういうことでご理解いただければと思います。
 結構良い質問がいっぱいありますね。質問をもらうというのがまた自分にとって大変勉強になるんですね。正直言って応える方も楽ではないんです。うやはりないのがいちばん楽ですけども・・・。

 はい、じゃあ一つずつどんどんいきますね。
(質)「なぜ茨城県のこのセミナーは半年前から準備するんでしょうか。」

 これはですね、簡単です。講演録を鬼澤さんの奥様が作られるわけです。ものすごくしっかり造られていて、アクセス件数がものすごく多いんです。すなわちここでしゃべった内容というのは、その後見ていただく方がものすごく多い。簡単に言うと、他と違っていいかげんな話ができないということですね。ですから真剣なのと、もう一つは、ずっとやってきているので・・・。同じ話を別の方にするのは楽なわけです。でもずーっと聴いている方がいらっしゃるのです。決してその人が暇だとは言いませんよ。熱心に来ていただいている、本当にありがたい方です。そうかと思うと、あそこら辺にいらっしゃるでしょう。あの若い・・・。先ほど「学生さん?」と聞いたら「いや、社会人です」と言われてちょっと失礼しちゃったのですが、今年社会人になられたばかり・・・。この聞き手の層の広さ、何をしゃべっていいか分からないですよね。そこで毎回結構考え込んでしまっていますということですよ。
 この協議会のここの場だけは本当に半年ぐらい前から考えるんです。というか、終わった翌日ぐらいから、来年何にすればいいのかな、というぐらいの感じです。私の能力では何も思い浮かばないです。それで半年考えてあの程度の話しかできないのです。そんなものです。たいしたことないです。
 ということで、やはりいろいろ思いがあるというのはそういうことですね。

 この方、二つ目の質問も良いですね。
(質)「感じる心を持つためには、自らの心を美しくすることは分かりましたが、さて、どうすれば美しい心が育つのでしょうか。」

 良い質問ですね。はい、美しい心はまず「育つ」という言葉が大事ですよね。それは自分たちの中にあるということです。美しい種が。自分の中にないものは育ちませんから・・・。その場合には「どうしたらつくんですか」と・・・。だから美しい心は身につけるのではなくて、育つんですね。すなわち中にあるということです。
 どうやったら出るかというと、植物と同じで、環境、条件が整ってくると育つんですね。すなわち美しい心が育ちやすいというか、その人の中から美しさが出る最良の策は、美しいものにたくさん触れることです。これがいちばん良いと思います。
 自分が素晴らしい人間になりたいと思ったら、本当に素晴らしい生き方をしている人にたくさん出会うことです。これがいちばん良いです。そうは言ってもなかなか出会えない。分かりました。今、素晴らしい方の講演のDVDなんかもすぐネットで手に入ります。それもなかなか・・・。分かりました。ずっと「プロフェッショナル」を見てください。すなわちああいう素晴らしい生き方をしている人にたくさん触れることなんです。
芸術でもそうですけども、どうでもいい適当なものを見ていても良いものとそうでないものの見分けがつかないんですが、良いものをじっと見ていると、そうでないものが出てきた時に分かるようになります。あれは本当なんです。音楽でもそうです。良い音楽をいっぱい聴いていたら、ちょっとずれただけで違うと分かります。あまりずれていると、ちょっと体の具合が悪くなるほどです。本当にずれた音楽というのは気持ち悪くなります。それは良いものを聴いているとそうなるわけですね。
だから良い思いを育てるには、やはり良いものにたくさん触れるということですね。本を読むのも一つだと思います。そういうことを何もしないで良くなるか。なりません。それは無理ですよね。それは自分の意志でつくることです。
この間こういう人がいました。「そうすると職場環境の今のこの場にいる限り、悪いものしか出てきません。」「なぜ?」「周りが悪い人ばかりだから・・・。」こうなるわけです。その気持ちもまたよく分かります。それに対しては一人でも頑張れとしか言いようがないと・・・。
その場合はこういうふうに考えるのです。自分が一人、だったら自分一人でも隣の人の良いものが引き出せるような自分になることです。だって相手は出てないんですから・・・。だったらこっちが引き出せるようになることでしょう。そのためには自分がそういうふうになる。
これが私が考える、主導権を取る。人生において主導権を取るというのはそういうことだと思います。主導権を渡した人は全ての責任が自分以外にいきます。会社がだめだ、上司がだめだ、部下がだめだ、お客さんがだめだ、経済環境がだめだ・・・。「が」の上があなたの人生の主語ですから・・・。だから自分以外のものに何か責任を転嫁する人は大変もったいない生き方をしていることになります。自分の人生を捨てているのと同じです。そう思います。

「職場の雰囲気を変えたいと思っても、上司が『そんなことをするより、まず自分の仕事をきちんとやれ』と・・・。」
これはまずきちんとやらないとだめなんです。きちんと仕事をやりもしないで、課長に向かって「課長、やっぱり職場を明るくしましょう。」そうしたら「おれを明るくしろ」と言われますよ。「お前がもっとちゃんと仕事をすることだ。」と。
まず自らやるべきことをやらないと、やっぱり発言は認められないです。なぜか。まるで信頼されていないから・・・。さっきの話です。
信頼されていない人は何を言っても無駄なんです。意見が通らないんです。正しい、間違いではありません。どんなに若い人でも、「部長、うちの職場をもっと明るくしましょう。」行って言る内容は正しいんですよ。だけど受け入れられないでしょう。でもその人が素晴らしい、先輩からも信頼されている人だったら言葉が通るわけです。
そうするとどうなるか。まず己が信頼されるような人間になっていくということが大事です。そのためには、若くて、まだ入ったばかりで仕事が与えられたら、まずそれをきっちりこなせる自分になることです。まずベースの技術、仕事力は身につけないとだめです。
川越胃腸病院の院長先生なんか、63歳で今も現役で手術執刀されますけども、30代で最初に手術した時から信じられないぐらい手術の力というのがあったそうです。その時一緒にアシスタントでつかれたのが今の看護部長の池田さんです。なんて美しい手術をする人だろうと感動するわけです。最初からです。なぜそれができたのか。『命輝くホスピタリティ』という本に書いてありますけど、ドクターになると早く手術したいんです。でもそれをずっと抑えて何をしたと思いますか。素晴らしいドクターの横について手術をたくさん見たと言っています。さっきのと通じるでしょう。だから良いものをたくさん見るということが大事です。それで初めて執刀した時に見事に成功されたそうです。今は技術レベルがさらに高いです。血がスプーン1杯ぐらいしか出ないから、バサーッと切っても輸血と点滴をしないわけです。だから治りも早い。ものすごいドクターです。
さきほどのMESHサポートの小濱ドクターという方もドクターとしてもやはり一流です。だから与えられた仕事においては、きっちりと深堀りして一流であってほしいのです。

ちょっと話がそれますけども、先程、経営者の人はやはり人を大事にして、人を成長させられるような経営をしてくださいということを申し上げました。今度立場を変えます。従業員の立場になった時に、「私をクビにするな、私を大切にしろ」と言うのは間違いです。大切にされる自分になることです。すなわち相手に要求することではないということです。立場を変えた時、見方は変えなければいけないんです。だから経営者の集まりや世の中一般に対しては、私は人をクビにしない経営をしてくださいということを申し上げます。だからといって一従業員が、クビにするな、クビにする経営はだめだと言う資格はないんです。辞められたら困る自分になることです。一人ひとりその努力が要ります。その努力をしないで要求だけする。それはものの筋から言えば外れていることになるわけです。

そうは言っても、人間それぞれ能力があるといっても、やはりばらつきがあります。能力の出る領域が違うことがあると、どうしてもうまく出ないことも出てきます。その時は家族経営でやってほしいのです。すなわちお互いが補い合う。
家族経営でお互いを補い合うと、一見生産性が良くないように思います。かつてGEのジャック・ウェルチはどんどんやって、下から三分の一をどんどん辞めさせて、どんどん入れ替えろと・・・。何となく違和感があったのです。一見良さそうですよね。
沖縄教育出版は100数十人の中に知的障がい者の方が10人います。でも彼らの存在が組織に優しさと思いやりというベースを作っています。本当の家族経営ですけども、その中で倒れた人がいると必ず手助けをする。手助けするとどうなるか。周りの人がじっと見ています。自分も何か行き詰まったら、この組織は助けてくれる。この安心感・・・。
安心して働けるというのはすごく大事なんです。安心して働けるというはものすごく大事なことなんです。それが結果的にトータルで実は組織力を最大化していくことになるんだというのが最近の気づきです。
だめな人がいたらどんどん辞めさせて、優秀な奴だけ入れればいい。それでは組織は意外とうまくいかないんです。仕事はできないけど、あいつがいると何か楽しい。特に5時からあとがいいんだと・・・。大事な存在ですよ。いや、もっとも昼間全然だめではだめですよ。
釣りバカ日誌のハマちゃんみたいなものですよ。あれは周りの人に全部優越感を持たせるわけですから、素晴らしい存在ですよね。もっとも全部ハマちゃんだと企業は潰れますよ。だからそのバランスというのはあるんだけども・・・。
だから何を申し上げたいかというと、人それぞれに良さがあると・・・。目の前の仕事がこなせる、こなせない、だけでは組織全体という観点がないのです。それは見ていかないとだめなんじゃないのかなと思います。

(質)「職場に良い空気、雰囲気がありません。言うのと実践するのは違うというお話もありましたが・・・。」

確かに言いました。「良い空気、良い雰囲気の職場にするために、明日からすぐにでも実践できるちょっとした行動、コツがあったらおしえていただけないでしょうか。」
あります。これがあるんですよ、コツ・・・。コツコツやっていくことです。本当にそうなんです。コツコツやる以外ないんです。
コツコツやるべき内容を少しご紹介します。簡単です。掃除、きれいにするというのと挨拶。実はこれが基本です。これがきっちりできると雰囲気が明るくなりますね。
私が学んだことの一つは何かというと、今も業績を上げ続けているとか、素晴らしい組織、雰囲気が良いところというのはこの三つが全部できています。明るい、きれい、挨拶がきっちりできる。そしてこのレベルがすごいんです。
挨拶はすぐできるじゃないですか。これは当たり前ですけど、意外と当たり前ができないですから・・・。偏差値の高い企業は朝挨拶しない人が多いです。「うち、朝挨拶しないんですよ。」ひょっとして偏差値高いんじゃないですかとすぐ分かりますね。何で挨拶しているのか。パソコンです・・・。単語登録しているから「お」と入れると「おはようございます」と出てきて、写しがあって、全員に挨拶できる。それは挨拶とは言いません。血が通わないです。それではだめですね。
挨拶も明るい挨拶じゃないとマイナスになります。暗い表情で「おはようございます・・・」とみんな入って来たら、全員揃ったところで今日は帰りましょうとなるわけです。だから明るい挨拶がきっちりできるということです。
そうするとこういう人が出てきます。この間やった人がいるんです。「誰も反応しません。いつになったら彼らはやるんでしょう?」これに対しては明解に正確な解答があります。いつになったら挨拶が来るか。その時が来るまでやれば来るんです。それしかないんです。
その時、細かい話で大事なことを申し上げます。挨拶をしよう、明るくしよう。ところが先輩、後輩、誰もやろうとしない。この間もいました。自分の事務所の机を掃除して、椅子をきれいにして、雑巾がけするようにした。部長ですよ。後ろを見ると誰もついてこないと言うんですよ。分かります? その後ろを見る姿勢がまだ甘いんです。後ろを見ないで一心不乱にやると、いつのまにかついてきているんです。と言うと、そろそろいいかなとやはりまた見るんです。これでは、だめなんです。その感覚がまだ本気度が弱いのです。だめなんです。一心不乱にやり続ける。そうすると変わるみたいです。変わるまでやることです。
挨拶なんか相手がしなかったら簡単です。どこまでもやり続けることです。よしんばどこまでもやり続けても相手が挨拶しなかったとしましょう。横から見てください、どっちが人生の勝利者ですか。どっちが美しいですか。どっちが素晴らしい生き方をしていますか。明解でしょう。それが大事なんです。相手に要求することはありません。
基本的に相手に要求しないことですね。要求するとがっかりしますから・・・。要求しないで、ひらすら自らがやるということがものすごく大事じゃないのかなというふうに思います。
基本的にはやはり挨拶と掃除です。沖縄教育出版もそうだし・・・。沖縄教育出版は朝7時過ぎから国際通りを掃除しています。伊那食品工業も朝からやっていますよね。ホンダカーズ中央神奈川も同じ。今、バグジーも全店でやっています。きれいと挨拶と明るい、みんな同じなんです。
先週、その前と、実は校長先生のリーダーシップ研修、その後また鬼澤さんもそこに行かれていましたけども、校長先生たちとお話ししているとよく分かりますよ。きれいで挨拶ができて雰囲気が明るい所というのは、これだけで校内暴力、登校拒否、いじめ、全部減るんです。
有名な話がありますよね。ニューヨークで掃除をしたら犯罪が少なくなった。警察を増やすよりきれいにした方がいいんです。私、かつて県警に呼び出されたことがありました。呼び出しじゃなです、講演依頼です・・・。講演依頼があってある県警に行ったことがありました。それで申し上げました。取り締まるよりみんなで掃除をしてほしい。取り締まる対象が少なくなる。いろいろな事例をもって真顔で言いました。あなたたちの仕事は取り締まることじゃない。いちばん良いのは犯罪が起きないようにすることだ。そのためにはまずみなさんが制服で掃除をしてほしい。もしやったら本当に犯罪が減る・・・。やらないですけどね。いろいろ申し上げたんですけどね、だめでした。
ちなみにその時も面白かったですね。コミュニケーションが大事だというのでその話をしてほしいと・・・。なんで私が? あなたはこういう所に行ってこういう話をしてるじゃないですか。そこの企業ではこういう反応があるでしょう。ちゃんと裏はとっていますと言われて、さすが警察だなと・・・。本当に全部調査されていました。いくつかの企業に行った時の話の内容と相手の評価を全部とっていましたね。その上で、だから来ていただいたんですよと・・・。
なんでコミュニケーションだったと思いますか。警察の不祥事が多くなったのです。全国のキャリア官僚が東京で集まって相談した結論は何か。上司がもっと部下を理解することだとなったのです。あの世界は半分軍隊ですから、上意下達です。それが何をやったと思いますか。上下一体となったコミュニケーションをとることが最良の策だと結論が出たのです。ところが結論が出ても誰もできない。それをできるようになる可能性をあなたに見出したからやってほしい。これが本部長の依頼でした。面白かったです。これはちょっと本論じゃないのでもうやめます。

(質)「人と人との距離を縮めるために必要な心構え」、

これはこっちから寄っていくということですね。そうすると縮まります。もっとも一歩寄ったら二歩逃げる場合もあります。そうすると距離が離れます。なぜ離れるか分かりますか。自分が寄っていった時の雰囲気が距離をつくるようにしているのです。だから自らの雰囲気とか、表情とか、どんな言葉をかけているかが大事で、もし温かい、思いやりのある、気配りのある行動と言葉が出ているとすれば、その距離は絶対に縮まっていきます。
そうするとこういうのがあると思います。あの人とは距離を縮めたくない。組織の中には適切な距離を保ちたいという人もいるじゃないですか。もうちょっと言うと、距離をつくりたいと・・・。これは人間だからあるわけです。当然あります。
ここで大事なことを申し上げますと、これは人としての自分の幅なんです。なんで幅かというと、距離が離れている、一体感がないというのは、自分がこの小さい狭いサイズだと、ここにいる人というのは自分の幅から飛び出て嫌な人になってしまうのです。すなわち許容できませんから・・・。すると一体感がない。遠くの人も自分の幅が広いと一つになり一体感が出てくるわけです。この他人と一体感を持つにはこの自分の幅を広げないとだめなのです。
幅が広がると、こういう曲がった人間がいるとするじゃないですか。相手がくちゃくちゃと・・・。そうすると自分がこの狭い幅だと、はみ出た所が、あいつはだめだ、ここが・・・となるわけですね。自分の幅が大きいとこれでスポンと入ってしまうと、はみ出る場所がなくなるわけです。そうすると何か。あいつは真っ直ぐだとなるわけです。分かります? これ、今結構深い意味でご説明しました。曲がっている相手も、こちらの人としての幅が広ければ真っ直ぐな人間になるのです。そして真っ直ぐだなという思いで彼と付き合っていたら、本当に真っ直ぐの仕事をするし、生き方になっていくんです。面白いです。だから大事なのはあくまで自分の幅であるということです。
「思いやる」というのもそうです。思いやるという時に、遠くの人をどれだけ思いやれるか、気配りできるかというのは、多分その人の幅だと思います。思いやれないで、相手どころがビターッと自分のことだけしか考えられない、見えない人っているじゃないですか。それがその人の幅だと思います。狭い。一本の線のような幅しかない人もいらっしゃる。でも広げることもできるんです。広げるように努力しつ続ければ。広げることはできますけども、その時点ではやはり狭いということになるんでしょうね。
もう一度申し上げますが、距離縮めるためには寄っていく。寄っていく時の寄り方も大事ですよということです。もっと簡単に申し上げれば、ちょっと温かい言葉をかけるとかいうことじゃないかと思います。そうすると変わります。
日頃あまりテレビを見ないのですが、この間土曜日か日曜日、久しぶりに夕方テレビを見たら、北海道の余市高校、最後の高校という所があるんですよね。いろいろな所で退学になって、最後の最後で受け入れるという高校があるんです。もうはちゃめちゃになった人・・・。その彼らを町で受け入れていてすごいです。そこの寮母さん、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。もうぐちゃぐちゃのが来るわけです。ある子供をずっと何ヶ月か撮っていたんでしょうね。あの時、すごいなと思ったのは、その寮母さんが授業参観か何か見に行って、「ちゃんと受けなさい」とふてくされている生徒に言うと、みんな素直に従うんです。あれ、先生が言っても聞かないんです。ですから誰が言うかだ、というのはこれもそうだなと思いましたけども・・・。
一言一言声をかける。その一言がやはり相手に届いているんです。ああいう人というのは、どんな人であれ、普通歩いている人でもちょっと目を背けたくなるような人に対してさへも、ふっと自分から寄っていって、スポーンと柔らかく自然な感じで相手を包んでいる人なのかなと・・・。まさに距離を縮めている、一つになっているわけです。距離を縮めた時どうなるかというと、いちばん距離のないのが一体感ですから、そうすると相手がこちらの思いを理解してくれるんですね。

理解といえば、これも大事なことなのですが、自分を理解してもらう最良の策があります。これは、本当はこれだけで1時間ぐらいお話しさせていただくといいんですけども、何かというと、最近私が感じたことなんです。自分を理解してもらう最良の策は、理解してほしい人を理解することなんです。このことには最近まで気がつかなかったです。相手のことを本当に理解した時、相手は変わります。
この観点をもって別の軸で見ていくとこうなります。すなわち私はどうも周りから全然理解されませんという人・・・。必ずと言っていいほど、あなたはあなたの周りの人のことをを何一つ理解していない。実は理解されないと思っている人は周りを理解していない人です。これは間違いないです。
相手を理解した時、本当に相手は変わります。本当に相手を理解したというのは一体感、一体感を持った時、相手もこっちの感覚を分かってくれるんです。そうすると言わなくても自分を理解してくれるんです。本当に変わります。
最近もいくつか事例をもらいました。いくら言ってもだめだった人、徹底して聴いて、聴いて、聴いて、聴いた。本当に聴いた。その時に何と言ったか。「こうしてほしいんですね。分かりました、そのようにさせていただきます。」何年間も言ってもやらなかったのに、瞬時にしてやるようになった。いくつかこのような事例があります。
その時大事なのは、99%相手を理解したというのは0と同じなんだなということに気がついたんです。相手を100%理解しないとだめなんです。100度にならないと、99度では・・・。99度ではお湯のままなのです。100度の時に気化します。劇的な変革が起きるのです。1度の差だけど、天地の開きがあるということです。これに気がつきました。何ヶ月か前のことです。
だから、私はあなたのことを理解しましたよ、と普通は3、4割相手の話を聴いただけでこちらからどんどん話し出すわけです。でも相手からしたら自分のことを理解していないんです。3、4割どころか、99でもだめで、相手の全て、全てと言っても難しいけども、本当に言いたいとか、思っているところのことを理解した時、相手が変わるんだなと・・・。
だからどうもこの人はうまく動いてくれないな、あの人は何を考えているか分からないな、どうなんだ、こうなんだという方が部下や従業員、社員の方にいらっしゃると思います。裏を返すと、必ずその人のことを理解していないですね。それはもう間違いないと思うようになりました。
だからどれだけ理解するかということが大事で、そのためには、理解するためには人の話を聴かなければいけない。本音で話をしてもらわなければいけない。
「分かった、じゃあ今日はみんな本音で話をしてくれ。」「誰がするか・・・あなたなんかに。」こうなるわけです。すなわち本音で話をしてもらえるようになるには、前半の最後にお話したところにいきます、信頼です。信頼ということが基本にないところで誰も本音で語らないということになるわけですね。

(質)「思いを共有していくためにはどのような努力をすべきか。」

簡単に言うと、いろいろな所で思いを語り合うことです。大事なことを何度も何度も語り合うことです。経営理念を語り合う。何をしたいか、こうだったよな。それを職場以外でも語り合うのがいいです。
昔は今よりも多分アフターファイブにお酒を飲むという機会が多かったと思います。今はどの業界でも以前より減っています。私のような団塊の世代は、上司が「酒に行くか?」と言うのは、行くかというのは質問じゃなくて、行くぞというだけの話です。命令です。酒を飲む時間はもちろん全部実質勤務時間ですよ。残業代はもちろんつきません。そんなもんですよ。そして例によって例のパターンの説教が始まる。かつてはこのような時間が本当に人生の無駄だと思っていました。
この歳になると見方が変わるんです。あれは大事な時間だった。忍耐力を養う最高の場ですよ。ぐだぐだした同じ話を何回も聴く。相当な忍耐力が要りますよ。その忍耐力を養う場が今はなくなってしまいましたね。いや、あれが良いと言っているのではありませんよ・・・。それともう一つ、何度も何度も同じ話をされるので、こっちも理解できるというか・・・。やはり物事は何事も良い面と悪い面とがあるなと・・・。
だからといって上司の方、部下を連れて、「大久保さんが言ってたろ。飲みに行って俺の話を聞け。」その発想はもう間違いです。これは一言言っておきますけども・・・。

「ドクターヘリのように同じ思いを持った人が集まれば同じ方向を向けると思うが、現在異なる方向を向いている人と・・・。」
ああ、自分の組織の中の個人個人の向きがバラバラなんですね。これは組織のスタンダードです。決してあなたが不幸なのではないことをまず理解してください。まず組織全員が同じ方向を向いているのは奇跡です。というか例外なんです。実はさっきお話しした企業というのは全部例外なんです。そういう意味ではあまり参考にならないのかもしれないです。だけどそういうのがこの世にあるから、できないことはないという具合に理解していただきたいですね。
これをどういうふうに同じ方向に向けるか。私がいちばんお勧めするのは語り合うことですね。お互い腹を割って語り合う。
もう一つは一緒に遊ぶというのが大事ですね。私が最近よく言う言葉の一つは、余談と遊びの多い組織が強い。余談、遊び、イベント事が多い組織は強いですね。いまだに強いというのが分かりました。だから飲み会だ、バーベキューパーティーだ、運動会だ、社員旅行だ、バス旅行だ・・・。
ネッツトヨタ南国は毎月のようにお客さんを呼んでものすごいイベントをやります。「これだけやったら何台ぐらい商談が成立するんですか。」「いや、商談は関係ありません。社員の一体感をつくっていく、その風土づくりが目的です。」すごいですね。それをずっとやってこられたんです。他のディラーのトップからはそんなことで生きていけるかと思われていたそうです。しかし、だからこの苦境に面して輝いたんです。「本物は苦境で光を放つ」まさにそのものです。実は組織のベースを作ってきたんですね。土壌を耕してきたようなものです。だから一体感をつくる最良の策は、一緒になって遊ぶということが大事です。
私自身は実はお酒は全くと言ってよいほど飲めません。お猪口一杯でだめです。ウイスキーボンボンを食べたら、運転できないほほです。ときには奈良漬でも。でもものすごくお酒の場は大事だと思います。お酒を飲む、みんなで遊びに行く・・・。伊那食品工業は2年に1回海外旅行と言いましたが、それ以外にも色々なイベント事があります。川越胃腸病院も病院なのに四六時中イベントを開催しています。みんなそうなんですよ。これらのことが私が最近発見したことです。だから遊びというのはものすごく大事なんです。そうすると多分皆が同じ方向を向きやすくなるんじゃないかと思います。
ちなみに、こっち向けと言っても向くものではありません。向くかどうかは相手の意思ですから・・・。向けと言うのでなく向くようにすることが大切です。

(質)「ご講演ありがとうございました。正月とこの講演会、年に2回気持ちを新たにする場としてとても楽しみにしております。質問です。私も月曜日の出社を辛く感じている1人です。」

これも極めて普通のことです。
この間ある会社に行って、200人です。「月曜日の朝、楽しい人?」ゼロでした。足が鎖につながれているような感じ? 8割ぐらいバッと手が挙がりました。その手の挙がり方が結構勢いがあったんです。だから違和感があったんですけども・・・。それも笑顔でバッと手を挙げるわけです。苦しいですといって笑顔なんです。そんなに問題なのかなと・・・。やはり問題でした。その後、やはり良くないんです。
(質)「逆に言うと、2人の娘に囲まれた家庭が楽しくて仕方がない。」
幸せじゃないですか。滅茶苦茶幸せですよ。会社ではまあまあ生きても、家でもうだめという人がいっぱいいますよ。だから月曜日が楽しいというのは、土日が終わって出られるからという人がいるんですから・・・。もう楽しい角度が違うでしょう。
本当にあったんです。幹部研修で「月曜日の朝、楽しい人?」「はい!」「なぜですか?」「もう家にいるのがきつくてきつくて、しょうがないんです。月曜日は家から出られるので楽しいんです。」これは違うわけですよね。この方は幸せですよ。

(質)「大久保さんはライフワークバランスについてどんなお考えですか。」

何も考えていないですね。何と言ったらよいのでしょうか・・・。そういう言葉って多分日本にはかつてなかったと思います。
一体ですから区分けなんてしていないでしょう。それは仕事と自分の人生を分けて、仕事は辛いから自分の人生は、という感覚がちょっとあるんじゃないかと・・・。とんでもないことだと思います。だって仕事の時間が人生のゴールデンアワーでいちばん長いじゃないですか。70、80になって時間とお金ができたら、今度体がほとんど動かない。そして若い時はよく分からない。すなわちゴールデンアワーの期間のゴールデンタイムを職場で過ごしているわけです。そこがつまらないというのは、イコールつまらない人生になるわけです。それはよくないと僕は思います。ですから、仕事が人生そのもので、仕事が充実していれば人生が豊かになる、元々日本人の発想でそうだったんじゃないかなと思います。
 ちなみに私の場合は、仕事と生活は全く区分けができてないですね。娘たちから言われています。「お父さんって人前で好きなこと言っているだけでしょう、幸せね。」とこの間も言われました。言われてみればそうだなと思って、また謙虚に素直に考えたんですけども・・・。二十歳過ぎの娘にいいわねとか言われて・・・。「お父さんみたいに好きなことを言って、それで仕事になる人って世の中にどれぐらいいるの?」「分からん・・・。」「やっぱり幸せね」と言われました。娘から幸せねと言われる父親ってやはり幸せなんでしょうね。
 昔だったら「うるさい」とか、「これでもいろいろ考えて大変なんだ、他人には分からない苦労も色々とあるだんぞ」とか言っています。今は自分が変わってきたんです。子供に言われるでしょう。「そうだな・・・。」と素直に頷いています。言いたいことはいろいろ山のようにあるんですよ。でも言っても分かりっこないから・・・。この講演録、見せられないですね。そんな、学生ちょっと出たぐらいでは分からないです。実際のところは。そこで言ってもしょうがないし、それに客観的に言っているそれも正しいだろうなというので、最近はさっき書いた自分自身の度量というか、幅が出てきた可能性がありますね。あくまで可能性ですが。
逆説的に言えば、自分で言っている間は多分できていないんです。自分が成長しましたと言っているということは、多分まだ成長できていないんです。本当に成長した人って分からないですから・・・。周りが言うんです。
これ以上はちょっとやめます。墓穴を掘る可能性がありますので・・・。

(質)「良い職場は特に女性が生き生きと働いていると言われます。」
いや、特にじゃなくて、女性が生き生きしている所の方が多いのです。
(質)「このことについてのご感想をお聞かせください。」

感想? 良い職場は女性が生き生きと働いている。そういう所にいる男も人も幸せじゃないですか。それでよし、というのでいかがでしょうか。これは全然答えていない可能性がありますね・・・。
生き生きとした職場をつくるって大事です。なぜ職場で男性があまり生き生きしていなくて、女性が生き生きしているか。ちゃんと理由があるはずです。そこからご自身も学ばれたらよいと思います。きっと何かがありますよ。
でもまだいいと思います。「うちは男女を問わず生き生きしていません。どうしたらよろしいでしょうか。」この質問の方が多いですから・・・。そういう意味では、一言で申し上げれば、良い職場でよかったですね、と申し上げたいです。

(質)「知行合一、言行一致といいます。知っていることを実践に移す難しさと実践を継続し続ける難しさがあると考えます。」
そのとおりです。
(質)「そこで、思いを持ち続け、それを実践し続けるためのアドバイス」と・・・。

これも良い質問ですね。
頭で理解するのと行動に移せるのというのは実は次元が違います。そのくらい難しいです。乖離があります。そしてもう一つ次元がある。行動に移したことをし続けるというのは、またもう一つの次元を乗り越えないとし続けられない。そしてし続けない限りにおいて結果は出てこないということです。
知識で学んだことを実践できる人というのは本当に少ないです。やはりやらないとだめです。
例えばこういう言葉があるじゃないですか。「百聞は一見にしかず」、百聞くよりも一つ見る方がすごいぞ、とありますよね。百見るよりも一つ考える方がすごいぞ。「百見は一考にしかず」と・・・。百考えるよりも一つ行動する方がすごいんだぞ。こういうふうに続くそうです。すなわち「百聞は一見にしかず」、「百見は一考にしかず」、「百考は一行にしかず」、最後の「行」というのは「行う」なんですよね。これは掛け算でいくと、なんぼ聞いても一つ行動する方がはるかに大事だということです。
何を言っているか。なんだかんだ言っていてもやらないとだめだということです。考えているだけでは物事は進まない。だからまずやってみるということですよね。それが継続できない事ときは、何度も何度も決意することです。
決意できない方、決意持続マシーンというのがあります。インターネットで売っています。十何年前に日体大の先生がインターネットで決意持続マシーンというのを購入されて、その話を聞いてすごいなと思いました。このくらいの小さな箱に入って送ってきます。当時で2万8千円です。箱を開けると、決意が持続できるとどんなに人生が変わるかということがすっと書いてあるのです。それは分かっているんですけどね、ずっと強調して書いてある。
さて、いよいよ決意持続マシーンを使おう。まずあなたの決意を書け。胸のポケットに入れろ。そして決意持続マシーンを身につけろ。10なら10とセットしろ。10分後にビリビリと震えるんですよ。その決意を読め。
これだけなんです。だから買う必要ないです。でもすごく本質を突いているでしょう。何回も決意することなんです。
多くの方は、私なんかも典型です。100回決意してもできないです。そして決意し続けようという決意もできない。これも持続しない。情けないぐらいです。本当に情けない。そんなもんです。だから私は格好良いことは言えなくて、本当にそういう意味では、「大久保さん、あなた人前で話す資格あるんですか」と言われたら即答します。「全くありません!」ただ、これは資格制度じゃないんです。依頼があったので出てきています。こういうことなのです。
話がそれましたが、だから何度も決意することなのです。決意することを忘れるので、紙に書くということは良いことですね。そして書くだけではだめ。毎日読む。もっと細かいことを言いましょうか。朝読んで、夜できたかどうかを確認する。ノートのマス目に、今日はできた、できない、○×△、これを3ヶ月続けることができたら絶対に変化は起きます。よしんば2ヶ月の29日で終わったら、もう1回3ヶ月間ですよ。継続して3ヶ月、もしやったら変わりますね。まずそれだけのことであっても、3ヶ月続けるというのは大変。私自身ほとんどできたことがありません。
もう一つ言いましょう。それができないで、たいしたことはできないということです。その程度もできなくて・・・。その程度できなくて自分を変える? 無理です、はい。
だからまず決意を書く。よろしいでしょうか!意志の弱い人は、例えば結婚されて奥さんがいらっしゃる方、奥さんに言ってもらえばいいです。家に帰ったら「あなた、今日これできた?」このように言ってもらう。そうすると帰らなくなる人が出てくるかもしれないですね。お子さんに言ってもらうのもいいです。お子さんとお互いに決意し合ってもいいかもしれませんね。そして確認し合う。これなかなかよい案だと思いませんが。
要は何度も何度も確認して検証する。これは経営品質の基本のことですが、物事はこれをやっていくことなんです。それ以上に良いアプローチは多分あまりないのではないかなというふうに思います。
ちなみにやらないのは知っていないのと同じです。知っていないのと同じでなんです!「俺、前から知ってたよ。」やってないじゃない。前から知っていたら前からやれ。こういう話ですよね。

これはさっきもいただきましたね。
(質)「従業員と距離を縮めるアドバイス」、

従業員ということは、この方は経営者の方ですね。この時大事なことは、距離感というのは経営トップ層と従業員とはまるで違うということをしっかり認識しておくことです。どういうことか申しますと、経営者が自分だとして、ここにいるとしますよね。従業員がここにいて、相手がここにいる。このぐらいの距離だと思うでしょう。(10センチぐらい)これは自分から見ての距離なんです。大事なのは相手側から見ることで、実は相手側から見ると、相手はこの辺にいる可能性があります。(100センチ)
相手の立場に立って物事を感じ取れるとか分かる人は、この距離感があるなという前提で話ができる人なんです。そうするとどうなるかというと、言葉が届くのです。実際は100センチの距離がるのに、10センチのつもりで、途中で投げた言葉はどこかに落ちちゃうんです。すなわちコミュニケーションがとれていない、とれない、言葉が届かないということになるんですね。
ですから距離感、距離をしっかり認識しておくというのはとても大事なんですが。少なくとも組織では上から見たときと下から見た時には、下から見た人の方が相当距離が離れているということを頭の隅に置いておいた方がいいと思います。こういうふうに手をかけた時、相手には届いていないんです。
 あとはやはり、もしこの方が経営トップで、従業員一人ひとりとの距離を縮めたいのであれば、最良の策は、さっき申し上げたように朝笑顔で一言、ちょっと声をかけるということだと思います。ちょっと一言声をかけられるってすごく大事ですから・・・。
ただし、前向きな声のかけ方ですよ。「何やってんだ!」っていうのはだめですよ。毎朝一人ひとり声をかけてますけど、やる気が出ないというのでいろいろ聞いたら、「毎朝社長に叱られるんです」と・・・。いや、相手は声をかけているって言っているぞ。これではかけ方が間違っています。だめですね。
 声をかける時、さっき申し上げましたように表情がすごく大事です。言っている言葉が前向きでも、表情が否定的で暗いと相手はもっと嫌ですからね。「頑張ってるな」という言葉とは裏腹に否定の顔だったら、ばかにされたと思うじゃないですか。なぜか分かります? 表情の方が発する言葉よりもメッセージ力があるのです。表情の方がはるかに重たくて、相手は常に本質を見ているだけなんです。
 だからそういう意味では、表情と言葉と動作で言葉をかける。表情と言葉と動作、全てが前向きで相手にアプローチできたらいいですね。
 それでも、こちらからアプローチしていったときに、信頼がないと相手は逃げますから。そう意味ではまた信頼というのが大事になるかもしれないですね。
 ちなみにバグジーの久保さんもそうだし、川越胃腸病院の望月院長もそうです。相澤会長もそうだな。みんな共通しているのは、誕生日に従業員に全部手紙を書かれて
います。だいたい墨で。間違ってもワープロで最後にサインだけというのはないです。いちばんひどいのは定型文、宛名だけ違う。そんなの出すなってことですよね。なぜか分かります? 思いやりというのは手間隙だから・・・。手間隙がかからないのは思いやりにならないわけです。
年賀状裏表印刷。どうしてる?という手書きの一言もない。捨てたくなりません? 俺は出してるぞと言っているだけ・・・。裏表全部印刷だったら、出さない方がいいと思っています。一言でも添えてあればまだいいですよ。「元気でやっています」とか、「どうですか」とか、その一言もない。僕はそういうのはあまり良くないんじゃないかと思っています。

 はい、次の質問に行きます。
(質)「良い雰囲気をつくるための努力の方法・・・」

今から1時間ぐらい欲しいですね。でも1時間ないんで・・・。
 良い雰囲気をつくる。これはもう基本的には表情と言葉と思いですよ。その全てを良い方向に強引に、自分の思いは違っていても強引にもっていくことです。
 強引にもっていくというので、この間プロフェッショナルの茂木先生の番組でもやっていましたが、割り箸をくわえさせて口角、口の端を上げさせる。面白くなくても脳が活性化するそうですね。いや、ちゃんとデータで言っていましたから・・・。だから口を開けて笑い顔をするというのは良いんです。つまらなくても笑ったら良くなるんですって・・・。
 ご承知のように、笑うとガン細胞を殺すナチュラルキラー細胞というのが増えるわけです。十数年前から証明されてます。村上先生なんかも糖尿病患者を連れて行くじゃないですか。大学の先生の授業を受けさせたら、わずか1時間聴いただけで患者さんの血糖値がドーンと上がるんですって。大学の先生もすごいパワーですよね。関西の漫才を聞かせに行った。みんな血糖値が下がるそうです。血糖値って笑うだけでいくらでも下がるんですって。だから血糖値を上げたい人はどんどん怒ったらいいですよ。そのうちパーンと突き抜けますから・・・。本当にそうです。
 ちなみに笑いというのでは、これも本当にある一部上場の企業で幹部研修をやっていた時、命がけで笑っているという人がいました。つまらない昔の話を思い出しました。二度脳の血管が切れかかって倒れているんですよ。二度倒れて助かったんですけど、その時病院で「次の起こった時、あなたは終わります」と・・・。どうしたらいいんですかと聞いたら医者は何と言ったか。「怒らないことだ」と言われた。ですから命がけで怒らないようにしていますと、本当ですよね。命がかかっているそうです。カーッとなると血液が濁って、通りが悪くなって、血管が収縮して、プチンといってしまうわけです。そのドクターは「怒らないことです」と・・・。ちなみにその方の怒り方はすごかったそうです。机は蹴る。電話は投げつける。そういう怒り方をしていた人です。投げつけようとして、投げた瞬間自分の命が終わる。そこまでいくとやはり人は投げないですね。本人がそのように話していましたから。
それを続けたらどうなったと思います? その方はものすごく良い雰囲気になっていました。私は過去のことは分からないので「随分良い雰囲気をされてますね」と・・・。「はい、私はここ数年命がけで笑うように努力してきました」と今の話を聞いたんですよ。本当の話です。
だから自分がそう思っていなくても、そっちの方向に強引にもっていくことの大切さを今ちょっとご紹介しているだけです。ものすごく大事です。
あとつまらない時は、とにかく面白いものを見ることですよね。落語を聴くとか、大事ですよね。個人的には亀有公園前派出所のマンガとか。日本人って特にありますけど、寂しいと寂しい世界にずっと沈み込んでいって、その後ろ姿を自分で想像して何か心地よい気持ちになる。どうなるか分かります? そういう方はさらに沈みますよ。沈むって本当は格好悪いですから・・・。あの寂しい後姿が魅力・・・?違います!そういうものは、魅力はないんです。そういうふうに思っていただく方がいいんじゃないかなと思います。

(質)「ICPEの月例会案内を何回出しても全く参加する気のない人がいます。」これはない人はいるんですよ。「どうしたらいいか。」

これはあとで鬼澤さんにゆっくり聞いてみてください。簡単に言うと、やはり面白くないからでしょうね。もしくは、その後面白いのがあっても、1回出た時に面白くなかったら、人は一部分を見て全部に色を塗るじゃないですか。ああ、あれはつまらないもんだよと・・・。ありますよね。
今のも結構大事で、判断する時にちょっと見てその色に染めちゃう人っているんですよ、というか多くの思考回路がそのようになっています。あの人はこういう人だと・・・。ちょっと待って、それってその時のそういうシーンだけじゃないの? アメリカのどこか一ヶ所に行って、アメリカはこうだと言うのと同じです。アメリカっていっぱいあるんです。「どこのアメリカに行ったの?」「いや、アメリカ・・・。アメリカ人ってこうですよね。」「何人あったの?」「3人。」そのパターンの思考回路を回す人って多いですね。
あの人はこうだ。裏から見たら全然違う素晴らしい面が見えるかもしれない。だからいくつかポイントがあるんですけども、あの人はこうですよねという否定的なことを聞いた時に、あなたはそういう面を見たんですね、そういう面があるのかもしれないな、ぐらいに思わないといけないんです。でもまた受ける方も、さらに増幅して「あの人ってこうなんだって」と言う人が多いんです。これはだめです。
私の場合は人が何か言った時、そのままストレートに鵜呑みにしない癖がついています。「あなたはそういう側面を見た。もっと言いましょう。あなたはそういう側面から見る人なんですね」と見ます。だってその人がだめだと言っていても、別の方から見たらすごい素晴らしい人だと言われている人はいっぱいいますから・・・。
ちょっとこれは話が違いますね。やめます。

 (質)「経営者は常に会社にいた方がいいでしょうか。」

これ、とても真面目な質問です。
 簡単です。いた方がいい人といない方がいい人がいます。そうなんです。いた方が良い人はいた方が良いんですよ。これをいた方がいいんだとか、いない方がいいんだとか、一律で言うというのは適切な回答でないと思います。そんなものは人によるじゃないですか。そうでしょう。
 従業員に聞いてみればいいんです。「私はいた方がいい? いない方がいい?」いた方がいいかと聞いて無反応だったら、いない方がいいということです。その時にいない方がいいとは言えないじゃないですか。そうでしょう。それは言葉ではなく反応を見ればいいです。
 もう一つは、従業員が何十人かいるとして、自分と本当に信頼し合っている人がいたら、「自分がいる時といない時で雰囲気はどうなんだ? やる気はどうなっているんだ?」と聞いてみることですよ。その彼が、「社長、実は申し上げにくいんですけど、いない時はみんな生き生きしています。」それならいない方がいいと・・・。いないで何をしたらいいか。外で遊んでお土産でも買って、「どうぞ、みんなありがとう!」と言ったらやる気が出るんです。
 この事例も、この中身で説明できる事例を僕はいっぱい持っています。だいたい管理者の半分はいない方がいいんです。いない方がいい人に限って自分はいなきゃだめだと思ってるんです。分かりますでしょうか、これ? いた方がいい人は、多くの方はいてもいなくても同じだと言います。もっとも本当にいてもいなくても同じ人もいるんです。ここが微妙で難しいところなんです。1割ぐらいはそうなんです。だから表面の言葉だけではなかなか判断できないです。
 もう一つ言えば、今のご質問に答えれば、いた方がいい社長になってくださいということです。でもずっといるというのもどうなのかな。いなくても仕事ができるようになるというのも大事でしょうね。だから時々任せるというのも大事でしょうね。

(質)「離れた瞬間汚いと感じるというお話、大変参考になりました。ここで質問ですが、部下との距離感を近づけるため、どのような行動をすることがよいか。私は相手に合わせることを心がけています。」

 これも一概に言えないんですね・・・。実はですね、距離は近づけた方がいいんですけども、相手に合わせながらこちらに合わせてもらうというのも実は仕事上大事なんです。それというのはやはり関係性によってちょっと変わってくるんです。
距離はあるけれど尊敬されていたら大丈夫なんです。尊敬も信頼もされていないという場合は、ただし相手に合わせるといっても、相手から見て合わせてもらっていると感じるかどうかはまた別なのです。これは難しいところです。
ですから合わせるということは悪いことではないと思いますけども、どうなんだろうな・・・。合わせる以上に、さっき申し上げたように相手の思いを本当に理解するということが大事でしょうね。それが基本じゃないかなというふうに思います。

(質)「自分が信頼、尊敬されていないことがよく分かりました。」

すごい気づきですね、この方は・・・。こういう人は可能性があるんです。私の話を聴いて胸が痛くなる人、良くなる可能性がある方です。それは自分の足らない点が見えた人なんです。微妙に言ってるんですよ。「良くなる可能性がある」と言ったんです。「良くなれます」と言ったら無責任ですから。それから何も感じない人、ずっとそのままでいく可能性があります。

(質)「ではどう勉強すればいいか分からないのですが、どうすれば人間的に素晴らしい人になれるか。」

さっきお答えしましたね。とにかく素晴らしいと思う人にいっぱい出会うことです。
例えば今日冒頭に申し上げたMESHサポート、あのドクターヘリの方、あの方のお話をうかがっているとやはり、正直言って打ちひしがれたんですよ、自分が。簡単に言うと、あまり生きてこなかったなという感じになりました。リッツ・カールトンの高野さんと初めて川越胃腸病院に言って望月先生のお話をうかがって、二人で出て帰りがけに何と言ったか。「お互いに充分生きてこなかった気がしますね。」こうなるんですよ。本当になるんです。生きてるレベルが違うからです。
でもだめだなといってそれで終わらないで、少しでも近づかなきゃという思いです。ただ、まあ残念ながら、僕自身この年になって追いつくのは難しいと思っています。でも少しでも近づきたいなというふうに思っています。まだ時間はあると思いますので。

(質)「今の若い人の考え方に合わないときには、やはり合わせないといけないのでしょうか。」

これは時と場合と人によるんです。合わせなくても、こちらが信念を持って、根底に思いやりと気づきで配慮がきっちりできていたら、相手が理解してこちらに合わせることも十分あり得ます。だからこれも一概に言えないですね。

(質)「昨年は炭焼き職人の本を紹介していただきました。今年はどんな本を紹介していただけますか。ちなみに大久保さんの『月曜日の朝からやる気になる働き方』は読みました。」

ないですね。こうは言わないですけどね・・・。炭焼き職人の本を読まれたら、あとは経営という観点ではあれが良いと思います。伊那食品の塚越会長が書かれた、光文社から出ている『リストラなしの年輪経営』というのがあります。あの本は良いですね。痛快ですね。いろいろな経営者に読んでいただきたいというか、私が見る感じでは、あの中に世界を救う経営の考え方が書かれていると思います。だから皆がああいう経営をしたら本当に世の中幸せになるんじゃないかなというふうに思っています。

(質)「美しい人でいるために、どういうふうに自らを変えていけばよいと思いますか。ご自身の経験談でもいいのでお話ししていただけますか。」

はい。そういうことが大事だということに私は今気がついたレベルです。自分自身はまるでできていません。ですから細かく言うと、所作、ふるまい、表情、動作、人への配慮が、美しい人間になりたいと思うところからまずスタートじゃないかなと・・・。ちなみに僕は60歳近くになるまでそういうことは思えなかった人間です。恥ずかしい話ですけど・・・。
うつくしい経営が大事だというのも、何年も前にそういう言葉を聞いたことがあります。経営にうつくしさがある。自分自身のレベルがそういう人間だから分からないんです。ずっとそんなところできましたので、だからまずそういうことが大事だ、そういう自分になりたいと思うことでしょうね。
例えば本当につまらない、細かいことを言いますと、新幹線や列車に乗った時、シートをバタンと倒す時に必ず後ろを見るとか。見ないでバタンと倒すのはあまり格好良くないですよね。共通していますね。見ないでバタンと倒す人、降りていく時に絶対に直さない人ですよ。見事に一貫性があります。なるほどなと思いますね。それから倒す時に後ろを見て、降りる時に直す人は、中で販売員の方が来られますよね。商品を出されますよね。ありがとうございますと言う人が多いです。人はある意味一貫してるんです。
切符の検査が来るじゃないですか。新幹線は1週間に何回か乗ることが多いので・・・。私も最近努力しています。どういうふうに努力するのか。「切符拝見。」「はい。」向こうが「ありがとうございました」って言いますよね。「ありがとうございます。」と返答します。努力です。
何年も前から努力している一つは、飛行機なんか降りる時に、ありがとうございましたとCAの方が言っていますよね。必ず「ありがとうございました」と言って降りるようにしています。これは数年前から・・・。タクシーに乗る時も降りる時も同じ。「こんにちは」、「こんばんは」、「おはようございます」と言うようになったのは50半ばすぎ。それまでは黙って乗っていました。降りる時も「どうも。」
「どうも」という言葉は美しくないですね。それさえ分からなかったです。「どうも」、この響き、美しさがないでしょう。「どうもありがとうございます」と言ったら美しいじゃないですか。だから今はそのように言うようにしています。
ただし私は根が生えていません。習慣化していないので忘れることがあります。自分が本物じゃないから・・・。でもそうやって努力をしています。
今、私は表情を良くすることも努力し続けています。固いんですね。3年前会った人に言われました。「別人ですね。」「何が?」「表情、雰囲気が違いますね。何かあったんですか?」はい、表情が厳しいことに気がついて、努力し続けていますと。
3年前も、その前の3年前の人に言われました。「前は怒ったような顔でしゃべっていましたね。」一生懸命しゃべっただけです。でも相手から見たら怒っていたというんです。
私は今、幹部研修で何と言っているか。相手がどう感じたか、それが全てなんです。こちらの実態の思いとは関係ないという話をしています。だから相手から見て怒っているというのだったら、怒っているのと同じなんです。人は見た目が9割。違います。相手から見た時は見た目が10割です。
そういうことが分かってきた時、表情とか、動作とか・・・。例えばこういうホテルでもっと大きな会なんかやると、控え室があって、ホテルでサポートしてくれる人がついてくれることがあるんです。大きな講演会なんかになると、お付きの人がつくこともあります。どっちかっと言うと僕はあまり好きじゃないです。1人でそこら辺をぶらっとしている方が好きなんですけど・・・。かつて大阪でやった時に、一回ずつ何かを持ってきてくださった時に、いつも「ありがとうございます」、「これいかがですか?」「結構です。ありがとうございます」と言ったことがあります。事務局の人に言われました。「ホテルの人が驚いていました。講師の人で、あんなにありがとうございますと言う人に初めてお会いしました。」ということを言われたこともあります。
僕はそういうのがまるでできていない人間だったのです。今、意思、努力でやっています。もうあと10年ぐらい経ったら、もうちょっとまともになるかもしれません。20年経ったらいない可能性もありますから何とも言えませんけども・・・。一応私の場合、93までしゃべる予定になっていまして、持ち時間がまだちょっとあるんです。
最近日野原先生を見ていて、93では短いと感じるようになりました。あの方は10年、20年先までのカレンダー、予定表を持っているんでしょう。あの年で入れて大丈夫かと思いますよね。あの人のカレンダーって確か3年分あるんですよね。翌年と翌年まであるんでしょう。書き込んでいくんですよ。すごいですね。あれほど前向きな生き方はないです。そして実際いろいろ工夫されているじゃないですか。病院の中を歩く時、全部階段でしょう。エレベーター、エスカレーターは使わない。だから若いドクターよりスースースーと階段を上がるっていうじゃないですか。老いというのは全て足からくるからと・・・。ちゃんと実践されてます。
最近分かったのは、脳細胞は使っている限りにおいては、実は意外と年を取っても増えるということが分かってきたわけでしょう。使わないと減るんですよ。
もう一つ、晩酌やるとすごく減るらしいですよ。毎晩飲む人、間違いなくすごく減ってるんです。ただし脳細胞のトータルの量が多いので、残りを使えば問題はないんです。ここに救いがあるんです。
この話を聞いたらこの間いましたね。「だから俺、頭が回らないんだ。」毎晩飲んでいる?違う、使っていないんだということですよね。

(質)「心技体と体技心、大久保さんはどちらの言葉がお好きでしょうか。多分両方とも『心・心・心』ですと言われそうな気がしますが・・・。」

分かってますね。次いきます。
というか、順番より全部大事ですね。でもやはり最初は思いなんでしょうね。思いですよね。でも体も大事だし、技も大事ですよね。全部大事です。
ちなみに体が大事だという観点では、日本人のビジネスマンはそのいちばん大事なものを大事にしていないです。「いや、昨日も深酒しちゃって・・・。」いいんですか。毎晩深酒して・・・。絶対良くないですよ。食事? 脂っこいものを摂る。絶対に良くない。明確に良くないんですから・・・。日本人の体には野菜が合うように構造が出来ているのですから。
ご存知ですか。玄米には栄養素がほとんど含まれているそうです。だから私は今玄米です。玄米スープの作り方、お教えしましょうか。最近凝っているんですよ。ちゃんと炒めて、炒める量とか時間もあって、どのくらいの水でどう焚いていくかというのがあるんですけども、ものすごく美味しいです。玄米に馴染むとどうなると思いますか?白米が気抜けしているのが分かるようになります。だってあれはほとんどの栄養を取り除いた残りみたいなものですから・・・。それでもやはりお米はまだいいんですけど。
何を言っているかというと、やはり食事について気をつけなければいけないんです。日本人の体というのは腸が長いですから、肉食に合っていないようにできているわけでしょう。冷たい野菜も体に合わないようになっているんです。昔から温野菜が良いようになっている。特に日本人は・・・。それは体の構造でそうなっているわけです。エスキモーは違うわけです。寒い所にいるから、肉みたいなのを摂って、それでもちゃんと分解酵素があるわけです。何のセミナーか分からなくなってきましたね・・・。
そういうこともちゃんと勉強すべきだと思います。ただし食べ物だけではだめです。運動が要るんです。運動だけでもだめなんです。運動と食べ物だけでもだめなんです。毎日心が沈んでいたら・・・。全ては心だ。違うんです。思いも大事なんです。食事という観点での体の維持も大事だし、運動というのも大事なんです。だから1日に1回は絶対に汗を流した方がいいとか、心拍数を上げた方がいいというのは事実なわけでしょう。そういうことを何もやらないで毎晩飲んでいます。だめですよ、それでは!
それだったらそれはちょっとやめて、そのお金と時間を別の方に使うべきですね。日本人は使っていない人が多いです。いちばん大事なものを大事にしていないですよ。どんなに昇進したって、給料をたくさん貰ったって、入院したらお終いです。使えないですよ。あ、使えるか、病院で使えますけども、もっと良い所で使った方がいいじゃないですか。やはりきっちりやっていくべきだと思いますね。
それから健康法っていうのがあるでしょう。何か健康セミナーみたいになってきちゃったけど・・・。健康法とか治療法ってあるじゃないですか。あれがいいぞ、これがいいぞと・・・。すごい簡単です。その人に合った健康法があるんです。だからその人にとって良かったので、自分がやってだめだったのは効かないとか、だめだ、じゃないんです。その人にとっては良かったんです。ただ自分には合わなかった。何を言っているか。自分に合った健康法を見つけるべきですね。そういうことをやっていくことが大事ではないかなと思います。
【参考図書:『「治る力」の再発見―自然治癒力を生む生命の原理』 大塚晃志郎著 】
まだ5分の1も質問に答えていないので、次にいきたいと思います。

(質)「思いを文章にする時のヒントを教えてください。短い言葉が良いとか・・・。」
そのとおりですね。

「経営幹部の思いは幹部だけでつくるべきでしょうか。」はい、これもケースバイケースでちがいますね。みんなでつくった方が良い時もあります。
例えば会社とか組織をどうしていこうというときに標語とか言葉をイメージされているのかもしれませんが、みんなでつくった方がいい時もあれば、幹部だけでつくって・・・。ただし幹部だけでつくった時に、一般従業員に対して説明する時に、こうなったからこれでやってください、ではだめで、つくった言葉に対して説明して感想や意見を求めて、一緒になってやっていくという場をつくることが大事ですね。
誰かがつくったものをやれと言われても人は嫌ですから・・・。何をやるかといったら、そういうものをつくった時に、やる人というのはつくる時に参画している人なんです。だからそういう意味では皆でつくるというのは良いことかもしれません。
やはり分かりやすいのと短いというのがものすごく大事だと思います。分かりやすい、短い。分からないのはだめです。
ある会社の経営理念、これを理念というのか、というのがありました。「人もゴキブリも地球の一部」、何をしたらいいかよく分からない。それは変えられました。従業員にどういう意味?と聞くと、「よく分からないんです。ただ一応毎日唱えることになっています。」「人もゴキブリも地球の一部」と毎朝言っているのです。それで全員が何か分からない。社長はいろいろな思いがあって、多分深い意味があるんです。でも、何を言いたいかというと、深い意味があっても、ちょっと読んで分かるような内容でないとだめです、ということです。
そういう点、「いい会社をつくりましょう」という理念って素晴らしいですね。誰が聞いてもいい会社、どんな局面できいてもいい会社。いいですね。

こんな質問がありました。
(質)「大久保さんはどのようにうつくしい仕事を意識してやっていますか。」

今までいくつかお話ししていると思います。ともかくここの場合は講演録になるので、自分の至らなさというのがよく分かるんです。こんな余計な言葉を使っているとか、こんな美しくない言葉を使っているとか出てしまうんですよ。そういう意味では講演録を見るというのはすごく勉強になります。毎回勉強させてもらってます・・・厳しいですが。
そういう意味では私の場合は、あえてこの場で使いますけども、汚いとか、まずいとか、そういう言葉は使わないです。今ちょっとあえて、分かりやすく使いました。「美味しくない、「汚い」じゃなくて「美しくない」、というふうに実はこれでも気を使ってしゃべっています。
その否定的な言葉を沢山出すというのは実はインパクトはあるんです。「みんなバカばっかりだ!」これ、インパクトがあるんです。「今ひとつ利口じゃないですね。」美しさを意識するのであれば、この後者の表現をしていくことがすごく大事じゃないかなと思います。例えばの一例ですけど、自分自身は話す時、実はそういうことを相当注意してしゃべっています。ただしまだ身についていないので、出てしまう時はあります。
ちなみに我が家の食事で「まずい」という言葉は出さないんです。というふうに家内が育てたんですね。それで外に行った時に「まずい」という言葉を聞いて背筋が気持ち悪くなったと子供が語っていました。確かにその響きが良くないんです。だからやはり美しい言葉を使うというのはものすごく大事です。
 「ここの食事、まずいな。」全然気持ち良くないですよね。もっと言いましょうか。そこでも美味しいと言う人がいるかもしれないんです。正確に言うとこういうことです。「自分の口にはあまりあいません」というのがいちばん正解で美しいです。だから食事をした時に全員が否定的なことを言っても、「そうだな、ちょっと私の口には合わないな」という表現をするようになりました。前だったら、「まずいな、ここは!よくこれで店やってるよな。」というのが20年前です。
 もう事ほど左様にだめでした。今でもだめですよ。でもほんのちょっと最近そういうところを気配りできるようになったような気がしています。あくまで少しだけですが。
さっき申し上げましたが、この間3年ぶりにお会いした方に、「何があったんですか?」「どうしてですか?」「雰囲気がまるで違います。柔らかくなられました。」裏を返せば、以前は尖っていたということですから。情けない話、そうなんですよね。

いや、嬉しいですね。
(質)「今日は埼玉から来たのですが、本当に来て良かった!」
嬉しいですね。遠くから来たけど無駄でしたと書かれたら、やはり僕も苦しいですから。そういう時は、申し訳ないとお詫びするしかないです。
「職場の雰囲気を少しずつ良くしていこうと思いました。」是非してください。「目を輝かせて仕事をする。それが全員になるように取り組む。1人で考えるのではなく、全員で考えていこうと思います。ありがとうございました。」

これは質問というよりは決意発表ですね。まずは自分からです。周りの人は輝いていないな。皆もっと輝け。これはだめです。自分が輝くことです。明るくなれと言わないことです。明るくなれと言っている人はだいたい暗く言っていますから、なりようがないです。まず自分がやっていくということだと思います。

(質)「今後訪問してみたいと思っている企業」、

ありますね。日本に残したい五つの企業があったじゃないですか。伊那食品なんかが出ていました。やはり石見銀山のある所、義足を作っている会社、あれは行ってみたいです。ちょっと距離があるんでね。ですがあそこは是非行ってみたいなと思っています。
それから青梅慶友病院の会長さんとは以前講演でご一緒させていただいて、ただもう随分前になるんですけども、素晴らしい病院経営をされていて、中身も素晴らしいんですね。あそこも行ってみたいなと・・・。病院の中にすごい壁画がありますよね。田村能里子さんの素晴らしい壁画があって、病院らしくない病院です。やはり従業員が輝いています。あそこもいろいろな制度、仕組みがきっちりできていて、全員が毎月15万かな、全員じゃないか、グループ単位か・・・、ともかく患者さんに喜ばれるために使わなければならない予算があるんです。使わないとマイナスの評価になる。お金をですよ。どうやって患者さんに喜んでいただくかということを本気になってずっとやっている病院です。
とりあえずその二つは、今は行ってみたいなというふうに思っていますね。

 次ですね。
(質)「仕事に対して妥協しないと思うほど、理想と現実のギャップにピリピリした空気をつくってしまう。」ご自身がつくっているんですかね?「社員に対して成長してほしいほど・・・」、ああ、ご自身がつくられているんだな。
「叱ったりして空気が悪くなってしまいます。」分かってるじゃないですか。悪くなることはやらないことですよ。「そんな自分のかもし出す空気感を変える良い方法はあるでしょうか。」
もうここに答えがあるじゃないですか。叱ったりして空気が悪くなるんだったら、叱らないことです。
 「そんな時でも、どのようにしたら良い空気をつくれる自分になれるでしょうか。」

厳しく申し上げると、こちらの度量と知恵なのです。これはまだまだだなと思った時に、悠然とまだまだだな、こうしたらいいかなとふッとヒントを与えられると伸びていくんですね。そうすると怒らなくてすみます。
 それからもう一つ、根底で覚えておかれたらいいのは、ピリピリして大きな声で叱ったりして人が伸びることはあまりありません。ゼロとは言えないかもしれませんが。あまりありません。やる気をなくします。伸びた芽は摘む。業績は上がらないでしょうということですね。だから業績を下げたいなら、常にピリピリ感で怒ったらいいということですよね。業績を上げたいなら、少なくともこういうことはやめた方がいいと思いますがいかかでしょうか。
 そうすると何が必要か。忍耐力ですね。我慢です。我慢が要りますね。本当に我慢の力がつくとどうなるか分かります? 我慢しなくても大丈夫になる。それは力がついた時です。力がない時は持ち上げる時にきついんです。力がつくと何ともないでしょう。我慢しているというのはまだ力がついていないから・・・。でも力がない時は、強引にでも、苦しくても我慢して力をつけるしかないんです。筋肉と同じように・・・。そして本当に力がついた時、我慢しなくてすむようになります。
 それからどうも仕事ができない人へのアドバイスの仕方は、いろいろな知恵とか工夫が要るんです。そして何よりもベースにおいて彼から自分が信頼されているかどうか。もっと言いましょう。その人のことをどれだけ知っていますか?さっきの話になっていきますね。理解していますか?その人に本当に伸びてほしいと思っていますか?
伸びてほしいと思っている時、大事な軸があるんです。その人にとって大事だから、という軸が持てるかどうか。何か。伸びてもらわないと会社の業績が上がらないんだよなというのは会社の業績が基本の軸なんです。そうじゃないんです。相手が伸びることが大事なんだ。結果として仕事が良くなって、数字が良くなっていくというこの結果の感覚で捉えるということがやはり大事なんですね。そういうふうにお考えいただくといいんじゃないかな思います。

あ、5時1分だ! すいません。まだ質問が随分ありますけども・・・。上から順番に半分ぐらいできたと思います。半分の方、大変申し訳ございません。今までのを参考にしていただければ、ということで・・・。
時間になりました。終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。