« 2009年03月 | メイン | 2009年05月 »

2009年04月 アーカイブ

2009年04月05日

健全な組織をつくる

4月5日(日)

この週末はまさに春の陽気でした。
金曜日から沖縄へ行ってきましたが、那覇より東京の方が暖かかったですからね。
これで東京の桜はもう終わりでしょうか。
でも水戸はまさにこれから。
今週は娘たち(高校と中学)の入学式がありますが、ちょうど満開の桜の中、新しい学校での生活がスタートするようです。

みなさんの組織にも新しい人が入ってきたのでしょうか。
メンバーが変わると、また組織の雰囲気も変わってきます。
特に新入社員が入ってくると、彼らは「真っ白なキャンバス」で、良くも悪くもすぐに染まり始めます。
先輩たちが何を言うのかではなく、先輩たちが何をしているのかに反応していきます。
「悪貨は良貨を駆逐する」
そんな言葉もありますから、変な先輩が新人の手本となって、組織の雰囲気が一気に悪くなってしまわぬように気をつけたいですね。

そんなことを考えると、年度初めは自分たちの組織を変える良い機会と言っても良いでしょう。

まずは、「どんな組織になりたいのか」を明確に。
以前の「代表日記」、この「経営品質講座」でも何回か書いていると思います。

昨日、ある会社でのリーダーシップ研修でも「目指すべき組織」について簡単に話をさせてもらいました。

「最良の組織づくり」
それは、
 ・まずは、理念を共感している
 ・ひとりひとりが自立し、常に新しいことに挑戦(創造)している
 ・互いが支援しあっている

経営品質向上プログラムでもここ数年、仕組みやシステムよりも組織づくりにかなり
重点を置いた説明になっていると思います。

「経営革新の基礎」テキスト(岡本正耿先生)から引用します。

『変革は最終的には戦略や事業展開という具体的なコンテンツを変えるのですが、それを実現するためには組織というプロセスを開発しなければなりません。賢明な戦略(コンテンツ)を実現するためには、健全な組織(プロセス)をつくらなければならないのです。

組織開発的に考えると、経営革新というのは直接的にコンテンツをどうこうするということではなく、プロセスあるいは状態を変えることを通じて、コンテンツの導き方が変わっていくことを目指すものといえます。』

高い顧客価値を創造し続けていくためには、健全な組織になることが必要です。

では、「健全な組織」とはどのようなものか。

(1)人間関係が良好
 ①各人が自発的に考え、参画する
 ②互いに関心を持ち合い、配慮しあう
 ③相手中心で考え、部門間の関係が良い
 ④友好的で親密な人間関係ができている

(2)組織が活性化している
 ①目標: 混乱や曖昧、抽象を排し、明快で理解し、共有する
 ②参加: 少数支配を排し、全員参加を目指す
 ③感情: 感情の抑圧や禁止を排し、自由で活発な表現を促す
 ④問題解決: 対症療法、対策志向を排し、関係・構造・性質の解明を徹底する
 ⑤リーダーシップ: 専制的、非論理的ではなく、参画的で論理的に
 ⑥信頼度: 不信や疑念がなく、高い信頼性の確保を

「ありたい姿」が明確にあれば、次に重要なことは「現状」の把握、そしてギャップ(問題)の認識、さらに原因分析、対策へといくわけです。

組織開発には、「オーセンティック・マネジメント」や「スモール・グループ・セラピー」などがありますが、なかなかここでうまく(簡潔に)説明できないもどかしさがあります。
私がもっと心理学・組織心理学を学ばなければならないのですが・・・。

問題のある組織には一般的に2つの症状があるとテキストで紹介されています。

1.ダブル・スタンダード・・・リーダーやメンバーの言うこととやることが違う、本音と建前が違う。もしくはノーイング・ドゥーイング・ギャップともいいます。
2.自己敗北プロセス・・・「やってもしょうがない」「どうせなるようにしかならない」などという諦め。

ちょっとご自分の組織を考えてみるとどうでしょうか。
「なりたい姿」はどのくらい明確になっているでしょうか。
「現状」をどう把握できているでしょうか。

「現状」(今いるところ)がわからないで、いろいろと手を打っている「遭難」になっていませんか?
「なりたい姿」(目指すところ)も「現状」(今いるところ)もわからないで、何かしている「徘徊」になっていませんか?

「遭難」や「徘徊」では、メンバーや関係する人たちみんなが大変です。

組織づくり、組織開発については、引き続き私自身も勉強しながら、この経営品質講座で紹介していきたいと思っていますので。


さて、今日は私の誕生日でした。
昨晩は1日早いお祝いをしてくれた沖縄教育出版のみなさん、ありがとうございました。
また今朝は羽田空港の出口で待っていて、バースデーケーキのサプライズプレゼントしてくれた県西自動車学校の塚田さん、菅原さん、そして加賀屋さん、ありがとうございました。
特にバースデーケーキは長野県伊那の菓匠Shimizuまで行って清水さんと一緒に作ってきてくれたようで・・・、最高に美味しかったです。
家族みんなで大喜びでした。
またたくさんの手紙やメールもいただきました。
本当にありがとうございました。
母の墓参りにも行って話をしてきましたが、本当にたくさんの方々と一緒に未来を創っていけることに感謝ですし、楽しくて仕方がありません。

4月は新しい1年のスタート。
みんなで力を合わせてガンバっていきましょう。

2009年04月12日

二宮尊徳から学ぶ日本型経営

4月12日(日)

本当に暖かい(たまに暑い!)1週間でしたね。
水戸では、偕楽園・千波湖公園の桜が満開で、梅祭りは終わったのですがたくさんの人手がありました。梅祭りは観光客が多いのですが、この1週間は地元の人たちでしょうね。
特に千波湖のまわり約3kmに桜がずっとあり、その桜をライトアップしているのですが、その夜桜のきれいなこと。これは素晴らしい観光資源だと思います。
千波湖の桜は地元以外にはあまり知られていないし、PRもこれまでしていませんでした。梅だけでなく、桜も水戸は美しいのに、こういうのはもったいないですよね。
まあ、そもそも「偕楽園・千波湖公園」が、街なかにある公園で都市型公園という定義になっているのですが、その公園の面積が世界第2位の広さであることも知られていません。
世界第2位ですよ!
ちなみに世界1はどこかと言えば、米国ニューヨークにあるセントラルパークです。
水戸は街なかに世界第2位の広さを持つ公園がある、街なかに水と緑があふれているところですが、地元にずっといると当たり前すぎて、その素晴らしさがわからなくなっている人も多いんですよね。
3年前にオセロの世界大会を水戸で開催した時、海外から参加した選手たちを偕楽園・千波湖公園の夕暮れに連れて行ったら、みんな感動していましたからね。

地域資源を認識して、その良さを活かしていく。
これからの地域経営の重要なポイントです。

さて、今日は経営品質の考え方の根っこのところだと思われるものを紹介したいと思います。
経営品質の考え方は、元々1980年代の米国が、日本に経済でボロ負けした時、日本企業の強さの秘密を調べたところから始まりました。

日本企業が戦後焼け野原のところから、どうして短期間(約15年)で、世界で一番品質の良い製品をつくれるようになったのか。

もちろん米国からエドワード・デミング博士などが来日して、日本の製造業の経営者や現場の人たちに統計的に品質を管理することを学ばせていくのですが、学ぶだけならどこの国でもできるはず。

日本には創意工夫による改善活動、そしてチームワークの良さといった現場の力がありました。

そこには日本人の持っている勤勉さや道徳心があるわけですが、多くの日本人に大きな影響を与えた思想家が存在していると思います。

それが、二宮尊徳。

今日、青年会議所(JC)の関東地区協議会の経営系の委員会で、私が講師になって研修「青志塾」を茨城県土浦で開催してきました。

『「真経営力」二宮尊徳に学ぶ報徳仕法』

昨年あった地域経営の委員会からの流れですが、その担当副委員長から昨年相談を受けた時、これからの厳しい環境の中、地域経営や企業経営を考え実践していくのに学ぶべきは二宮尊徳ではないかと話をしました。

それが結局は私が講師で研修をやることになってしまったのです・・・。
JCからの依頼は、「はい、喜んで!」ですからね(苦笑)。

お陰さまでこの数ヶ月、二宮尊徳関連の本や資料を読むことができました。
いや~、知れば知るほど二宮尊徳の考えは勉強になりますね。
やっぱり江戸時代以降の日本人にかなり大きな影響を与えた思想家であると確信しました。

二宮尊徳(1787年~1856年)
江戸時代後期に「報徳思想」を唱えて、「報徳仕法」と呼ばれる農村復興政策を指導した農政家・思想家。通称は金治郎。
彼の農村復興案の根本は、領主も農民も、ともに身分相応に節度を守るということにありました。農民は勤倹に励み、領主は農村の再建ができるまで年貢を減らします。農民は年貢を減らされた分だけを払ったものとして積み立てるのです。これを農業施設の整備や営農資金に貸し出して活用していく。
その生涯において620ヶ所の町村の財政再建を成功させ、多くの農民たちを救い、藩の財政立て直しに貢献したといわれます。
二宮尊徳の再建事業は、まず人の心に種を蒔き、人の道を教え諭すことから始めました。農民の心に道徳力を高めながら経済再建を果たしたのです。

二宮尊徳は元々裕福な家に生まれたのですが、4歳の時に川の洪水で田畑の大半が土砂に流され、一家の不幸が始まります。
12歳で父を、14歳で母を亡くし、叔父の家に預けられると、寝る間も惜しんで読書をしました。百姓に学問は不要といわれた時代で、油代もったいないと叔父に言われると、友人から一握りの菜種を借りて荒地を耕し種を蒔き、1年後には150倍の菜種を収穫。それを灯油に替え、燃やして勉学を続けました。

幼い頃から勉強熱心で、柴木を背負い、寸暇を惜しんで読書しながら山道を歩く少年金治郎の姿の像は、戦前はどこの学校の校庭には見られたのですが、戦後の教師の反対で撤去されてしまいます。

二宮尊徳の教えを実践している経営者である伊那食品工業の塚越会長は、金治郎の像をもう一度全国の小学校の校庭に建てたいとお話されていました。

22歳で田畑を買い戻し生家の再興に成功すると小田原藩家老服部家の財政立て直しに成功、その才能を見込まれて36歳で栃木県芳賀町周辺(旧二宮町)の建て直しを任される。そして栃木県真岡市周辺、さらに茨城県西地域の建て直しに取り組み、その方法は「報徳仕法」として他の範となる。65歳では日光(天領)の仕法を行い、69歳で没。

二宮尊徳が教えた人の道、経済自立の道は、経済と道徳を調和させる実践哲学であり、「報徳仕法」の根本は、「至誠」にあるとし、その上で「勤労」「分度」「推譲」が基本だとしています。

何よりも実践を重んじた尊徳は、「道は書物にあるのではなく、行いにある」としています。
以前にも紹介した尊徳の言葉
  『人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ
  学んで道を知らざれば、学ばざると同じ
  知って行うこと能はざれば、知らざると同じ
  故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず
  学をなすもの、必ず道を知らざるべからず
  道を知るもの、必ず行はざるべからず』


いくつかのキーワードを紹介すると、

「至誠」・・・まっすぐで思いやりのある心

「勤労」・・・人は自分に備わっている徳を最大限に発揮して働くことにより、生きる糧を得て生きていくことができる

「分度」・・・自分が置かれた立場や状況を踏まえ、それに見合った生活をすることが大切。そのためには自分の収入に応じた生活基準(分度)を定め、その範囲のなかで生活できるように節約に心がける

「推譲」・・・分度を守ることによって余財を生み出し、それを家族や子孫のために貯えたり(自譲)、広く社会のためや未来のために譲る(他譲)。そうしてこそ幸福な社会が実現できる。

大切なことは、お金の稼ぎ方よりも使い方であり、倹約と貯蓄は変事に備えるため。

これは今の経営者でもかなり強烈に反省しなければならない人が多いですね。

さらに重要な言葉として、
「心田開発」・・・何事を成し遂げるにも、まず本人のやる気を起こさせることが始まりであり、それによって一人ひとりが自立できる基盤を育成することができる。

尊徳は、真面目に取り組んでいる農民を表彰する一方で、怠惰な者に対しては心改めるまで待つ姿勢を取っています。

「積小為大」・・・小さな努力の積み重ねが、やがて大きな収穫や発展に結びつく。小事を疎かにしていて、大事を為すことはできない。
作らずに刈り取るのは鳥獣争奪の道であり、人の道ではない。
そして大事を為すには時間がかかるのだと教えています。

その教えで有名な言葉が、下記の言葉であり、伊那食品工業の塚越会長が大切にしている言葉でもあります。

  『遠くをはかる者は富み
  近くをはかる者は貧す
  それ遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う
  まして春まきて秋実る物においてをや
  故に富有なり
  近くをはかる者は
  春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
  唯眼前の利に迷うてまかずして取り
  植えずして刈り取る事のみ眼につく
  故に貧窮す』


ずいぶんと長くなってきたので、今日はこの辺りで止めますが、二宮尊徳を学べば学ぶほど、今の日本の政府や自治体、そして大企業の経営は真逆であると思います。

どうすればこれからの厳しい時代を乗り越えていけるのか。
それは新しい特別なことではなく、これまでの日本が大切にしてきた教えをもう一度実践することにあるのではないでしょうか。

2009年04月19日

経営をどう考えるか

4月19日(日)

今晩放送されたNHKスペシャル『マネー資本主義』をご覧になったでしょうか。
面白かったですね。
これから全5回シリーズで、月1回の放送予定のようですので、ぜひご覧ください。
今日見逃した方は再放送もするでしょうし、NHKオンデマンドで見れるようです。

第1回目の今夜は、
「暴走はなぜ止められなかったのか」
~アメリカ投資銀行の興亡~

1980年代から米国では、それまで市場の仲介役を専門に行っていた投資銀行(日本で言えば証券会社)が、自己勘定のもとに自分たちで商品(モーゲージ債券)を作って販売して巨額の利益を上げていった様子がわかりやすく番組で紹介されていきました。
そしてそれがなぜ破綻していったのかも。

1980年代の米国投資銀行の主役は、ソロモン・ブラザーズ。

そう、私が働いていたところです。
私が入社した1987年はまさにソロモン・ブラザーズの絶頂期。
番組では、当時のトップ、「ウォール街の帝王」と呼ばれたジョン・グッドフレンド氏がインタビューに答えていました。
まだ現役なんですね。驚きました。

そして、「ザ・ルーム」と呼ばれた巨大トレーディングフロアーの映像も。
1988年の5ヶ月間、毎日研修でウロウロしていた場所だったので懐かしかったです・・・。

許されれば極限までリスクを追ってしまう。
音楽が続く限り踊りを止めない。
そして稼ぐトレーダー(日本で言えばディーラー)の巨額ボーナス。
すべての人が、リスク管理よりも利回りを考えている。

まさにウォール街の強欲さ。

もちろん、おかしい、止めようと思った人もいるでしょうが、ほとんどの人が踊り狂っていましたから、行くところまで行くしかなかったんでしょうか。

私もおかしいと思って辞めたひとりですが、破綻によって世界全体に与えた損傷は恐ろしいほどです。

本来、金融は脇役。

まさにこれからの世界ではそうあってほしいものです。

でもまたまた最近、米国の金融機関は時価会計しなくていいことを逆手に、黒字を出して株価を吊り上げて増資をして、公的資金を返済してボーナスをもらうことを考えている様子。

本当に懲りない人たちです・・・。


さて、前置きが長くなりましたが、今日は「経営をどう考えるのか」をテーマにしたいと思います。

この週末、6月からの新年度における経営品質協議会・人材育成プログラムのインストラクター研修が東京で開催されたので参加してきました。

6月からも昨年までと同様に下記コースが用意されています。
「革新の基礎コース」(1日)
「評価の基礎コース」(週1の3日間)
「セルフ・アセスメントコース」(連続3日間)

「革新の基礎コース」の開発担当である岡本正耿先生からの講義があったのですが、この内容を少しどうしても紹介したくて書いていきたいと思います。
(実は、聞いたことを真に理解するには、早めに人に話したり、書いたりするのが効果的)

それは「経営をどう考えるのか」について。

世界では、キリストが生まれる前と生まれてからが大きく違うように、経営の世界でも大きな転換点があると言われています。

それが、「ドラッカーの前と後

ドラッカーの前は、経営の考え方もデカルトの世界観でした。

デカルトの世界観は、「全体は部分の総和である
方法論としては、「移項可能」で「合理的実証」と「蓋然性計算」ができる。
そこから導かれるのは、
「結果の哲学」・「量の論理」・「量的変化の計算」・「妥協と折衷」

それに対してドラッカーは、
全体と部分を成立させるものは目的とプロセスである

方法論は、「移項不可能」であり、「経験的実証」と「可能性計算」による。
つまり、「目的の哲学」・「質の論理」・「質的変化の計算」・「両極性の弁証法」

ただ、いまだにデカルト的な世界観で経営を教えたり(MBAなど)、考えたりしている人たちが多いのが現状のようです。
米国の金融界などはまさにそうなのではないかと思いますね。

岡本先生の説明を続けると、
『ドラッカーの「新しい世界観」は、「全体」に対して「体系」を、「因果律」に対して「目的」「形態」「類型(パターン)」「プロセス」という考え方を重視するものである。
とりわけゲシュタルトという概念は、ドラッカーのものの考え方の基本に関わる重要な概念である。ゲシュタルトの意味は、ものごとを「どこからどこへ」あるいは「なぜそうなるのか」という因果関係としてとらえず、「現姿態」としてとらえることを前提としている。ゲシュタルトでは全体は部分の総和ではない。部分は全体を考えることによってのみ把握あるいは知覚できるものと考える。
「経営」という概念もゲシュタルト的な「全体」としてとらえなければならない。ドラッカーが部分分割的な伝統的管理ではなく、「目標による経営」を主張する理由もここにある。』

ドラッカーによる大きな変化とは、
1.機械的世界観から生命論的世界観に
2.要素還元主義から全包括主義に
3.自他分離主義から自他非分離主義に

経営は、部門や業務の総和ではなく、意識としての「全体」である。

会社というものは物理的な実態ではなく、意思による心理的な有り様である。

ですからドラッカーは、経営における人の重要性を強く訴えているんですね。

なので、経営が良くなるとか、会社が良くなるというのは、そこにいる人、ひとりひとりが気づきによって(意識が変わり)成長するところから始まっていくと考えていくべきであって、どんな仕組みがあるというのは後の話になります。

気づきによる成長と自立。

組織・会社、経営を良くしていこうという変革者への一歩を誰かが歩み始めない限り、目に見えるものを変えたとしても、何も変わりません。

6月以降、今年は3つのコースの講師をやることもあると思いますが、特に「革新の基礎コース」が楽しみですね。

変革者と言えば、今回の講義の最後に岡本先生が紹介してくれた、有名な『行かなかった道』も紹介します。

***************************************

  『行かなかった道』  ロバート・フロスト  駒村利夫 訳

  黄ばんだ森の中で道がふたつに分かれていた。
  口惜しいが、私はひとりの旅人、両方の道を行くことはできない。
  長く立ち止まって目のとどく限りを見渡すと、ひとつの道は下生えの中に曲がり込んでいた。

  そこで私はもう一方の道を選んだ。
  同じように美しく、草が深くて、踏みごたえがあるのでずっとましだと思われたのだ。
  もっともその点は、そこにも通った跡があり、実際は同じ程度に踏みならされていたが。

  そして、あの朝は、両方とも同じようにまだ踏みしだかれぬ落ち葉の中に埋まっていたのだ。
  そうだ、最初眺めた道はまたの日のためにと取っておいたのだ!
  だが、道が道にと通じることはわかってはいても、再び戻ってくるかどうかは心許なかった。

  今から何年も何年もあと、どこかで溜息まじりに私はこう話すだろう。
  森の中で道がふたつに分かれていて、私は・・・、
  私は通る人の少ない道を選んだのだったが、それがすべてを変えたのだ、と。

***************************************

金融破たんからの世界恐慌の今、やはり一人ひとりの善なる一歩からしか世界は良くならないと思います。

確かに、1980年代以降の米国金融界も、新しいことに挑戦し続けたと言ってもおかしくありません。
でも最も大切なことは、新しいことに挑戦することよりも、「何のために」それを行うのか。
目的が大切です。
そして目先だけを考えるのではなく、遠きをはかる(将来を考える)こと。

何度も同じ過ちを繰り返すのはやめましょう。

2009年04月26日

変革の大敵・・・偽の危機感

4月26日(日)

今週は、これまでもこのブログで何度か紹介しています、早稲田大学マニフェスト研究所(北川正恭所長)の人材マネジメント部会の新年度がスタートしました。
今年度も全国からたくさんの地方自治体が参加してくれました。
これから1年間、自分の組織の変革をいかに取り組んでいくのかについて、学び、そして実践していってもらいます。

そう書きながら感じていることです・・・。
これだけ数年前から、そして特に昨年からかなり目に見える形で世界が変化し、国内がその影響を受けて大きな変化をしているのに、なかなか組織が変わっていかないのをどうしたらいいのか・・・。

ありたい姿と現状を考え、計画はつくった。
トップも変革に熱心で、推進チームもある。
なのに組織のメンバーに火がつかないし、組織は変わらない・・・。

そんなことを考えていた時に、興味深い本に出合いました。
今日はその本をまず紹介したいと思います。

企業変革の核心』 ジョン・P・コッター  日経BP社

本の帯に書いてある言葉がすぐ目に飛び込んできました。

変革の大敵は、自己満足と偽の危機意識

ジョン・コッターと言えば、リーダーシップや組織変革で、特に「変革の8つのステップ」が有名です。

 1.危機感を生み出す
 2.変革プロセスを主導できるだけの強力チームをつくる
 3.ビジョンを掲げ戦略を立てる
 4.ビジョンと戦略を全員に徹底する
 5.社員がビジョン実現に向けて行動するように、現場に任せる
 6.信頼を勝ち取り、批判を鎮めるために、早い時期に成果を出す
 7.手を緩めず、変革を成し遂げる上でのより困難な課題に挑む
 8.新しい行動様式を組織文化の一部として根付かせる

これまでコッターは、「変革の8つのステップ」をたくさんの本で紹介していますし、私もコッターは好きで、以下の本は全部読んでいますね。

 『リーダーシップ論』
 『企業変革力』
 『ジョン・コッターの企業変革ノート』
 『カモメになったペンギン』

さて、「変革の8つのステップ」でともかく重要なのは、最初の「危機感」。
今回の本『企業変革の核心』では、ともかく変革の最大の失敗要因は、「危機感」を社員がなかなか持てないことにあるとして、危機感について深く掘り下げています。

ほんと実際に組織変革を見ていると、メンバー一人ひとりが危機感を持つことはなかなか簡単なことではありません。

この本で書かれていて、興味深いのは、

ほんとうの危機感を理解するためには、その反対概念を知っておくとよい。自己満足と偽の危機感がそれである。

自己満足はわかります。私もよく研修などで説明しています。
「できている。やっている」
悪い3Cの最初の「コンプラセンシー」。

でも「偽の危機感」という言葉は、聞いたことがなかったので、興味を持ちました。

「偽の危機感」を説明した箇所を本から一部だけ引用紹介します。

***************************************

 自己満足に陥った人は「このままでいい」ので何もしようとしないが、偽の危機感に突き動かされた人は「何かしなければ」とやみくもに行動に走る。自己満足した人は半分眠っているが、偽の危機感を抱く人は大いに活動する。前者はぬくぬくと現状に甘んじ、後者は不安や怒りに駆られる。
 激情に駆られると人は理性的な判断ができなくなり、考えなしにあわただしく行動する。だからこれを本物の危機感に基づく行動と取り違えるのも無理からぬことと言えよう。だが不安や怒りに根ざした行動からは、まずもってよい結果は生まれない。それどころか、破滅的な結果につながることさえある。

 自己満足に陥った人がそのことに気づいていないように、偽の危機感に翻弄されている人も、それに気づいていない。人間というものは、自分の感情を隠す、それも他人の目からだけでなく自分自身からも隠すことに驚くほど長けている。不安と怒りも例外ではない。

***************************************

自分でも読んでいて、ドキッとしました。
「大変だ」とあせって、「何かしなければ」とよく考えずに行動してしまうことがありましたが、それは「偽の危機感」だったのではないかと・・・。
なぜなら、あせって行動したときは、大抵の場合、うまくいかなかった・・・。
「まずは行動が大事だ」とやっていることはどうなのか・・・。

もう少し詳しく知りたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。
本物の危機感を組織のメンバーに持ってもらうための戦略・戦術の事例(成功・失敗)が豊富にあるし、「自己満足と偽の危機感を突き止めるチェックリスト」などもあって面白いですよ。

例えばひとつだけ紹介すると、

重要な取り組みを始めようとするときに、関係者のスケジュール調整がつかないということはないか?

私がこれまで見てきた組織でも、これに実際に当てはまるところが結構ありましたね。
全社的に緊急かつ重要な案件の会議の開催が、各事業本部長のスケジュールが合わないなどの理由で、1週間、2週間と延びていく。ひどい場合は1ヶ月も。

「どれだけ本気なんですか?」

思わずそう聞きたくなりますよね。
でも実際に聞くと、みなさん、「本気だ」と言うんです・・・。

今思えば、あれが「偽の危機感」だったんだ・・・。

本物の危機意識を高めるための基本戦略は、

頭(理性)と心(感情)の両方に訴えかけ、目を覚まさせ、行動を促す

つまり変革は、組織のメンバー一人ひとりが、自ら変わる意識にならないと何の成果も生まれません。
いかにその意識にさせるかが重要。

この自ら変わる意識(自己認識)については、岡本正耿先生の『革新の基礎テキスト』にありますので、ちょっと長くなりますが、せっかくなので引用紹介します。

***************************************

変革者の自己認識

1.自発性
 仕事だから変革をやっているのだと自己認識をすると、具体的に何をやればいいのか考えることができません。そうすると、とにかく研修や講演会を開こうとしてしまいます。変革の全体的計画や戦略を立てずに、単に講演会や研修会を行っても、何の効果もありません。
自発的に変革をするのだという自己認識を持っている人は、理想としての状態を思い描き、それと現状のギャップを検討するでしょう。そしてそのギャップを克服するために活用できるもの、障害となるものはなにか、などと戦略を考えます。仕事だから、命令だからということで変革を考えることはできません。自発的に変革をするのだと認識してください。

2.利他性
 自分の収入のため、出世のため、地位のために変革を考えようとすると、ご都合主義、詭弁・強弁、手段思考などに陥ります。本当の効果的変革でなく、受けを狙ったり、他人の評価ばかり気にした似非変革を考えてしまいます。自分のためでなく、他人のために役立つにはどうするか、というのが変革者の基本的視点です。

3.明瞭性
 受け身で自己中心の人は損か得かだけで生きています。そしてその本心も色々な方法で隠します。威圧的な態度をとる、不機嫌な表情をするというのもそうですが、曖昧な表現をするというものそのひとつです。「だいたいそんな感じで」とか「そんな風に」という表現は変革者には禁物です。言葉を定義する、表現を明瞭にするということは、変革の第一歩ですから、変革者が曖昧表現をしていてはいけません。曖昧な表現をする人は明瞭な思考ができない人です。抽象的、一般的な話や文を書かないように注意してください。また、抽象的な言葉は必ず定義をしてください。定義が思考の原点です。

***************************************

まさにこれらの自己認識で、「偽の危機感」を持っているかどうか判断もできますね。
そして組織のメンバーだけでなく、変革の推進者もセルフアセスメントが必要です。

ジョン・コッターは、あなた自身もすぐに「自己満足」や「偽の危機感」に陥ってしまう可能性を大いに持っているので気をつけなければならないと言っています。

頭と心の両方に訴えるのに、重要なのは「心」へのところ。

他人がどうこうよりも、みんなが危機感を持ってくれないと批判する前に、まずは「指は自分に」。

メディアはメッセージ

やっぱり最後はここにくるようですね(苦笑)。

NPO法人 茨城県経営品質協議会 へ

About 2009年04月

2009年04月にブログ「経営品質講座」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2009年03月です。

次のアーカイブは2009年05月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。