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採用を考える

5月10日(日)

今日は母の日。
「孝行したいときに親はなし」
昔、そんな言葉を聞いたことがありました。
今の自分は仏壇に手を合わせることしかできません。
大切だと思うことはきちんと娘たちに伝えておかなくてはなりませんね。

また、今日がGWの最終日なんですね。
なが~いお休みだった方も、明日からは通常モード。
職場の雰囲気も早く切り替えていかなければなりません。

そう言えば、最近「五月病」という言葉をあまり聞かなくなったのは、私だけでしょうか。

ここ数年、新入社員向けの研修や若手社員の研修もさせてもらうことも多くなったのですが、いつも気になるのは、どういう採用基準で選ばれてきたのかということ。
特に行政関係の組織で研修をしていると強く感じます。

そこで、今日は「採用」について考えてみたいと思います。

経営品質向上プログラムのアセスメント基準で「採用」について関するのは、カテゴリー5「個人と組織の能力向上」になります。

カテゴリー5をさらに分類すると3つあり、その最初が、5.1「組織的能力」。

「組織的能力」とは組織価値観にもとづき、卓越した成果を上げることができる組織的能力の創造に関する一連の仕組みとその運営、改善を意味します。(アセスメント基準書より)

採用に関する問いかけは、
組織の価値観に合致した適材をどのような方法で見出し、採用していますか?

さて、みなさんの組織での人の採用はいかがですか。

「組織の価値観に合致した」

ここがポイントですね。
ちゃんと「組織の価値観」が明確になっていないと・・・。

自分たちの独自の基準(価値観)がないと、他の基準に頼ってしまいます。

結構、学歴だけ見て採用をしてしまう組織って多くないですか。
または好景気だからと言って、ともかく人数の確保だけを考えて採用している組織ってありませんか。

私には経験があります。
私が新卒で入社した銀行で、1年目からリクルーターとして学生集めに走り回りました。
時は昭和61年。後にバブルと言われる時代の幕開けの年です。
金融機関は、好景気、金融機関同士の競争激化の中、後先考えずに大量採用をし始めました。人事部からの指示は、私の出身大学の学生であれば、
「ともかく誰でもいいから確保しろ」
特に文系だけでなく理科系も力を入れて集めました。
しかし他の金融機関も同じように考え行動し始めましたし、ともかく当時は今と大違いで金融機関がやたら多かったからこれは大変でした。
毎日、学生を食事に連れて行ったり、電話で説得したりと、ともかくなりふり構わず確保することが目的でした。
銀行を辞めるまで3年間、リクルーターとしてかなりの学生を引っ張りました。
他の企業に行きたい学生を何人もひっくり返させて入社させました。
その学生の将来などまったく考えずに・・・。
入社した学生も、受け入れた組織も、後になって合っていなかったと気づいても・・・。
今思うとひどいことをしました。
申し訳なかったと心底思います。


さて、経営品質向上に取り組んでいる企業では、特に「採用」を非常に重要なものとして取り組んでいるところが多いですね。

米国国家経営品質賞(マルコム・ボルドリッジ賞)を過去2度受賞した「ザ・リッツ・カールトンホテル」の採用の仕組みは有名です。

ザ・リッツカールトンホテル日本支社長の高野さんが書かれた本『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』(かんき出版)から一部紹介させていただきます。

実際、高野さんが受けた面接では、当然これまでのキャリアについて聞かれるものだと思っていたそうですが、聞かれたことは・・・

 「最近、どんな本を読みましたか?その本のどこに感動しましたか?」
 「先月、自分の家族を喜ばせるために何をしましたか?」
 「同僚があなたに協力的ではなかったとしたら、あなたはどうしますか?」

リッツ・カールトンが面接でチェックするのは、職種に対する向き不向きだけでなく、その人の感受性や倫理観の強さ、自立心などのパーソナリティを様々な角度から探っていくそうです。
そしてリッツ・カールトンの理念を共有できるか、リッツ・カールトンが提供しようとしている最高のサービスを提供できる資質があるのかどうかを判断している、と書かれています。

これは以前、別の機会でリッツの方からお話を伺ったのですが、1990年代半ばに、あるコンサルタント会社と調査研究して、今のようなその人の資質を探るインタビュー形式の採用面接の仕組みを構築したそうです。
技術は短期間で習得できるが、人の価値観などは長い年月をかけてつくられたものなのでなかなか変わらないと考え、採用面接でそこを見ていこうとしています。

今年、埼玉県経営品質賞を受賞した「川越胃腸病院」の採用基準の考え方も特徴があります。望月院長が書かれた本『いのち輝くホスピタリティ』(文屋)から一部引用紹介させていただきます。

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 私たちは採用面接を、理想の病院づくりに欠かせない中核的な仕事の一つとして、非常に重視するようになりました。

 (中略)

 最初の面接では、病院の理念をはじめ、医療に対する考え方や病院づくりの基本的な考え方を徹底的に伝えます。どんなに忙しいときでも、十分な時間をかけて、ときには相手の方が「もうけっこうです」と言いたくなるほど想いを伝え続けます。

 (中略)
 
 二回目の面接でも、私は病院の考え方を、さらに深く語ります。それから、必ずこうつけ加えます。「面接というのは、私たちがあなたを一方的に判断しているのではありません。あなたも病院を厳しい目で評価してみてください。職場は人生の大切な時間を過ごすところであり、成長を託すところでもあります。ですから自分の人生をゆだねるだけの価値がある病院かどうかを、あなたの目でしっかりと見きわめてください」と。

 こうしたやりとりを重ねながら、その人がどういう夢を追っているのか、どんなことを生きる目標にしているのかを探っていきます。病院の目標とその人の目標に重なる部分が多いほど、病院にとって望ましい人材ということになります。

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お互いが納得するまで・・・、というところがすごいですね。

望月院長も昔、人手不足の職場を早く何とかしようと、選んではいけない人までも採用してしまい、結果として職員が定着しないという悪循環に陥ってしまった経験があるそうです。
その反省から採用にあたっての基準をいくつか設けました。
1.「病院の理念に対する共感度」
2.「個人目標よりも組織目標」
3.「社会適応能力・人間力」
知能的な優秀さよりも、思いやり大きさや感性の高さが重要であると。

トップ自らが、どんなに忙しくても、まず時間をかけて自分たちの思いや目指している姿を語る。
そして、人を採用することの大切さを深く理解しているからこそ、面接を重視し、それが最優先の順位となるんでしょうね。

大企業よりも中小企業の方が人が少ないのですから、どんな人が組織に入ってくるかの影響が大きいはずなのに、人事や総務に採用を丸投げしている社長が結構いるんですよね。
そんなことを自分でしているのに、「わが社には良い人材がいない、集まらない」と愚痴っていても・・・。
まあ、もちろん、組織の価値観や、どんな組織にしたいのかの思いなどなければ、独自の基準もないので難しいんですが。

やはり質を高めるには、時間と手間を惜しんではいけないんですね。

紹介した川越胃腸病院と同じような考えで面接を重視している企業が、2002年に日本経営品質賞を受賞した「トヨタビスタ高知」(現在ネッツトヨタ南国)。
横田会長(当時社長)に初めてお会いした時に、こうおっしゃったのが強く印象に残りました。
「会社を変えるのは簡単。10年で変わる。トップ自らが採用の最前線で自分の思いを語り、人を選んでいき、トップの考えに共感する人が増えていけば、あっという間に変わる・・・」

当時面接には、30時間以上かけていると聞いて驚きました。
何回会社訪問しなければならないのか・・・。

最初は横田会長の話を聞き、その考え方に共感した学生は、会社の社員の方々とどんどん面接を重ねていくのだそうです。
その狙いは、川後胃腸病院の望月院長の話にあったことと同じで、会社側も学生を見るけども、学生にも会社を見てもらいたい(どんな社員が働いていて、どんな職場か)、お互いが納得するまで面接を重ねていく。

今では採用面接期間前のインターンシップから実際の採用活動が始まっているようで、入社までには100時間以上の時間がかかるようです。
このプロセスを経て入社してくる学生は、もう入った瞬間から、ここがどんな職場で、どんな人たちが働いているのかを教えてもらわなくてもまったく困らないですよね。

もちろん昔からクルマの販売ディーラーは営業が厳しいというイメージで、なかなか募集しても人が集まらなかったそうです。
でもネッツトヨタ南国は、あせってどんな人でも採用することをしませんでした。
何年か前までは、店舗も1店舗のみで長らく営業していました。
毎年少しづつ価値観に合う人を採用し続けてきて、人材が揃ってきたから店舗を増やし始めたと伺いました。

この考えは、リッツ・カールトンでも同じだそうです。

仕事があるから人を増やすのではなく、良い人が増えたから仕事を増やす。

これも組織の価値観、トップの哲学がしっかりとしていないと難しいことです。

(そうそう、そういった会社ではよく、人材ではなく人財と言っていますね)


いや~すいません、採用だけ簡潔に解説、のつもりだったのですが、書き始めたら長くなり止まらなくなってきました。
なので今日はこの辺にして、続きを来週にしたいと思いますので、ご了解ください。

しかしどうですか、ぜひご自身の会社や組織の「採用」について振り返り、これからどうしていったら良いのかを考えてほしいですね。

来週は、「いや、そうは言っても人を選ぶことができないこともあるでしょう」という声も多くあるでしょうから、そんな状況をどうするのかなども考えていきたいと思います。


最後に、お知らせがあります。
今年で5年目になります、『伊那経営フォーラム』のお知らせです。
早いもので、もう5年目です。
「伊那を経営品質のメッカにしたい。ダボス会議のようなフォーラムをしたい。」
そんな思いから始まった『伊那経営フォーラム』。
今年は、会場を広くしましたので、昨年のように「あっという間に定員一杯でお断り」はないと思います。
でもなるべく早くお申し込みをした方が良いですよ。


『伊那経営フォーラム ~人と絆を強さに変える経営~』

日時: 6月27日(土) 13:00~18:00(開場12:00)
会場: 長野県伊那文化会館 大ホール
入場無料

第一部:対談「絆が生まれる瞬間」
         高野登(ザ・リッツカールトン・ホテル・カンパニー 日本支社長)
         大久保寛司(人と経営研究所 所長)

第二部:講演「人育ては自分育て」
         中井政嗣(千房株式会社 代表取締役)
    
第三部:パネルディスカッション「人づくりが未来の成長につながる」
         パネリスト 塚越寛(伊那食品工業 株式会社 代表取締役会長)
                中井政嗣
                高野登
         コーディネーター 大久保寛司

詳細・お申し込みは、伊那青年会議所HPからお願いします。
http://www.clio.ne.jp/home/inajc/

みなさん、今年も伊那でお会いしましょう!

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コメント (1)

hisa:

伊那経営フォーラム開催のご紹介、ありがとうございました。
早速、申し込みを行いました!
経営に興味を抱いている友人にも、声を掛けている所です。

高速料金最大1,000円という政府の政策を有効活用して、多くの人が伊那に集い、日本の行く末についての学びを得る機会にして欲しいな、と思っています。

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2009年05月10日 23:48に投稿されたエントリーのページです。

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