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映画『12人の怒れる男』から学ぶ

6月14日(日)

今週も各地を飛び回りました。
最近は企業だけでなく学校関係の研修も多くなっていますが、共通するテーマは「健全な組織づくり」。
その中でも特に考えてもらいたいのが、「話し合い」の質をいかに高めるか。

会議の質が悪い、雰囲気が悪いと、やる気も知恵も出てきませんし、組織のまとまりも悪くなっていきますよね。

会議・話し合いの質を高めるにはどうしたら良いのか・・・、そんなことをずっと考えていて、今週は久しぶりに、映画『12人の怒れる男』をDVDで観ました。

みなさんは映画『12人の怒れる男』をご覧になったことはありますか。
私が初めて見たのは今から約10年前、日本経営品質賞の審査員研修の時に、ぜひ見たほうが良いと薦められたのです。

日本経営品質賞の審査は、複数のメンバーの合議によって行われます。
申請組織の経営品質報告書を、まずは個人で審査し、その後合議によって審査を進めていきます。
その合議の質をいかに高めるかが審査の質を高めるために重要なのです。
しかしそれは簡単なことではありません。でも組織の成熟度を高めることを申請組織に
要求するのですから、まずは自分たちが実現できていないとなりません。

また最近、この映画は再び注目を集めているようです。
なぜならこの映画は、ある裁判で陪審員が評決に達するまでの議論する様子を描いているのですが、いよいよ日本でも裁判員制度が今年始まるからだと思います。
最近のTVドラマを見ていても、裁判員制度に関するものが増えていますが、多くはこの映画を参考にしているのでしょう。

さて、この映画『12人の怒れる男』の公開は、何と1957年。
監督は、シドニー・ルメット。主演は、ヘンリー・フォンダ。
今から50年以上も前の映画です。でも古さはまったく感じさせません。

この映画の簡単なストーリーを、ウィキペディアから紹介すると、
『父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。法廷に提出された証拠や証言は被告である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。全陪審員一致で有罪になると思われたところ、ただ一人陪審員8番のみが少年の無罪を主張する。彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求する。
陪審員8番の熱意と理路整然とした推理によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々にある変化が訪れる。』

モノクロの映画で、場面もある一室だけですが、迫力ある展開で見るものをどんどん引き込んでいきます。
映画としてもかなり面白いし、何より、話し合いの質を高めるための学びや気づきが多いので、みなさんにもぜひお勧めします。


ここから今日は、映画『12人の怒れる男』から学べる「話し合いの質を高めるために何に気をつけていかなければならないのか」を考えていきたいと思います。

まずは、「事実と意見」

事実は、証拠があり、証明ができるもの。
意見は、事実に対する私の仮説。

問題は、時に「意見」を「事実」のように話してしまう人がいることです。

また「意見(仮説)」ですが、いい話し合いをするために大事なことは、自分がどう考えたのかを明確にすること、相手にきちんと伝えることです。

人はどのように意見を自分の中で組み立てていくのか、クリス・アージリスの「推論のはしご」を紹介します。

①人はまず観察可能な事実や経験から、ある事実を選択します。
・・・自分の興味、関心、問題意識の高いものを中心に選んでいきます。
②選んだ事実、注目した事実に対して、文化や自分の知識や経験から意味づけします。
・・・例えば走っているサラリーマンを見て、自分の経験から「あの人は急ぎの用事があるのだ」というように意味を付けます。実は事実と言いながら主観的なものになっています。
③加えた意味に基づき推測します。
④推測から結論を引き出します。・・・これが仮説です。
⑤結論を裏付ける(正当化する)情報を集めます。
⑥確信に基づき行動します。
・・・ここまで来ると、気をつけなければならないことは、正しくないことを証明するような情報(事実)を無視してしまう危険性があります。確信は①のところ、次にどの事実を選ぶのかに大きな影響を与えるのです。

これが「思い込み」、また下手をすると「偏見」にもなっていきます。
そうなると今度は「感情」が入ってきますから、ますます混乱していくことになりますし、そうなるともう「いい話し合い」はできません。

この「推論のはしご」をもとに自分の考えを整理し、振り返ることが必要です。
「内省」というもので、振り返ることで気づきが生まれるのです。
自分自身の成長のためにも欠かせないものです。

これが難しいです・・・。
過去の成功体験、変なプライド意識、役職意識などがあって、問題を軽視したり、自分を素直に振り返れなくしていくのです。
また相手の意見も冷静に聞くこともできなくなります。
特に日本人には「長幼の序」がありますから、若手の意見を冷静に聞くのもできない人が多い。
これらは「気づきの障害」と言われるものですが、これはまた次の機会に紹介します。

また「事実」だと思っていたことも、本当にそうなのだろうかと考えることも必要です。
誰かが話したことは事実ですが、その内容は事実とは限りません。その人の主観がかなり入ってきます。鵜呑みにすると危険なことも数多くありますので、必ず裏づけを取っていくことも重要になってきます。
でもそうなると、何が真実であるかはとても難しい・・・。

今回紹介した映画『12人の怒れる男』でも、そのあたりが大きなポイントになっていくのですが・・・。

「いい話し合い」は、話す方は自分の考えのプロセス(推論のはしご)を相手に伝える。聞く方も相手の推論のはしごがわからなければ質問して明確にしていくことが求められます。

意見(仮説)が互いに違うのは当たり前のことなのです。
違う価値観や知識、経験が違うからです。
互いに相手の意見から価値観や知識、経験を聞くことによって、自分の中に新たな考えが浮かんでくる。
それが「対話による知の創造」、知恵が生まれるということになるのです。

どんどん話が長くなってきますので、今日はもうひとつだけ、「集団思考で陥るワナ」。
これも以前このブログでも紹介したと思いますが、再度確認していきます。

「いい話し合い」をしていくためには、このワナを知り、それを避けるような対策を講じていかなければなりません。

①社会的手抜き
・・・ひとりで考えたり、決める時は一生懸命に考えますが、みんなで考える時、自分がそんなに頑張って考えなくても他の誰かが考えるだろうというものです。メンバーに誰か優秀な人がいると、その人に依存してしまう気持ちも社会的手抜きです。

②同調圧力
・・・誰でも自分の意見を言うときには、わかってもらいたい、賛成してもらいたいという気持ちがあります。権限を持った人や年長者は、ついつい威圧的に同調を求めるような言い方や態度になります。それが圧力になって、メンバーは自分で考えるのを止めるようになっていきます。
また少数意見に対して、「まだそんなことを言っているのか。大多数はそうでないのだから・・・」と数の圧力もかかりやすいものです。

③リスキー・シフト
・・・精神論や根性論が好きな組織が陥っていきます。元気で積極的でなければ認めてもらえないような雰囲気が出来上がり、どんどん目標が高くなっていきます。最初から達成不可能な努力目標を作る組織では、誰も責任を持って達成しようという気になりません。「赤信号、みんなで渡れば恐くない」的な雰囲気では真面目な議論ができません。

その他、「少数派の影響力」や「過剰そんたく」がありますね。

うっかりすると、集団思考はすぐに上記のワナに陥っていきますので、常に気をつけていなければなりません。

「人の振り見て我が振り直せ」
ぜひケーススタディとして、映画『12人の怒れる男』を活用してみてください。
事前に「いい話し合い」「悪い話し合い」を学んでから見ると、気づきが多いようです。

尚、似たような内容の日本版映画があります。
『12人の優しい日本人』、これも面白いですよ。

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2009年06月14日 21:49に投稿されたエントリーのページです。

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