7月26日(日)
毎日暑い日が続いていますね。
ただ中国地方や九州北部では大雨で大変な被害が出ているようです。
我が家も私が水戸へ戻ってきてから2回、近くの那珂川の氾濫で床上浸水を経験しています。
水が出てくる時の恐怖、そして水が引いた後が本当に大変なんです。
ぜひ地域の方々、行政が力を合わせて、被害にあった方々を助けてあげてほしいですね。
先週、マーケティングについて書きましたが、今回もその続きです。
「事業の定義」について考えていきます。
先日、ある研修で以下の問いかけを考えてもらいました。
『米国の鉄道会社は昔、自らの事業を「鉄道」と規定したために、不調に陥ったといわれます。それはなぜでしょうか、その理由を考えてください。』
『米国ハリウッドの映画産業は昔、自分の事業を映画フィルム製造・配給業と考えていたので、不調に陥ったといわれます。それはなぜでしょうか、その理由を考えてください。』
いかがですか?
これは有名な話ですから、もちろん知っている方が多いと思いますが、もし知らない方はどうお考えですか。
マーケティングで有名なセオドア・レビッドが1960年に書いた『マーケティング近視眼』の文章を紹介します。
『鉄道は自らを輸送事業と考えるのではなく、鉄道事業と考えてしまったために、自分の顧客を他へ追いやってしまった。なぜ事業の定義を誤ったかというと、輸送を目的と考えず、鉄道が目的だと考えてしまったからなのだ。すなわち、顧客中心ではなくて、製品中心であった。』
顧客にとっては、鉄道は手段にすぎず、目的は人やモノを輸送することなのに、鉄道会社は鉄道が目的となってしまった。
「手段の目的化」
恐いですね。
他人や他の会社がそうなっているのを見るとわかるけれど、自分のことは大丈夫かと心配になることがあります・・・。
レビッドは、映画産業も例に引きます。
ここからは、岡本正耿先生の著書『顧客価値マーケティング入門』(生産性出版)から引用紹介します。
『ハリウッドは自らを娯楽産業ではなく、映画産業と定義してしまった。つまり35ミリの劇場用フィルムを制作し、それを映画館に配給することを自分たちの仕事であると考えてしまったのである。彼は「こう考えてしまうと、おろかな自己満足が生まれて、映画制作者は初めからテレビを脅威と見てしまう。ハリウッドは、テレビの出現を自分たちにとっての好機・・・娯楽ビジネスをさらに飛躍させてくれる好機だったときに、これを嘲笑し、拒否してしまった」という。』
これも事業の定義を自分たちの視点(生産志向)で考えてしまったことによる問題ですが、そうなると顧客の視点で考えられないだけでなく、変化に対する見方も変わってしまう危険性を持っているということです。
続けて本から引用すると、
『どのように事業を定義するかで、テレビのような同じものを脅威にしてしまうか、それとも機会にするのかに分かれてしまうのである。
マーケティングの評価分析の手法にSWOTというものがある。Sはストレングスで強み、Wはウィークネスで弱み、Oはオポチュニティで機会、そしてTはスレトで脅威のことである。企業内部の資源や能力として強みと弱みを、外部環境の変化が与える影響を機会と脅威とに分けるものである。
この評価を行おうとする場合は、十分に気をつけなければならない。
今日の強みは明日の弱みかもしれないし、その逆かも知れないからである。また、機会はそれを無視すれば脅威にもなり、脅威も見方を変えれば機会になり得る。
こういう手法を機械的に用いると、まさに映画産業のようにせっかくの機会を逃してしまうのである。』
私も研修でSWOT分析をしてもらうことがありますが、まさにその人自身の見方・考え方で強みにもなるし弱みにもなり、脅威にも機会にもなってしまう危険性を理解していないと、かえって大きな失敗を導いてしまうことになりかねません。
社内の場合は複数の人が持ち寄って、話し合いをしながら考えていくのですが、やはり社内であれば思考は似ていることも多いし、またどうしても上司の考えが強く影響を与えてしまうこともあります。
岡本先生も本の中で、こう書かれています。
『そう考えると、強みと弱み、機会と脅威という分析法もよほど気をつけて使う必要がある。あるセグメントに強いということは、全く別のセグメントの出現を予想すらしないことになる。大型複写機分野に強かったゼロックスが小型分野には出遅れ、大型オートバイ市場に君臨していたハーレー・ダビッドソンが小型市場を創造したホンダに敗れた例など、いずれも強みが仇になっている。』
みなさんの社内での戦略立案や事業計画づくりでの分析はいかがでしょうか。
さて、話を事業の定義に戻して、再びセオドア・レビッドの言葉を紹介します。
『事業活動とは、製品生産のプロセスではなく、顧客に満足を与えるプロセスだという立場は、すべてのビジネスマンが理解していなければならない考え方である。事業活動は、顧客とそのニーズから始まるのであって、パテントや原材料、または販売から始まるのではない』
では、みなさんの会社の事業を定義するとどうなりますか。
ぜひ顧客側に立った目的から定義してください。
会社の目的、事業の定義をしっかりと確立するところから、素晴らしい経営の実現の一歩が踏み出せるのです。
