9月20日(日)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)元社長の松本晃氏をお招きして、9月18日(金)、茨城経営品質大学「公開講座 第2回」を開催しました。
テーマは「会社の危機にトップはどう立ち向かうのか~ 我が信条(クレド)と企業の社会的責任~」
第1回では、経済アナリストの藤原直哉さんに、今のマクロ経済の状況についてだけでなく、リーダーが持たなければならないものの見方や考え方についてお話いただきました。
それを受けて第2回では、経営者としてどうあるべきかを松本さんにお話いただきました。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)は、何と
76期連続増収
25期連続増益
47期連続増配
といった、長期的な企業価値を創造している企業。
さらには企業調査では、米国フォーチュン誌による「最も称賛される企業」で5位。
バローンズ誌による「最も尊敬されている企業」で1位。
業績だけでない、まさにエクセレント・カンパニーです。
今日は、松本さんのお話を聴いて、まさに「経営品質講座」で伝えなければならないと強く感じたところを紹介していきます。
それは、「価値前提の経営」
・・・価値前提の経営とは(革新の基礎テキストより)
「何を大切にするのか優先順位を定めて、その基準に従って考えていくもの」
「企業経営において、結果は大事。品質やプロセスも大事であるが、結果を大事にする企業文化にしていかなければならない。」
松本さんは、現在もカルビー(株)の代表取締役会長兼CEOの現役の経営者。
もちろん「結果に対するこだわり」の強さを感じます。
ただ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)があれだけの長期にわたる業績と高い評価を得ている原動力は、「我が信条(Our Credo)」であると言い切ります。
「我が信条(Our Credo)」による経営こそ、経営品質の考え方で大事にしている「価値前提」の経営そのもの。
まあ、元々米国でMB賞(マルコム・ボルドリッジ国家経営品質賞)を創っている時に、日本の優良企業や米国内の優良企業を研究して作ったのですから、当然、ジョンソン・エンド・ジョンソンもその対象だったと思われますが・・・。
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「我が信条(Our Credo)」は、創業者の遺志を継いだ息子のロバート・ウッド・ジョンソンJr.が1943年に作成したもので、まさに「企業理念」であり、「倫理規定」。
会社とは、「この指止まれ」で、志を同じくするものが集まって事業を行うのが本来の姿。有名だとか給料が高いことを理由に入社してきても、すぐに辞めたくなってしまう。この価値観を好きなだけ人に集まって来てほしい。
「我が信条」があるおかげで、価値観を共有できるものだけに働いてもらうことができ、結果、それがいろいろなリスクを未然に防ぐことに大いに役立っている。
経営は、日々、いろいろな判断や決定をしなければならない。
企業である限り、利益などの「ビジネスの結果」は大切であるが、ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、常に「我が信条」に照らして意思決定をしている。
どんな軸を持って働いているかが重要。
未来のことはわからない。特に迷った時は「我が信条」を優先する。
よくあるような社長室に飾ってあるだけの企業理念ではなく、ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、新人からトップまで全員が、毎日「我が信条」を使っている。
つまり、意思決定ための議論を「我が信条」をベースに行っているし、その議論をとても大切にしている。
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これこそ、まさに「価値前提の経営」ですね。
松本さんのお話の中で、営業マンと同行した際にも、帰り道に「ああしなさい、こうしなさい」とは言わずに、「我が信条」に書いていることからどう考える?と投げかけをして、価値観の浸透と考える力をつけさせる、とおっしゃっていました。
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また「我が信条」の特色として、
・行動可能
・計測可能
・取り組みと成果を過去に遡って把握することができる
日本の企業理念の多くは、耳障りが良いだけで、意味がわからないのではないか。
「我が信条」は、顧客サーベイや社員サーベイ(クレドサーベイ)などで定期的に評価され、その取り組みは改善されている。
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取り組みを数値で計測して把握するというのがポイントですね。
良いことをやっていても、それがどれだけできているのか、また改善点などは何かを
判断するには、やはり数値で判断することが、明確だし、みんなの納得が高まります。
それを定期的に行って、管理・改善している仕組みがあるんですね。
では、せっかくなので、実際の「我が信条(Our Credo)」を下記に紹介します。
まさに企業理念であるだけでなく、倫理規定となっています。
1943年に作成されたと聞いて、本当に驚きです。
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『我が信条(Our Credo)』
我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、
そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。
顧客一人一人のニーズに応えるにあたり、我々の行なうすべての活動は質的に高い水準のものでなければならない。
適正な価格を維持するため、我々は常に製品原価を引き下げる努力をしなければならない。
顧客からの注文には、迅速、かつ正確に応えなければならない。
我々の取引先には、適正な利益をあげる機会を提供しなければならない。
我々の第二の責任は全社員 ―世界中で共に働く男性も女性も― に対するものである。
社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければならない。
社員は安心して仕事に従事できなければならない。
待遇は公正かつ適切でなければならず、働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。
社員が家族に対する責任を十分果たすことができるよう、配慮しなければならない。
社員の提案、苦情が自由にできる環境でなければならない。
能力ある人々には、雇用、 能力開発および昇進の機会が平等に与えられなければならない。
我々は有能な管理者を任命しなければならない。
そして、その行動は公正、かつ道義にかなったものでなければならない。
我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。
我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。
我々は社会の発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。
我々が使用する施設を常に良好な状態に保ち、環境と資源の保護に努めなければならない。
我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。
事業は健全な利益を生まなければならない。
我々は新しい考えを試みなければならない。
研究・開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。
新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。
逆境の時に備えて蓄積をおこなわなければならない。
これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。
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いかがですか。
顧客・社員・地域社会・株主に対する責任を明確にしていますね。
読めば読むほどに、なるほどそうだねと思うことばかりです。
そして、「我が信条」に沿った経営の実現のためには、社員とのコミュニケーションが不可欠であるとして、「クレド・チャレンジ・ミーティング」や「タウンホール・ミーティング」などの機会を大切にしているとのことです。
何度も言うように、作っただけではダメで、コミュニケーションや議論によって価値観が共有、浸透し、行動に結びついていくのです。
松本さんに質疑応答の時に私から、こう聞いてみました。
『他の会社も「我が信条(Our Credo)」のようなものを作りたいと思ったとき、何かアドバイスはありますか?』
その答えは、
『この「我が信条(Our Credo)」は本当に素晴らしい内容のものだ。ただ多くの会社が、まったく同じにするのはまずいと、いろいろと変えて作っているところが多い。でもそんな会社の企業理念や社是を見ても、意味がわからなくなっているものが多い。そんな無駄なことはせずに、「我が信条(Our Credo)」とまったく同じに、最初の1文のところだけは変えて、5年間やってみれば良い。5年間やってみるなかで、自分の会社らしく変えた方が良いと思うところは変えれば良いのではないか。大事なことは、日々の経営で使うことにある。』
まず良いものであれば真似てみる。
そこから始めて、その後は創意工夫を活かしていく。
まさに日本のお家芸かもしれません。
変化の激しい時代に、経営の判断、現場での判断にスピードが求められています。
何が正しいのかを考えるに、判断の軸がなければ、その場を取り繕うことになりかねません。
現場の「まあこのくらいならいいだろう」などの、ちょっとした判断ミスにより、今は会社の存在そのものが危険になる時代です。
松本さんは、「我が信条(Our Credo)」があり、日々使っていることにより、社員には他の企業よりもかなり厳しい倫理基準が根付いている。「危機管理に優れている会社」と言われるが、そうではなく「危機が起こりにくい会社」なんだとお話されていました。
ぜひみなさんの組織でも、「自分たちのあるべき姿を明確にする」「何を大切にしていくのか、やって善いこと悪いことが判断できる」、そんなものを形にしていってみてはどうですか。
そしてもちろん何よりも大切なことは、それを日々の経営の判断や意思決定に、現場からトップまでみんなが使って考え、議論し、行動することですからね。
