2008年経済展望と個の花を咲かせるリーダーシップ / 2008年新春例会

「2008年経済展望と個の花を咲かせるリーダーシップ」
藤原 直哉 氏 (シンクタンク藤原事務所 所長 経済アナリスト)

 みなさん、こんにちは。藤原でございます。よろしくお願いいたします。
 今、鬼澤君から賑々しくご紹介いただきましたが、本当に鬼澤君とは20年前からのお知り合いですし、水戸に藤原塾で来させていただいて、もう10年以上の時が過ぎたように思います。

 世の中いろいろなことが起こりますが、経営にとってはそれは全部変化と言うべきものだと思います。変化そのものには実は良いも悪いもないんですね。銀行がどうとか、株が上がったりします。でもそれそのものが良いとか悪いとかいうことは全くないんです。要するに経営というのは常に前に向かって進展させていかなければいけないものです。したがって全ての変化を、それを後ろ向きに捉えるのではなくていかにチャンスとして捉えていくか、これが経営者の器量というものだろうと私は常々思っています。逆に言うと変化に対して経営者とかリーダーが前向きに対応できなくなった時、いよいよその組織は終わりになるのではないかなと思います。
 そういうふうに考えてみると、今のこの世の中を見ていて、今非常に大きな規模でリーダーの交代が進んでいるというように思います。この巨大な変化に対してなす術もない人たちが、日本だけではありません、アメリカでも非常に多いです。おそらくそういう人たちは率いている組織と共に消えていくでしょう。でも同時に、この中から必ず新しいリーダーが出て来て、新しい日本と世界が生まれていくはずなのです。
 したがって我々にできることというのは、いいですか、みなさんお一人お一人にできることというのは、これから先間違いなく新しい世の中というのが進展していきます。その新しい世の中の住民になれるか、なれないかなんです。
 何か新しい時代の到来を待っているというような考え方は、経営者には、あるいはリーダーには禁物です。自分たちで創っていかない限り泳ぎ着く島はないんだというのが世の中の実像です。 そういう意味でこれからいろいろ厳しいことも申し上げるかもしれませんが、やはりそれは非常に重要なことだとお考えになってください。

特に日本人は危機管理に弱いと思います。危機管理というのは平和な時に最悪なことを想定するということです。まだ火もない所、煙のない所から、心身ともにゾクゾクゾクっとするほど恐ろしい話をよく聞いておいて、よく考えておいて、どうしようかを考えておくのです。そうすると実際何か来てもたいしたことはないですね。
 今年、年の初めのいろいろなリーダーの挨拶を聞いていて非常に面白く思ったのは、政治や経済の逃げ遅れ組はみんな同じ挨拶をしていました。「年後半には景気が回復する」と言っていました。見ているとあれはみんな逃げ遅れ組です。どう見ても無事では済まない組織がみんな同じように、「年後半には景気は回復する」と言っているのです。
 年後半に景気が回復するといったらどうすればいいか分かりますか。何もしなければいいのです。待っていればいいのです。梅が咲くのをじっと待っているようなもので、時が来れば梅が咲くから、冬の間もじっと大切に梅が育っているのを待って、じっと見ていればいいわけです。
 正直言って今年はそんなに甘いものではないと思います。今年はもっと攻め出していかないと難しいと思うのです。

 その辺の事情からちょっと申し上げますと、今サブプライムローンの問題というふうに言われていますが、実際に信用力の低い人たちが起こしている問題は全体の中のほんのわずかです。それでも何十兆円あります。20兆~;25兆円ぐらいはあるので、それでも大変なのですが・・・。今、世界が陥っている広い意味での不良債権の金額は一桁多い数字です。200兆円、300兆円、あるいはそれ以上の数字で今大変なことになっています。
どういうことかと申しますと、そもそも貧富の格差を広げるという政策をアメリカはずっとやってきました。したがって貧しい人たちに大量に高い金利でお金を貸して金儲けをするという商売が実はすごく流行っていたのです。住宅ローンがそうです。クレジットカードローンがそうです。自動車ローンがそうです。そういうのを少しやりすぎたのです。やりすぎて、いよいよ貧しい人たちが払えなくなってしまった。
でも問題はそれだけではないのです。そうやってお金を貸す時に誰がどうやってお金を調達して貸すのかというと、昔であれば銀行が預金を取って貸出をするわけですが、今銀行もあまり本格的にそういうことをやらないんですね。預金を取って貸し出すといろいろリスクも大きいというので、証券化といって金融工学を使い、いろいろ証券を作ってしまうのです。
鬼澤君と私でニューヨークに行っていた頃、いろいろな勉強もしましたが、面倒臭い数学なのです。直感的にはなかなか分からない数学を使い、お金を上手に整えて、「はい、証券できました」と売るのです。
例えば一万人に貸し出し、その一万人に貸し出したお金を全部プールして分けていくのです。最初に払えるものか、あとから遅れた人に払うものとか、金利も高いの、低いのと切り分けていくのです。言ってみれば一頭の豚を潰してロースとかいろいろ分けて売りますが、あんなふうにしてやっていたのです。
ところがこれもやりすぎて、あまりにも複雑になってしまいました。結局普通の投資家が見たのでは何のことだか分からない、一体何のリスクだか分からないという商品が、言ってみれば何百兆円ともう既に金融市場にはあるのです。
分からないけれど、S&Pとかムーディーズとか格付け機関という所があって、この格付け機関が専門家なのでよく分析をして、言ってみればこれはAAAでいちばん良い、これはBBBでちょっと悪いと・・・。でもちょっと悪くても利回りが高ければ買う人がいるので、格付け機関が分析をしてリスクとリターンを分けて売っていて、これをみんな信用してやっていたのです。
そうしたらこの格付け機関がちょっと間違えたと言い出したのです。AAAの中にちょっと怪しいものがある。おいおい、待てよと・・・。AAAをつけたのだけれど、非常に信用力の低い人の貸出についてはちょっとそれは難しいぞと言い出しました。去年の夏ごろです。それで格付けを下げる話になりました。どういうことだと・・・。
例えばここに会社が一つあります。この会社の株券であれば、会社はありますから、上がるとか下がるとか会社の業績を見ていれば分かります。あるいは誰か一人お金を借りて家に住んでいる。その人がどうなるかなというのは見ていれば分かります。
しかし今の証券化商品というのは、誰から金を借りていて誰に貸しているか、よく分からないのです。何かとにかく金融テクノロジーを使って何かそこにあるのです。格付け機関がどうも分析が怪しいと言い出すと、何を信じていいの?という話が一気に広がってしまいました。それが去年の夏ぐらいのことです。
非常に怪しい人たちのローンは破綻を起こしているのですが、今何百兆円という話をしましたが、ほとんどのローンはまだ全然破綻はしていません。ちゃんと資金の流れは続いています。破綻しているのはごくわずかなものです。まだまだちゃんと資金は動いているのですが、何が起きたかというと、そんな難しい、複雑な証券、格付け機関しか分からないような証券は危ないから買えないよという話がどーんと広がってしまったのです。一応証券としてちゃんとキャッシュローンもあって、格付けもついていて、ですから法律上もちゃんとまともなのですが、それを誰も買ってくれないわけです。
例えば銀行というのを考えてみます。銀行というのは膨大な資産を持っています。今言った証券化商品以外にもたくさん持っています。これは決して現金ではありません。キャッシュではないのです。銀行というのはそもそも普通キャッシュはあまり持っていないものなのです。じゃあどうやって資金繰りをつけて送金とかをやっているかというと、資産を担保にお金を借りて資金繰りをつけているのです。ですからこの資産が優良資産であれば、民間の銀行でも中央銀行でもこれを持ち込んで担保にしてお金を借りて、いくらでも銀行は営業できます。ですから優良資産さえあれば、別にキャッシュの残高が少なくても銀行が経営に困るということはありません。
ところが何が起きたかというと、資産の部にたくさん証券が詰まっているのですが、これについて、いや、うちはそんなものは担保にとれませんという話が去年の夏から一気に広がったのです。一体何の証券か分からない。どんなリスクだか分からない。格付け機関がよく分からないと言っているのだから、いよいよ我々にも分からない。したがってサブプライム関係はもちろんのこと、様々な証券化商品、それから非常に値段の高い家もそうなのです、値段の高い家のローンなどこれからどうなるか分からないものは、金融機関同士が一斉に担保にとることを拒否し始めたのです。
結局コンピュータを叩けばそこに値段は出ます。コンピュータを叩けば、一応金融テクノロジーにしたがっていくらと値段が出るのです。しかし、「その値段で買って下さい。」「いや、買えない。」「じゃあその値段の8掛けで担保にとってください。」「いや、とらない。」こういう話が一気に広がってしまったのです。これが去年の8月です。そのために今回はその国のいちばん大きな金融機関がいきなり資金繰りに詰まり始めました。こんなことは普通ないんです。
例えばあくどい金融業者というのはどの国にもいます。それがやりすぎて潰れるというのはあまり珍しいことではありません。でも結局それが大手の金融機関の経営問題にいきなり結びつくという話はあまり聞いたことがないのです。そんな話はあまりないと思います。
しかし今回は今申し上げたように、怪しいローン以外のものも大量にあるのです。証券化というのは日本でもやりました。不動産のリートとか、不動産の証券化というのは非常にたくさんやったのですが、専門家にしかその中身がよく分からないのです。そんなものだからみんな怖がってしまって、一斉に担保をとらなくなってしまったのです。
それで8月にはまずヨーロッパから始まりました。ヨーロッパのドイツ銀行、ヨーロッパでいちばん大きな銀行、第二位のコメルツ銀行、それからスイスのユナイテッド・バンク・オブ・スイッツランド、UBS銀行、それからアメリカは全部です。住宅ローンの証券化をやっているカントリーワイドという銀行があります。日本では営業していませんが、カントリーワイドというのがいちばん大きい会社です。それからシティバンク、バンカメ、あるいは証券ではメリルリンチとか、もちろんゴールドマン・サックスも、モルガン・スタンレーも、JPモルガンもみんな入っています。とにかく巨大な資産を持っている所がそれを担保にお金を借りられなくなってしまったのです。ですからお金の支払いができなくなってしまったのです。
大騒ぎになり、去年の夏から各国の中央銀行が、言ってみれば民間の銀行が担保にとってくれない怪しい資産を担保にとってお金を出すという特別融資、特融をずっと続けているのです。
中央銀行のお金の貸出というのは、いちばん良な資産を担保にしない限りできないものなのです。各国そういうふうにルールを作ってあります。しかし怪しいローンを誰も引き取ってくれない。それで銀行が潰れてしまう。しかもその国のいちばん大きな銀行が潰れてしまうというので、中央銀行が民間の銀行が担保にとれない怪しい証券を担保にとって金を貸すのです。これが特別融資、特融というやつです。
去年から今の時期で、この残高がもう300兆円は軽く超えています。特に去年の12月なんか、ヨーロッパの中央銀行は年越えの資金を1日に56兆円貸していました。1日に56兆円の特別融資を行うなんて、正直言って聞いたこともありません。日本の政府の1年間の税収がだいたい40兆円ぐらいでしょう。せいぜい40兆円ぐらいです。それを1日で56兆円の金をヨーロッパ中央銀行は貸しているのです。ユーロで貸すわけです。ということはもう動脈出血しているのです。金融システムは動脈出血状態で、全然状況は良くなりません。
そこに今回年が明けてまた新しい問題が始まりました。今度は保証会社が危ないという話なのです。いろいろな証券を作ったり、社債を発行した時、その信用力をどう確保するかというと、基本的にはその会社の体力、債務者の体力で決まります。でもそんなことではなかなか面白くないというのでいろいろないたずらをするのです。
一つは金融テクノロジーを使っていたずらをします。キャッシュフローをより分け、たとえ支払い遅延が起きても優先して払う債券と、劣後して払う債券に分け、こっちはAAA、こっちはBBとか分けて売るとか、そんなふうに金融テクノロジーを使って信用力を上げたりします。
あるいはもっと簡単にやる方法は、保険会社にお願いしてしまうという方法があります。保険会社といっても普通の生命保険会社とか損害保険会社もやっているのですが、そうではなくてもっと専業の保険会社があるのです。信用保証を専業にやっている保険会社があるのです。日本ではあまり知られていないのですが、これは結構大きな業界になっています。そこに、言ってみればちょっと保険料を払うと、AAAとかに保証してくれるのです。そうすると、生の体力だったらAぐらいで調達するからちょっと高い金利になる。でも保証料を払ってAAAにしてもらったら、保証料を払っても調達金利が安いということがよくあります。それで保証会社にお金を払って保証してもらっている債券がだいたい300兆円ぐらいあります。市場全体で300兆円ぐらいあります。しかしこの保証会社の自己資本の総額が2兆5、6千億円しかないというのです。だから自己資本比率が1%未満なのです。
これが経営が揺らぎ始めてしまったのです。細かいところであちこち破綻が始まっているのです。そうすると、払っていったら保証会社も赤字だし、今新しい証券を発行する人はあまりいません。証券の発行高もどんどん減っているので、収入が減ってくるわけです。これは経営がおかしいという話になります。300兆円ぐらいの債務をAAAとかAAに格付けしています。だいたいAAAにしています。これが格下げになったらそれだけでものすごい値下がりなのです。だからもうそういう保証がついたものは誰も買い取ってくれないのです。例えば今市場価格が100%、100ついていても、いや、それは格下げになったら80になると思えば、「いくらで買ってくれるんですか。」「いや、当面買えないよ」という話になっています。急速に広がっています。
ですから市場の壊死というのでしょうか。証券はあって、まだキャッシュフローも大体動いているのですが、誰も買い取ってくれない。売り手ばかりで買い手がないという市場が壊死した状態がまだ広がっています。どんどん広がっています。
ですから本音で言ったら、すなわち「今本当にいくらで売れるんですか。」評価ではないのです。実際に売って、現金化できる値段で全部一回資産を評価してみたらどうなるのかといったら、アメリカもヨーロッパももう全部債務超過なのです。ゴールドマン・サックスだって、シティだって、実は債務超過なのです。実はそれは去年の秋の段階でもうはっきり分かっていて、それでみんな「ああ、どうしよう」とあまりのことに声も出ないというのが本当のことなのです。

さらに問題はもっとどんどん続いていきます。そうやってやっていったうち、今度イギリスで取り付け騒ぎが起きました。イギリスの中部の銀行、全英で上から5番目の預金量の銀行で取り付け騒ぎが起きたのです。これはサブプライムローンの損失が大きかったということですが、地方だったので預金者の多くはお年寄りでした。
お年寄りが支店にずらっと並んだわけです。警察も出動して雑踏整理します。イギリス政府も慌てて銀行に救援をするといろいろ言うのですが、誰も帰らない。それはそうです。自分のこのお金で生涯暮らそうという人たち、お年寄りが自分のお金を入れているのですから・・・。潰れたらペイオフです。ペイオフで預金カットです。いくら政府が救援すると言っても預金がなくなる可能性があるわけですから、それはみんな引っ張り出してしまいます。
これがミャンマーぐらいだったら機関銃をぶっ放して追い返してしまうわけです。しかしさすがにイギリスはそんなことはできません。やはり、すみませんとお金を渡して帰ってもらったわけです。すなわちペイオフはしません、預金は全額保障しますと言って預金者の方にお引取りいただいたわけです。これは極めて重大なことでした。
その銀行は結局今国有化に向けて動いています。もう国有化しか方法がないだろうと言われています。株価は0円になって国有化だ、税金で救済する、他に方法がないと今言われています。
我々も10年ぐらい前からビッグバンとかいう話をよく聞きました。銀行預金も言ってみればリスクがあるんですよ。国が丸抱えということはなくて、よく銀行を選ばないとペイオフでお金がなくなりますよというルールに10年ぐらい前から変わりました。
あのペイオフのルール、現代の銀行のリスク管理のルール、あるいは預金者の自己責任という話を世界で初めてやったのがイギリスでした。イギリスはご承知のとおり「揺りかごから墓場まで」と申しまして、昔はイギリス人として生まれたら政府が死ぬまで面倒を見るという福祉大国でした。ところがだんだん国が衰退していってそれが維持できなくなり、今から25年ぐらい前でしょうか、ルールを全部変えました。自己責任ルールを入れました。したがって銀行がおかしくなってももう国は救済しませんよというルールに世界で初めて変えたのです。これを見習ったのがまずアメリカです。引き続いて日本もやりました。
その元祖が「もうやーめた!」と言ったわけです。もうペイオフはできません。できない、やめた。今度は税金を入れて全部銀行を救ってしまいます。こうです。いや、ですから今回は画期的なことでした。
だから簡単なのです。要するにもう、これからが非常に重要なことなのですが、改革や市場原理主義では経済は回らない。はっきりしたのです。ビッグバンはお終いなのです。市場原理主義ははっきり言ってこれでお終いなのです。
社会主義というのが20世紀に生まれて20世紀に消えたでしょう。ソビエトが生まれたのが1917年で、潰れたのが1991年です。だから社会主義政権というのは70年ぐらい続きました。でも市場原理主義は25年しか続きませんでした。だから社会主義より中身が悪かったのです。あれでも70年続いたのです。こっちは25年しか続きませんでした。
ですからこれはすごいことなのですよ、みなさん。ペイオフを言い始めた国が、できない、銀行国有化で税金を入れて救うという話です。
10年前、イギリスは偉そうに日本にものを言っていました。イギリスもアメリカも・・・。ちょうど日本は10年前、金融危機でした。日本人は何をやっているんだ。でかい銀行だから潰せないとか、そういうことを言っているからあんたの国はどんどん衰退するんだ。潰せ、潰せ、やんの、やんの言っていましたよね。なーに、自分の番になれば、「いや、たまげた」と言ってあっという間にペイオフはやめ、国有化です。ざまあ見ろと思います。
しかしとにかく連中も想定外だったのです。正直なところ、こんなことが起きるとは思ってもみなかったのです。

それで経済学も、もうどうしようかという話なのです。
みなさん、風邪を引いた時、風邪を治す時にどうしたらいいと思いますか。一つの方法は、風邪を引いたら暖かくして寝ているという方法があります。もう一つは、風邪を引いたら服を剥ぎ取って走らせるという方法があるのです。ショック療法というか、「ぬくぬくぬくぬくしているからいつまでぐじゅぐじゅ風邪が治らないんだ!」服を剥ぎ取って、「少し寒い中は知って来い!」気合が入って風邪が治る。みなさんならどっちが良いと思いますか。風邪を引いたらぬくぬくさせておくのが良いか、服を剥ぎ取って走らせるのが良いか。
これは経済学で言ったら、不況になったら政府が金を出したらいいか、反対に、不況になったらむしろ金を抜いた方がいいか、この話なのです。正直言って両方やって両方失敗してしまったのです。
例えば日本で言ったら、昭和が終わったころからバブルがはじけてものすごい不景気になりました。国は随分お金を出しました。90年代前半ですが、財政支出も出したし、金利も下げました。でも結局株価は大暴落して、銀行は潰れていって、自民党は政権を失いました。
これで日本政府もたまげてしまったのです。風邪を引いて、どんどん金を出してやっても結局風邪は治らないじゃないか。もっとこじらせてしまった。どうやら経済学の教科書は間違っていた。風邪を引いたら暖かくして寝ていろと書いてある教科書を使っているのはだいたい東大の先生なのです。東大の学者が間違っていた。ひどい目に遭った。騙された。もう東大はいい。
90年代の半ば、もう東大はやめにして、今度慶応の先生が来るわけです。これが面白い教科書で、不景気になったら増税してしまえと・・・。国有財産を全部売り払って、弱者を救うルールなんて全部やめてしまって、もうとにかく強い者勝ちにしてしまえ。そうしたらみんなびっくりたまげて走る。びっくりたまげて、死んじゃいかんと走るから、その元気で経済が持ち上がる。だからとにかく政府は経済を救うな。むしろ厳しくして、政府自身も小さくしてしまって、やりたい放題に任せてしまえ。金持ちにやりたい放題やらせておけば、それで全体が持ち上がる。こういうルールに変えたわけです。学者の名前は言いませんが、分かるでしょう? 慶応の、ね・・・。
日本政府も、これはいいわと・・・。東大の先生の教科書を使って間違った。今度慶応の教科書は全然違う教科書で、それをやったわけです。そしてやった挙句がこれです。
不況でしょう、みなさん。良くないでしょう。住宅・建設産業だってドボンといってしまったじゃないですか。どういうことですか。何も建築着工の問題だけではありません。東京だって、どこだって、マンションが余ってしまっていて売れません。暴落が始まっています。
京都なんか、昨年の夏、中心部坪3000万円が1200万円まで一気に暴落しました。景観条例を作った瞬間に3000万円が1200万円ですよ。どういうことですかね。
それからタクシーなんかすごいですよ。710円に上がってしまって乗る人なんかいやしない。夜、東京に行ってごらんなさい。見渡す限りタクシーですからね。2列でずーっと並んでいます。あんなに並んでいたのでは、多分一晩中お客さんがないタクシーもいます。
それから高速道路が空いていませんか? 東京に行かれますと分かりますが、とにかく高速道路が空いています。ガラガラなんですよ。車が明らかに少ないです。
それから東京の銀座通りがあります。ヨーロッパ辺りの高級ブティックが並んでいます。銀座の人が言うのですが、最近みんな買い物をしていないと言うのです。人通りはあるけれど、買い物をしている様子がない。あれはものすごい高値で買ってしまっています。ものすごい高値で買ってしまっていて、どうするのだろうというわけです。これで例えばヨーロッパももっとえらい不況で、今ひどいことになっていますから、帰ると言い出したら、それこそ東京の銀座通りも地方の銀座通りと全く同じようにシャッター通りになってしまいます。
それでもって政治はどうですか。去年の夏、参議院選挙で自民党・公明党、与党大敗でしょう。同じことが起きたのです。しかもここでサブプライムの世界的金融システム危機じゃないですか。そして銀行が潰れ始めていて・・・。同じなのです。
今度は服を剥ぎ取って寒い中走らせろという教科書をやってみても、同じように不況で、銀行が潰れて、与党が選挙で負けたのです。どっちの教科書をやってもだめだったのです。これはどうすればいいと思いますか?
要するにもう経済学では問題は解けないということなのです。金の問題ではないのです。だからこそリーダーシップの新しい経営がないと・・・。そもそも経営における価値とは何か、そこを経済学は間違っているのです。これは後半の方でお話ししますが・・・。今回経済学で問題が解けないというところまではっきりしたのです。ですから経済学者がみんな黙ってしまっているわけです。あら、えらいことだ。どうしようもない。

さらに同時に今度は投機の問題が起きました。スペキュレーションです。
結局今の世の中はお金の世界がモノよりはるかに大きいのです。例えば外国為替なんかも貿易とかでお金が動きますが、実際にはそれ以上に証券投資とか、あるいは単なる売ったり買ったりだけの投機、スペキュレーションの方がはるかに大きいのです。
実際の需要があるものとそういう投機の比率はどれぐらいかと言われます。よく分からないのですが、おそらく実際の需要は0.何%以下だろうと言われています。日々の為替の取引の中で0.何%以下だろうと言われています。
日本の国民金融資産が1500兆円とか何とか言いますが、デリバティブズの残高というのは何京円でしょう。何京という数字で、とにかくものすごくあるのです。
この投機の世界というのも実は規制緩和が進み、国境がありません。ですから日本からアメリカに、アメリカから中国に自由に行くでしょう。それから今度商品ごとの垣根もないのです。株式、債券だけではなく金も買えるし、鉄も買えるし、船の運賃も買えるし、何でも買えます。
それで突然の相場の暴落だったので、慌てた投機資金がどこか値上がりするところはないかとモノの世界に流れ込んでいったのです。原油とか、鉄とか、金とか、そういうところに、もうこれは去年ぐらいからですが、ずーっと流れ込んでいます。
今、油が非常に高いです。一時のピークより下がりましたが、それでも高いです。でも実際に今、世界経済は急速に減速しています。今、世界中急速に減速しているので、油は余っているのです。油が下がっているのになんで下がらないのかというと、これは投機のお金が入って先物とか何かでどんどん油の先物を買うから高いのです。この投機がなかったら、今原油の値段は1バレル40ドルぐらいじゃないかと言われています。ですから実際に今の原油の値段は実需の2.5倍ぐらい高いだろうと言われているのです。
そういうお金がどんどこどんどこ流れ込みます。油や鉄の先物などに流れ込めば当然物価が上がるわけです。先物が値上がりすれば実物も値上がりしてきます。ですから金融危機がひどくなればなるほど物価が上がるという非常に恐ろしいことになってしまったのです。
今、こうやって不況と物価高です。物価が高いです。物価が高いのはなぜだと言われると、いちばんの原因は投機のお蔭です。それに油がなかなか取りにくくなっています。油の採掘コストが上がっているし、食糧も足りないのですが、目先で見たら不景気になってきているのですから余るはずなのです。ですからこんなに高いのは変で、やはり投機の金が入ってしまっているのです。
したがって、まあ恐ろしい話です。サブプライムの混乱がひどくなればなるほど金が博打的にモノの世界に上がっていって、先物をつり上げて、現物をつり上げて、物価上昇にはね返ってきて、そしてまた不景気になりますから、また金がこっちにいく・・・とえらいことになっているのです。

これを止めようとすると金融政策が必要になるという話になってきます。お金を抜かなければいけない。言ってみれば水が溜まっているわけです。この水を抜かなければいけないですね。この水を抜くためにやるのが金融引き締めです。金融引き締めをすれば投機のお金もなくなります。でもそれをやったら今度銀行が潰れてしまうのです。金利を上げると銀行がいよいよ潰れてしまうので、それはできない。
じゃあ今度銀行が潰れそうだと大騒ぎをすると、この間のFRBみたいに0.75%ドンと下げようという話になる。とりあえず銀行救済です。でもそうするとまた投機の金が出ていって今度モノが上がるのです。
金はどんどん動いてしまいますから、投機の金だけ抜くということがなかなかできない。だから正直言って中央銀行もどうしようもないのです。金利を上げれば銀行が潰れるし、下げれば物価が上がるし、もうどうにもならないところに追い詰められてしまっているのです。

しかしさらにまた状況が変わってきました。そうは言ってもさすがにやはり需要は落ちてきています。油でも、穀物でも、鉄でも、銅でもそうです。銅なんか最高値でトン100万円が今80万円です。下がってきているのです。すなわちそれは景気が悪くなってきているのです。これは放っておくと大暴落するだろうと、それは間違いないと思います。
そうすると今度こういう問題が起きます。ゴールドマン・サックスとかああいう投資銀行、それから一般の投資家、ヘッジファンド、こういう所はサブプライムで受けた損失をモノの先物をつり上げて、言ってみれば損の穴埋めをしようとしています。連中は連中でソロバンを持っていて、株と債券で生まれた損失を、モノの値段をつり上げて、これで利益を出して埋め合わせようと一生懸命やっているわけです。
ところがモノの値段が暴落してごらんなさい。どうなると思いますか。それはもうやっていた連中はみんな破産です。株も債券もだめな上にモノも暴落したら、こっちも暴落して全損でお終いです。だから今ぎりぎりのところでやっています。はっきり言ってもうぎりぎりです。
これをやると商社とかメーカーが危ないのです。例えばみなさんの中にメーカーの方がいらっしゃったら気をつけてくださいよ。モノの値段が値上がりしていく時というのは持っていれば利益が出ます。
鉄なんかだって持っていると鉄の値段が値上がりしてきますから、それを利益にすることができます。評価方法なんかもなるべく時価を反映するようにしてやっていると、鉄の値段が上がっている時は、鉄を持っている所はどんどん利益が出ます。ところが鉄が暴落してごらんなさい。いきなりそれが決算書に表れたら、大幅赤字になってしまうことがあります。
ですからメーカーなんかは材料を持ちすぎると最後が危ないのです。よく気をつけてください。これから資源の値段が暴落した時、資材が暴落した時に、それで当社の決算が大赤字にならないように在庫管理と在庫品の評価を本当に気をつけてください。今いちばん危ない時なのです。
さらにもっとすごいのは、ゴールドマンをはじめとした博打をやっている連中が、どこの相場をつり上げて穴埋めをしようとしていたのか。そのいちばんの買いのご本尊はなんと船の運賃のマーケットだったのです。
船の運賃、しかも海外の、国際航路の海外運賃というのは実は日本国内では決まっていません。世界的なマーケットがあって、そこで決まっているのです。ここにも先物取引があります。あるのですが、数量の統計がないのです。お金がいくら動いたかという統計がないので、投機をやっている連中はここで売ったり買ったりしても分からないと思って、おととしの暮れぐらいから猛烈な資金をつぎ込みました。
しかもこれは念の入ったやり方で、世界中の中古船を軒並み買い上げてしまって中国の沿岸航路にぶち込みました。船の世界というのは国内の沿岸航路と海外の航路とは全くマーケットが別です。連中は何をやったかというと、海外航路で運行している船をどんどん買いあさって中国の沿岸航路に入れてしまい。海外航路で船が足りないという状況をつくったのです。中国は今沿岸部が発達しているので一応船の需要はあるのです。それで入れてしまって、船が足りない、船が足りないという状況をつくっておいて、運賃指数を滅茶苦茶つり上げたのです。おととしの末ぐらいから去年の秋ぐらいまで、運賃指数が5、6倍上がっています。
この暴騰したところの数字を見て船を発注した所は、それは大変です。幻だったのです。そんなに船は要らないのです。みなさん、船会社だって、造船所だってどういうことになると思いますか。
昔三光汽船というのがありました。三光汽船の破綻劇って覚えておられますか? あんなものではすみません。えらいことになっていて、実際に船会社の人も大慌てをしています。
実は日本の大手の中でも、この何年間に猛烈船を造った所と造らなかった所に分かれています。名前は言えませんが、猛烈造った所の社長は、年頭の挨拶はやはり「年後半に景気は回復する」と言っていたそうです。ああ、やっぱりなと・・・。もう逃げられないからね。
それからIMFもそうです。国際通貨基金、IMFがあるでしょう。金融危機を起こした時に救済する所、そこも年後半に景気が回復すると言っているのです。同じなのです。金融が何かあったら収縮のしようがありませんから・・・。
ですから今、すさまじいことが起きています。

そしてついに年末年始にいってしまったのが中国です。中国はついにバブルがはじけました。
結局今回の住宅ローン問題も何もそうなのですが、住宅の値段が値上がりさえしていれば、ローンの破綻が起きてもそれが不良債権にはならないのです。住宅ローンを借りて払えなくなってしまった。でも家の値段が上がっていれば家を売ればいいのです。家を売って、そしてローンを返して、また新しいローンを借りて家を買えばいいから、家の値段さえ上がっていれば払えなくても実は大きな問題は起きません。ところが家の値段が下がり始めると、家を売ってもローンを返せません。したがって破綻になるのです。だから最終的にはローンを返せるか、返せないかの問題ではなくて、家の値段が上がるか下がるかで不良債権が出るか出ないか決まるのです。
アメリカはもう2年ぐらい前から住宅地の値段が下がってきています。今急速に下がってきているところです。全然まだ底が見えません。
中国は去年の秋ぐらいに住宅の値段がピークを打った感じがあります。例えば中国でいちばん不動産の値段が上がった上海辺りでいうと、去年の秋の段階で、住宅を買って賃貸に出したら全然採算が合わないという状態になっていました。賃料収入の方が金利よりはるかに安すぎるのです。したがって買って貸したら採算が合わない。去年の秋です。ということは家の値段が上がりすぎている証拠です。そして売買がうんと細っていました。これもバブル末期の典型的な現象です。もう高すぎて誰も買う人がいない。
さらに中国政府はものすごい金融引き締めをしています。ですから資金繰りがつかないのです。これは一般企業も同じです。資金繰りがつかなくて、去年の秋に南部のシンセンという所でついに不動産の暴落が始まりました。そして不動産会社、結構大きな所の倒産が始まりました。
年が明けて今度それが上海にきました。年が明けて上海のある有名な不動産屋が夜逃げをしたのです。不動産王と言われた人が夜逃げをして全店舗閉鎖です。その人は広州でもやっていたのですが、そっちも閉鎖になってしまった。
さあ、大変です。そのころから本当の話が出てきました。実は上海でも中古物件の9割は売れ残りだったとか、そんな話が出てきたのです。なんだ、嘘だったんじゃないの、本当はとっくの昔にピークを打っていたんじゃないかという話になって、大騒ぎです。
株も去年がピークで、今もう4400円ぐらいにまで下がってきました。上海の株ももう上がれなくて、ドドドドドと下がっています。香港なんかは年が明けて香港市場始まって以来の下落幅でした。大暴落です。
中国もこれからみなさんよく考えなければいけません。中国はここで非常に難しい局面に入りました。どういうことかと申しますと、まず根本的に中国では人口の問題があります。人口が多過ぎるのではありません。反対です。人口が実はこれからどんどん少なくなっていってしまうのです。
中国は実は去年ぐらいからものすごい勢いで賃金が上がり始めました。急激にです。なぜか。いろいろみなさん分析したのですが、どうもこういうことらしいのです。どうやら中国は完全雇用状態になったらしいというのです。
すなわち中国で山の奥からたくさん安い労働力が出てくるという話がありました。しかしどうやら出て来られる人は全員出て来てしまったようなのです。もういないらしいのです。すなわち工場労働とかに適する若年労働者は、転職時の一時的な調整の失業を除けば去年ぐらいでほぼ完全雇用になったらしいのです。したがって去年ぐらいから賃金を上げないと人が来ないという現象が急速に広がっていきました。
昔は日本企業が張り紙をして人を雇いますと言えば、紙を張っておけば翌日長蛇の列ができたそうです。今は全然だそうです。反対に仕事中にみんな携帯電話をピッピピッピやっているのだそうです。「お前の所、賃金はいくらだ? 昼飯美味いか? まずいか?」それを見てオ!と言って、それで翌日からすぐ転職してしまうのだそうです。
ものすごいことになり始めています。どうやら中国は完全雇用状態になったみたいです。
実は中国というのは一人っ子政策をやっています。今でもやっていて、一人っ子政策の第一期生が今年29歳になります。10年経ったら39歳になります。ということは、工場労働に適する若年労働者というのはこれから10年で急激に少なくなるのです。
一人っ子政策の一人っ子というのは日本とよく似ていて、ちやほやちやほやされて育てられるので3Kが大嫌い。3K職場が大嫌いで、ちやほやされないと元気が出ないし、すぐ引きこもってしまう。大好きなのがゲームとい美食。我々が知っているあのダイナミックな中国と随分違うのです。本当に違って、親兄弟のために1日17時間働いて貯金するとか、どうもそういう人たちではないのです。
ですから中国というのは放っておいても今のこのものすごい経済成長は維持できなくなります。それでどうするのかという話になっているわけです。そこへもってきてバブルが崩壊したでしょう。これはえらいことなのです。ここでバブルが崩壊してきたので、そうしたらどうしますか?
要するにもうくしゃくしゃです。今中国は大雪です。大雪で鉄道なんか結構麻痺しています。いいですか、世界恐慌のいちばん怖いところはここです。今度は実業の会社が止まってしまいます。金融機関ならまだ金を入れて救済するという方法がありますが、例えばどこかで工場をやっている人が夜逃げをしたらどうなると思いますか? バブルが崩壊して資金繰りがつかないからと経営者が財産を引っつかんで夜逃げした。工場が止まります。商社も同じように金を引っつかんで夜逃げをしたらどうなると思いますか? 止まります。船会社だって、さっき言ったように船が余っているのに造ってしまったでしょう。どうせ金が足りなくなります。夜逃げします。トラック会社の経営者が夜逃げします。どうなると思いますか? 
昔のように国有企業ならいいですよ。国有企業なら大赤字やったってどんどん仕事をしています。しかし夜逃げしてしまったらどうなりますか? 止まってしまいます。80年前の世界大恐慌もそうなのですが、止まってしまうのです。中国で止まってしまったらどうなると思いますか? 日本にも、ヨーロッパにも、アメリカにも何も商品が出てきませんよ。ですからこれを甘く見ていたらひどいことになります。
いよいよインドもバブル崩壊しましたが、まあ中国の方がひどいでしょう。いよいよ中国まできましたから、今度はモノが止まり始めます。
ですから世界大恐慌というのもインフルエンザと同じで、いろいろな症状が順番に出てきます。これは珍しいことではありません。昔からあることですから、ちょっと勉強していただければ分かります。80年前の世界大恐慌、それから日本の敗戦後の混乱期とかいろいろありますから、そんなに難しいことでもありません。あまり珍しいことでもありません。時々あるのです。

今年はそういう意味で非常に大変な年です。最終的にこれはリーダーが交代しないと絶対に無理です。リーダーが交代してニューディール政策ということを始めないと、新規巻き直しを始めないと、政治も経済も絶対に立ち直りません。
中国なんかの場合は共産党政府が代わらない限り絶対に無理です。バブルが崩壊したらどの国だって政治の交代を求めてきます。一党独裁なんかやっているからもっと問題をこじらせているのです。あれを代えるためには革命ですから、それは大変ですよ。ですからそう考えると中国は非常に難しいです。今日本国内にもう1回戻ってきている企業が多いですが、正解だと思います。これから中国は難しいと思います。
そんなこともあり、今年は非常に大変です。どうせどこかで総選挙があると思いますが、今の福田政権は内閣改造すらできません。ですから可能性としては投げ出し解散以外考えられません。前向きな意味で得点を得て解散なんて、あれでは無理です。投げ出し解散しかない。
情けないことに、小沢さんは選挙をやりたくないらしいのです。民主党の小沢さんは政権を取りたくないらしいです。小沢さんに近い人が言っていました。だから民主党の若手も怒っているのです。こういう時に政権を取るのは面倒くさいことが多過ぎるから嫌なのだそうです。上がそれなのだもの、下も参ってしまっています。ですからああやって談合政治をやっているのです。あれ、談合でしょう? 国会もさぼってしまうし、代表質問も・・・。あの代表、どうしようもないでしょう? 
自民党も自民党なら、民主党も民主党なのです。みんなから愛想を尽かされてしまっています。だから今度の総選挙は面白いです。俺が頑張るという奴が当選しますよ。何党はあまり関係ないんじゃないかな。

とにかく今年は日本も政治も変わるでしょうし、それから日本の金融機関だってこれから不良債権が増えるのではないですか。また今回三井住友が不良債権が増えていましたが、だんだん増えていきます。要するに今不良債権は増えているのです。隠しているものもあるかもしれないけれど、実際に増えているのですからそれは増えてきます。
そうしたら日本の金融機関だって今度は貸し渋り、貸し剥がしです。みなさん、これ、よく気をつけてください。今年は資金調達です。銀行の貸し渋り、貸し剥がし対策はしっかりやっておいてください。銀行だって不良債権が増えてくれば手のひらを返してきます。むしろ大銀行より地方の銀行と深く付き合った方が今年は有利ですよ。
同時に今年こそ経営のクオリティが問われます。ちゃんとチームワークを組んでいないと今年はとりきれません。
それから今年は守り一辺倒ではもう無理だ。今年は攻めていかなかったら無理です。ですから今までみなさんずっと経営の品質の勉強をしてこられて、改善に取り組まれて、とりあえずどれだけうまくいきましたかというのが今年試されます。本当にそういう年だと思います。だから今年はひとつ勝負です。節目の年じゃないかな、そんなふうに思います。

それではちょうど3時ですので、10分ほど休憩して、この時代にどんなリーダーシップでいくのかという話を続けていきたいと思います。

では、いろいろお話させていただこうと思います。
組織の内部のことも当然あるのですが、これからどこへ向かっていくかということを、まず組織全体でこれから考えなければなりません。業種によっては遺伝子だけ残して、やっていることを全部変えなければならない業種も当然出てくると思います。
例えば不動産のリートをやっている会社、不動産の証券化をやっている会社というのは、多分10年商売はないですよね。遺伝子を持って何か変えないといけません。
同じように、いろいろな所で無理に無理を重ねてきてしまって今はもう公共事業が難しいとか、あるいは中国でいろいろやってきても中国の物価が上がってしまってどうにもならないとか、あります。
この中にトップリーダの方もいらっしゃると思いますが、非常に重要なことは、消耗し尽くす前に形を変えることが大事です。エネルギーが残っている間に形を変えないと・・・。要するに不況の時、景気が悪い時、なかなかパッとしない時に企業は何をしていればよいかがよく分かります。
不況の時というのは、新しい時代に向けて新商品を作ったり、開発をしたり、いろいろトライアンドエラーをしている時です。不況の時はあまりお金がありません。人手もかけられません。しかしコツコツ何かやるにはいちばん良い時なのです。ですから世の中が不況で大変だと言っている時にあまり派手なことをやると会社をひっくり返します。だからコツコツといろいろな長期的な開発をやっていくのです。長期的な技術の積み上げと新商品の開発をやっていくのです。そうするとその中から次の大型商品が生まれてきます。棚ぼた式に何か売れるものがきたからそれを作ろうというのは、今の時代1テンポも2テンポも経営が遅れています。だめなのです。本物の時代でもありますから、自分で作らなければだめなのです。そうやって今度は何か波に乗ってきたら、そこに資源を集中していきます。そうすると非常に強い会社が生まれます。
いいですか。ということは不況の時に地道に開発をする、不況の時に新商品を開発する時に必要なことは何だと思いますか。不況でみんな大変だという時に、仲間意識がなかったら絶対にできないでしょう。不況ですぐ人のクビを切りますと言っていたら、誰が開発なんかしますか? 不況の時に本当に人のクビをどんどん切っていったら、お客さんの心配の前に自分の心配をしなくちゃとみんな思いますよね。そうしたらみんな逆回転してくのです。だめですね。
みなさん、経済というのはよくできているのですよ。人のことを考えていかないと絶対に全体が回らないようになっているのです。

例えば今じゃこんな不況ですが、30年前にも不況がありました。石油危機のころです。石油危機のことをよく覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、それは今以上にすごいショックだったかもしれません。いきなり円高がきて、油の値段が暴騰し、戦後初めての巨大な衝撃でした。
でも当時のリーダーたちは偉いですよ。まず企業は基本的には人のクビを切りませんでした。不況だからこそ投資をしたのです。すなわちもっと油を使わないようにしよう、省エネ投資をやろうとか、新しい技術を開発しようとか、不況だから投資をしたでしょう。だから人はやたらクビを切らなかったですよ。
それから銀行は不況だから金を貸しました。不況だからこそ企業に金を貸して投資しなければ生き残れないというので、不況だから銀行は金を貸しました。
それから政府は基本的には救いにいきました。
それと同時に、石油危機というのはそれまでの矛盾が全部噴き出した時代でもありました。公害問題、それから地方の格差です。ですから公害問題については厳しい基準が出てきました。最初自動車業界はこんな厳しい基準では車は作れないと言ったのだけれど、基準を出してきた。
それから地方はいよいよ大変だ、60年代の高度成長で随分地方がすさんだというので、田中角栄が出て来て地方の時代だと・・・。当時は地方の時代のキーワードが道路だったのです。新幹線も道路ですね。交通を整備することで地方が蘇る。だからキーワードは交通だと見出して、これをやったわけです。以来30年動いているでしょう。今の暫定税率の話もそうでしょう。あの時の話ですよ。
だから地方の時代だと政治も動いた。必要な金は出した。
特に労働賃金のことを言うと、実は70年代全体を通じて労働分配率というのは上がっています。だから日本全体、平均で見ると、当時の経営者は物価上昇率以上に賃金を払っているのです。実はこれで日本の消費者に余裕というものが生まれました。ですから生活以上に貯蓄することができるようになったのです。
企業は、特に電機メーカーが中心だったと思いますが、70年代にどんどん技術開発をやっていき、80年代に入ったら家電製品を中心にものすごい大量の大型商品、新商品がたくさん出た。一般家庭はそれを買う余裕を持っていた。経済がぐるっと回った。景気が良くなった。したがって国も税収が増えて、80年代を通じて財政赤字はどんどん縮小の方向に向かっていった。銀行も不良債権を作らなかった。みんなうまくいったのです。
全部反対をやったのがこの10年です。全部反対をやったのです。不況だから投資をしない。不況だから人のクビを切る。不況だから政府も何もしない。不況だから賃金を減らす。どうなりましたか? みんなバラバラ、孤立になってしまって、何のチームワークも生まれないでしょう。相乗効果が見事にマイナスになったでしょう。
ですから不況の時にリーダーがチームワークを組まないと今みたいになるのです。不況の時にリーダーがチームワークを組むと、石油危機の時みたいにものすごい、言ってみれば復興が行われるのです。

みなさん、既に勉強されたと思いますが、日本は戦前から製造業がありましたが、非常に品質管理がまずかったのです。製品の品質管理が極めて劣悪でどうにもならなかったわけです。例えば飛行機なんか、戦争末期になると100機造っても試験飛行で50機墜落したそうです。それぐらいのものだったのです。戦後マッカーサーがやってきて、これはえらいことだと統計的品質管理を入れるわけです。みなさんたちと同じです。経営のトップの方たちが品質管理を勉強するのです。現場の人の前に経営者が勉強したのです。昭和20年代です。
それからたった20年か30年で日本はアメリカを追い抜く製造業大国になりますが、しかし決定的に日本が貿易黒字国になったのは・・・。日本は今本当に黒字国で、赤字になんかなりません。本当にすごいことです。ここまで黒字国になったのは、実は1981年以降です。1981年以降、日本はなかなか貿易収支が赤字にならない、というか貿易収支は年間で見て1回も赤字になったことがありません。
どうしてこんなにすごい実力がついたかといったら、やはり70年代の10年間なのです。ここでアメリカと日本の間で決定的な差がついたと思います。70年代のアメリカは何もしなかったのです。何もしませんでした。それで80年代になって大慌てして、立て直そうといって始めたのがあのアメリカ版の経営品質賞です。えらいこっちゃ、日本を見習って立て直そうと・・・。
アメリカで売られている経営学の教科書を読んでみてください。「GENBA」とか「KAIZEN」とか、ちゃんと英語になっています。KAIZENという言葉を知っていますか。あれはsprit of improvementとか言っています。物事を良くしていこうという精神なんだ、これが改善活動だと言っていますよ。
例えばどういうことかと言うと、経営者は設備投資をします。新しい機械が入って新しいやり方になるから、マニュアルを作って現場がやります。そしてまたあるところまできたら、また経営者が設備投資をしてマニュアルを作って現場にやらせます。これだけやっているから経営がうまく回らないのです。これだけやっているから品質が上がらないのです。それはだめなのです。経営者が設備投資をして、従業員が言われたとおり働いて、また経営者が設備投資をして、言われたとおり働いて・・・。だからうまくいかないということを、アメリカ人はあの時日本人を見て悟ったのです。
日本はそうではなかったのです。この二つの間に、投資と日々の仕事の間にもう一つあったのです。これが改善活動というやつでした。言ってみれば、当時生まれて今に引き継がれているアメリカのリーダーシップ理論というのは、よく見ているとやはり改善活動をやった会社が強いというところに行き着きます。
改善活動というのは、与えられた設備、環境の中で、ちょっとでも良くするために何ができるか、みんなで一生懸命考えるのです。だからそれは言ってみれば物事を少しでも良くしようと思って働くということです。やる気がなければできません。それから良いものを作ろうという気がなかったらできないでしょう。みんなの連帯感がなければできないでしょう。そしてやはり目標というものがなければできないでしょう。経営の目標とか、仕事の目標とか、一人ひとりの生きがいというのがなければできないでしょう。
当時アメリカ人は日本のそういう姿を見て仰天して、それで企業理念の大切さとかいろいろ言い出すわけです。だからちょうどあのころからアメリカではブルーカラーの人たちにも企業理念ということを浸透させ始めます。個人主義ですから昔は関係ありませんでした。時給いくらで働いて何が悪いかというのがアメリカの世界ですから・・・。でもそうじゃないんだ、現場の人も企業理念が分からないと会社が回らないんだというルールになってきたのはあのころからです。
その改善活動をずっとやっていって、アメリカを良くしようと思ったのですが、残念ながらアメリカの金融機関は協力しませんでした。80年代、当時アメリカの大手の金融機関は経営危機に陥っていて、金融を担っていたのはソロモンとか、ゴールドマンとか、だいたい証券会社でした。彼らはこう思いました。アメリカのメーカーを立て直すような金があったら、中国に投資した方がよっぽど儲かるぞ。だから助けなかったのです。GMを立て直す金があったら、東欧とか東南アジアで工場を造った方がよっぽど儲かる。それで協力しなかったのです。だからいまだにガタガタでしょう。
だからやはり金融は大事で、その国と運命を共にする金融機関がないと、あるいはその地域と運命を共にしようという金融機関がないと絶対に産業は立ち直りません。ですから今度日本をたて直らせる時も、それは是非やらなければならないことなのですが・・・。
まあとにかく話を戻すと、それぐらいのものだったのです。
さあ、今の日本はどうですか。いつのまにか改善なんかどこかにいってしまって、経営者が投資して、下が言われたとおりにマニュアルを動かして、そして経営者が投資して、マニュアルを動かして・・・。ねえ、こんなことをやっているじゃないですか。そんなもの、良くなるはずがないじゃないですか。
新しい機械が来ない限り業績が上がらない? 新しい技術や新しいルールが来るまで品質が上がらない? そんなことはありません。そんなことを言ったら茶道だって何だって、芸術の域までいきません。宮大工だって何だって、道具は昔からあまり変わりません。でもあれだけのものを造っています。それは改善の積み重ねです。
この15年ぐらいは動きが激しかったから、改善なんてやっている暇があったらどこか外国に行った方がいいと・・・。デジタル革命もあった。それはそれで分かりますが、しかし同じです。みなさん、もう投資ブームは終わりました。何千億円だとか何兆円だとかいう金で巨大な工場を造って、どうだなんていう時代はしばらくきません。だって金融市場がこんなにガタガタになってしまったら、そんな金はもう集まりません。当面は小さい金で回します。あったってそんなにでかいものはできません。
そうしたらどうやってやりますか? もう1回みんなで集まって、どうしようかと・・・。このオンボロ機械をどうやって使うか。家であれば、どうやってリフォームするか。そういうものの方がよっぽど価値が高いわけです。

そして世界の流れを見ると、日本は救われている国だと思います。やはり日本は品質大国です。これでもまだ品質大国です。米だってそうだし、果物だってそうだし、製造業だってそうだし・・・。製造業の方が多いからお分かりのとおり、同じものを外国で作れといったって、作れるものもありますが、でもそれは設備があるから作れるのです。人力では作れませんよ。
だから日本人は機械で作れないものを作った方が絶対に勝負に強いのです。機械で作れないもの、ここまで見事に機械を操れるかというところまでやった方がずっとうまくいくのです。ですからその辺はトップリーダーが勝負する場所をちゃんと選ばなくちゃ・・・。資本力が強い所が勝つところにのこのこ出かけていったら、やられてしまうに決まっています。
ヨーロッパを見てください。ヨーロッパの製造業、あるいはアメリカに残っている製造業はみんなそこにしかできないところで勝負しているでしょう。だから同じようなことをやって世界と勝負しても始まらないので、まず第一に今自分たちの攻める場所を選ばなければなりません。
21世紀はますます品質の時代です。特に日本は、そして中国もこれからどんどん進んできますが、これから少子高齢化時代が来ます。したがって良いものを少し、という時代なのです。大量に、という時代ではありません。偽物を大量に、というのはだめです。偽物を大量に、というデフレ商法はだめで、良いものを少し、という時代です。
しかもこの少し、というのが、そして良いものというのは、いずれもお客さんの評価があっての良いもの、少しなのです。
品質の良いものというのはどういうものですか? 品質の良いものというのは、何も松・竹・梅とあって、松がいちばん品質が良い。そうではないのです。そのお客さんにいちばん合ったものが、そのお客さんにとっていちばん品質の良いもの、という定義です。
世界一の品質というのはどういう意味ですか? オリンピックで勝つ品質ではないですね。そのお客さんにとって世界でいちばん良いものが、その人にとっての世界一ですね。誰に頼むよりも、おたくにやってもらったこれがいちばんぴったり合うんだ。これがそのお客さんにとっての世界一の品質でしょう。
経営も今そういうふうに変えていかなければ難しい時です。ですから「不特定多数」という言葉を使っている会社がだめなんですね。不特定多数という言葉を使っている会社ほど、社員を大事にしないし、仕事を大事にしないし、会社がだんだんすさんでいきます。不特定多数ではだめなのです。このお客さんのために、あのお客さんのためにとやっていかないと、企業を伸ばす方向は見えてきません。絞らなければだめです。不特定多数という考え方はこれからは通用しません。みんな違うのです。その違う所に上手に焦点を合わせていくと、良い商売ができるのです。誰にも真似のできない商売ができるのです。
そんなの、当社の体制はどうやったらできるの?と思われる方もいらっしゃる方がいるかもしれない。それはやはり経営者がまずいのです。経営者が勝てないところで勝負している証拠です。経営者はちゃんと勝てるところで勝負しなくちゃ・・・。会社がすさむようなところで勝負するから後始末が大変なのです。社内の後始末、社外の後始末・・・。
今、良いチャンスです。商売の軌道修正をするのに非常に良いチャンスなのです。こういう時というのはガタガタ動いているのですから、これから先みなさん方の社員と下請けさん、取引業者の方が、これは良い会社だと思えるところに選択と集中をする非常に良いチャンスなのです。だからご自身の会社の方向性というものをしっかり見ていないと・・・。どこに向かって攻めていくんだということが分かっていないといけません。
それから今のことと通じますが、長いお付き合いをするお客さんというのがちゃんといらっしゃいますでしょうか? これからも一緒に付き合っていく、長いお付き合いのお客さんというのはどうしても必要です。

中国とかインドはまだまだ成長伸び盛りの、量で勝負している国です。量で勝負している国と量の勝負が終わった国は根本的に価値観が違うのです。中国の真似をしたって始まりません。今の若い人は金がなくなったら最後「オッパッピー!」とか言って裸になって踊っちゃうのよ。だめなのです。昔みたいに十何時間働いていたらそうなりません。今、金がなくなれば素っ裸で踊っちゃうのだから・・・。それはだめだとか、けしからんとか言っても始まらないのです。一つピークを越えた後は世の中全然違うのです。
だから経営者はそういう人たちを何とかしないと経営にならないでしょう。ですから良い、悪いと言っている場合ではない。「オッパッピー!」とか言っちゃうそういう子供を、どうやったらまともに目鼻のついた社会人になるか考えてやるのが経営者です。ですから良いとか悪いとか言っている場合ではないのです。したがって本当に品質の時代なのです。
私は遠山郷とか田舎に行っていろいろなことをやっているのですが、祭りで使う横笛を借り、今一生懸命やっています。あれは面白いですな。横笛なんて単に竹を切っただけなのです。竹を切って、横笛ですからピーピー音が鳴るのですが、吹いていると気持ちが良いのです。いろいろ調べてみると、耳に聞こえない周波数の音がどんどん出ているらしいです。笛の中でも岩笛というのがあります。石や貝で作った笛です。あれはすごいものになると6万ヘルツの音が出るそうです。人間の聞こえる音というのはせいぜい2万ヘルツぐらいでしょう。岩笛なんて6万ヘルツぐらいの音が出ていて、神社の神官があれを吹いているとみんな恍惚としてくるそうです。
例えば邦楽というのはみんなそうです。歌舞伎とかお能に行って、三味線でも、太鼓でも、笛でも、目の前で聞くと全然違います。でもテレビやCDで聞くと実につまらないです。あれが本物と偽物の違いです。
歌の世界なんか見てください。コピーをとられて大変だ、大変だと言って、レコード会社なんかみんなヒーヒー言っているじゃないですか。でもあれは全部偽物なのです。上とした、全部音を切ってしまっているのです。可聴周波数だけ録音して、はい、歌だと言っているのでしょう。それはやはり偽物だもの、タダになります。でもライブは人気ですよ。ライブはいまだにチケットが取れないアーティストがたくさんいます。
だからああいうのを見れば分かります。音楽の世界でも、芸術の世界でも、偽物はもうみんな嫌なのです。偽物はみんなタダです。本物はほんのわずかしかないでしょう。ライブをやるといったらたくさんの人は行けないでしょう。そしてチャンスもそうないでしょう。でも好きな人は行くでしょう。だから本物で勝負できる芸術家は大丈夫ですよ。偽物で勝負している所、デジタル的に何か歌を作ってしまってへらへらやっていたらそれは全然だめですよ。
こいつ、普段から本物を歌っているか、偽物を歌っているかというのは紅白を聴くと分かりますよね。紅白は口パクをやらないんですね。本当に生の声を流しますからね。あれを聴いていると、某男性ボーカルを含めていかに普段口パクでやっているか分かります。偽物はだめですよ、みなさん・・・。
だから日本の芸術なんてみんなそうです。邦楽なんていうのは可聴周波数を超えるところで勝負しているのです。それから建築だってそうでしょう。要するに心をそのまま表す建築とか、お庭だってそうです。だから元々日本ではモノなんて「道具」と言います。道の友です。だから言ってみればモノと心は対決するものではないのです。モノは心と一緒にいくものです。それぐらい大事に長く使うものです。
今の時代はそういう大きなところからものを考えたり何をするか決めないと絶対に答が出ません。とりあえず何かモデルチェンジをして値段を変えてみたり、なんて言っているからうまくいかないのです。そもそもみんなが本物志向で求めているところをよく見てください。
それから農業なんかもすごいですよね。今どんどん変わっていて、消費者の本物志向に応えるべくみなさんいろいろやっています。
それから東京近郊でも、自分の食べる野菜や自分で作るという人が結構増えてきました。農家ほどきれいなものはできませんが、ナスでも何でも無農薬で有機やれば一応できます。結構獲れますものね。戦争が終わった後の混乱期に、当時の政府の人たちが野菜ぐらい自分で作って食べてくださいとか言っていましたが、あれ、よく分かるな。1袋何百円でスーパーで売られていると思うと自分で作ったって十分だという気もします。それは単に経済的に追い詰められているからではなくて、やはり自分で作って食べると美味しいという人もいるわけです。
だから世の中そうやってずっと見ていてください。間違いなく本物志向だし、自分たちで何か行動してやっていこうという世界です。自分たちで行動して、何か本物を自分で手に入れようという動きが怒涛のごとく勢いで今動いています。それに対して何ができるかということだから、半端な目標を持っていたらあっという間に投げ出されます。

ですからやはり20世紀型の、不特定多数にものを売る、みたいなことはこれからなかなか大変です。外国に行けば別です。外国に行けば別ですが、でも国内で勝負をかけようと思ったらそれは難しいから、その辺はまず大きな方針を持つことが大事です。
それをちゃんとやっておかないと会社は絶対に収まらないですよ。世の中どんどんグラグラ動いてきた時に、うちの会社は大丈夫なのだろうか、この商売は続くのだろうか、あっちも倒れ、こっちも倒れ、えらいことだ、どうするんだろうかとみんな騒ぎ出します。だからこそ次はここにいくんですということをやらないと・・・。
時代に行き詰まるとこういうリーダーが出てきます。どういうふうにやるか分からないから、何をやったらいいか分からないというリーダーがたくさん出てきます。これは違う。
例えば、「こうしたい。」「どうやるんだ?」「いや、分からない。」「ああしたい。でもどうやるんだか分からない。」「分からないことを目標と言うなんて、なんと無責任なことか。」こういうリーダーが出てくるのです。だから会社はおかしくなるのです。違うのです。そんなことは全くないですよ。どうやるか考えるのが会社なのですから・・・。
本当にすごいリーダーというのは、こうやろうと言うのです。そしてみんな本気でそうだと思うのです。そしてどうやるか、みんな本気で自分で考えるのです。考えるチャンスを与えて、行動するチャンスを与えるのがリーダーだから、今自分ができることを並べて、このうちどれをやりましょうかと言ったら、それはみんなお客様じゃないですか。人を信用していない証拠だね。やはり面白い仕事ができないのです。
どんなに不況になったって、大変になったって、優秀な人というのは何を求めて仕事をしているかというと、やりがいを求めて仕事をするのです。優秀な人は決してお金ではありません。やりがいを求めて仕事をしますから、やりがいのある職場へ、職場へと移っていくはずです。やりがいのある職場というのはチャレンジングな職場だということです。ですからやはりチャレンジングな環境を与えることが大事なのです。社長自身が全部設計図まで分かっていて、こうすればいいと分かっているものだったらどこにやりがいがありますか? ないでしょう。
ですからこういう時というのは、人々の気持ちもよく分かって、お客さんの気持ち、世の中の気持ち、家族の気持ち、社員の気持ち、取引先の気持ち、みんな分かった上で、これだ!というものを出さないとだめなのです。この目標と言うと、みんなだんだん「そうか、それはすごいな」、「それは是非やってみよう!」という話になるのです。
こういう仕事をして見ていると、日本中に元気の良い人はたくさんいます。新しい技術でも、新しいやり方でも、それは随分いろいろあります。ですからあとはこれをいかにまとめていくかではないんですか。今から、ゼロから開発しなければならないものよりも、今既にあるものをまとめるだけでも、相当すごいものができると思いますよ。
例えば東海道新幹線というのは昭和34年から建設が始まり、昭和39年に営業運転を開始します。たった5年でできていますね。でもあの5年間に新しく開発したものというのはあまりありません。実は東海道新幹線を造った技術、思想というのは明治時代からずっとあって、開発とか、研究とか、用地買収もずっとやっていたのです。そして最後にそーれ!で造ったのが東海道新幹線だったのです。だからあれはすごくて、あのシステムというのはいまだに変わっていません。もちろん中の機器などは新しい装置に変わっていますが、システムは全く同じです。それはすごいです。昭和39年以来いまだに何も変わっていないのです。ああいうことができるのです。
ですから経営者、リーダーというのはどこを見なければいけないかというと、要するに金をかけても何をしてもできないものはできないので、そうではないのです。いろいろ散らばっているものをいかに上手に統合するか。これが勝負なのです。そして統合できるかどうかは、みんながその気になるかならないかだから、みんながその気になるところを選んでやっていくのです。お客さんもその気になる、家族もその気になる、取引先もその気になる、社員もその気になる、みんなの気持ちがちょうど合うところを上手に見つけるのが、こういう時のリーダーのいちばん重要な仕事です。どうやってやるかは集まったメンバーでやればいいのです。だから非常にチャレンジングな職場が生まれるのです。
こういうのは改善とか衰退してしまった職場だとなかなかイメージできません。考えるのは経営者で、行動するのは社員。
経営者が行動するまで社員が動かない。これがアメリカとかヨーロッパの国が衰退した最大の理由です。それではないことをやったのが80年代の日本です。たった20年前の記憶を呼び戻せばいいのです。そんなに昔のことではありません。
要するにみんなあまり心に嘘をつかないように仕事をすればいいのです。心に嘘をつかないように仕事をすればいいのです。そうすれば元気が出てきます。今、心にもないことを言わざるを得ないし、心にもない生活をしなければいけないからみんな元気がないのです。もっと本音で話をしなかったら無理ですね。
みなさん、組織の中でちゃんと忌憚のない話ができていますか? 結論の出ない会議なんかをちゃんとやっていますか? 会議は結論を出さなければいけない、30分で何か結論を出す。そんなことばかりやっているから、ろくな決定ができないんですよ。
二十年前とかをよく思い出してください。居酒屋とかに行って、結論の出ない社内会議を毎晩やっていませんでしたか? 昔は建て前の職場であっても、やはりそれ以外の所でああしよう、こうしようと仕事の話を一生懸命していたものです。そういう下地があるからこそ、30分の会議でみんながそうだと思う結論が出るのです。
それを水面下のそういう調整を抜きにして30分で結論を出そうとするからたいした結論が出ないのです。形ばかりの結論だから・・・。そんなのやったって全然パワーが出やしない。そんなことやったって全然だめです。
今、酒を飲んでやったりするといろいろ問題がありますから、そうではなくたってもっとやり方があると思います。もっとヒューマンにいかないと・・・。ヒューマンにいかなかったらだめです。アナログの時代だから、人間そのもの同士でいかないとだめです。人と人との付き合いを大事にしないと・・・。
ですから大きな人数で一度にやろうとしても難しいですから、やはり小さなグループに分けて、それぞれみなさん考えていくようにしていかないと・・・。
人の付き合いを避けるような組織になってしまったら難しいですよ。基本的にこれから攻めていかなければならないわけですから、攻めるための体制づくりというのはそういうことを言うのです。どうやっていいか分からないから、とにかくこれをやるんだとみんながその気になっている目標をしっかり作っておいて、まず社内は人の輪を作ることです。人の輪というか、人の絆を深めることです。仲間を深めることです。

よく、変革期は統制のとれた組織が大切だ、変革期こそ統制のとれた、軍隊の組織が大事だと言いますが、あれは統制という言葉の意味にもよるのですが、だいたいそうではありません。言われたことをピシッとやる、一つの間違いもなく言われたことをピシッ、ピシッとやる人たちが集まっている組織は、実は変化に弱いのです。本当に弱いのです。なぜだと思いますか? 理由は簡単です。言われたことをピシッとやる。余計なことは何もしない。手早くやる。言われたとおりピシッ、ピシッ、ピシッと動くような人たちが集まっている組織は、しかもあまり横の絆というのがなく、とにかく上下関係がピシッとしている組織は変化に弱いですよ。見ているとだいたいそうでしょう。ひっくり返る前というのは上がワーワーワーワー言って、下はこんなになってやっているでしょう。なぜだと思いますか?
変化が激しくなると、当初決めたやり方でうまくいかないことが多いのです。次から次へとやり方を変えていって、新しい情報を元に新しい戦略を練り直し、試行錯誤の繰り返しになります。
上から言われたとおりにやって、それで評価する組織だと、1回やってうまくいかなかったらみんながっかりしてしまうのです。言われたとおりやってうまくいっているほんのわずかな間だけは元気なのですが、それでうまくいかなくなった時、まず上に情報がいかないでしょう。上に情報がいかないので、上は無理矢理やれと言います。そして現場は矛盾の塊でしょう。やっている間に、今度中でだいたい利害相反が出てきます。だから言ってみれば抵抗期みたいに内部でどんどんエネルギーを消費してしまうのです。そうすると攻めていかれない。
だからむしろ反対です。難しいことを言わないで、やる気があって仕事のできる人たち、やる気があってなおかつ現場が分かる人、やる気があって現場で仕事ができる人が集まって、ああでもない、こうでもないと言っている組織の方が結局変化の時は強いのです。
特に今みたいな時は変化というのはすごいです。どこまでいっても山があるように見えるのです。したがって、ちょっと考えて、これでパッとやって、さあどうだ・・・。そんなものではありません。そんな甘いものではないから、いつもフィードバックしながら考えて行動しなければいけませんから、やはり人間的なヒューマンな組織でなかったら絶対に乗り切れません。
だから何と言うのかな、大きい組織はだんだん小さくなっていくのではないですか。この十年間、何でも大きくするのが世界中の流れでした。構わず大きな会社を創ってしまう・・・。あれはもう終わりです。あんなんじゃ絶対にうまく回るはずがありません。だからこれからもっと小さく割って、顔の見える範囲でどうしようという人たちが動くようにやっていかないと難しいですね。

同時に値段のことで言うならば、これからは適性利潤をちゃんといただけないと難しいですよね。だから値段を決めるということも一つチャレンジングなことです。
今まではデフレの時代が長く続きました。値下げをしていく時代でしたよね。安ければ売れるみたいな話がありました。
覚えていますが、十何年前にダイエーが1缶100円のビールを売り出しました。あの100円のビールって、あまり飲んだことのないようなビールでしたね。どこから持ってきたのか知りませんでしたが、当時不思議な味がするなと思って飲んだのをよく覚えています。
私も渋谷にずっと事務所がありますが、渋谷辺りでお昼ご飯といったら、今から15年ぐらい前は1000円は下らなかったな。それが7、8年前に500円になりました。牛丼屋に行ったら230円ぐらいとかになりました。だから4分の1ですよね。いや、それはやっている方は大変だと思いますよ。1人1000円取るのと250円取るのとでは全然違いますよね。
大阪なんて行ったって、タクシーは5000円を越えたら半値でしょう。あれじゃ夜一生懸命頑張ったって・・・。あれは大変だと思います。
でもやはり安くすると人が来るのです。あるいは来たのです。安くすると人が来た時代があったのです。
経団連のものの言い方なんかも、見ていると何を言っているのかなという思いがします。見ていると、ゼロ金利でリストラして利益を出していた人たちが何か威張っているのではないですか。
ゼロ金利ですから、300万円借金したって金利はゼロです。3兆円借金したって金利はゼロですよ。そうしたらどっちの借金をした方が有利ですか? それは3兆円借金をした方が有利ですよ。だからでっかい資本の所が構わず天文学的金額の借金をして何でもこしられてしまえば、それは他はたまったものではありません。それでゼロ金利なのですから・・・。でっかいものを造ってしまって、今度はリストラでどんどん人のクビを切ってやれば、多少需要が持ち上がればそれは儲からないはずがないですよね。それで現場は非常に忙しくなる。
よく見てください。そういうことをやっている経営者が、自分の経営力はすごいんだと自慢していることがよくありませんか? よく足元を見てください。
それは終わっているのです。もう完全に終わっています。金利が上がってきましたよね。もうこういう時代ですから、だいたいそんな多額の資金調達ができる時代ではありません。それから物価が上がっているわけでしょう。ゼロ金利とリストラだけで利益を出すことはもうできません。労働賃金だって上がっているし、社員にあまり金を出さなかったらえらいことになるでしょう。どんどんそうやって変わっているのです。
企業で言ったら、営業利益があって、それから支払い金利があって、計上利益があります。少なくとも支払い金利以上に営業利益が出なかったらそもそも経営にならないのです。
支払い金利の重要性というのは昔はすごかった。でもこの10年ぐらい、支払い金利が限りなくゼロに近づいていきましたから、特に大きな会社はあまり気にしないですんだ。しかし支払い金利というのは大事なのです。支払い金利以上の営業利益を稼がなかったら会社は回りません。
ということは安売りだけやって大量に儲けるということはできないということです。しかも偽物が許されないわけです。本物でしょう。本物といったら量がないわけです。
例えば今回製紙会社で再生紙の偽装とかがありました。私の知る限り、この何年間か製紙会社の古紙のストックヤードは空っぽでした。古紙はみんな中国人が資源だと買って行ってしまうのです。本当ですよ。中国人が古紙を買って行ってしまうのです。もっと精子会社も本当のことを言えばいいと思うのですが・・・。「中国人が買って行ってしまうからなかったんですよ」と・・・。そうなのですよ。「古紙がないから古紙を入れられません」と言えばよかった。それを古紙が入っていますと言うものだからああいうふうになってしまったのでしょう。
ああいうのを見ていてもそうです。形にとらわれて中身を偽装すると、あとが高くつきます。あんなことをするなら、「原料がこの調子なのでこれしかできません。本物はこれしかないんです。ないものはないんです」と言えばいいわけでしょう。ないものはないのですから、それを言えばいいわけです。難しいことはないのです。
そんな感じで、結局本物の時代になってくると量はそんなに揃わないのです。そして値段は高いのです。量は揃わないし、値段は高いです。
だからまず自分の所で本物を仕入れられる実力がなかったら、まず根本的に無理なのです。本物を作っている人から「おたくは良い。おたくにおろしてあげるよ」と言われる、その実力と評判がなかったらまず難しいです。そして本物を見極める目がなかったら難しいのです。だから自分の会社で本物を作っていないと、本物に接していないと無理なのです。
だから儲かるからという商売の仕方は100%無理なのです。儲かるから何でもやっていいというほど、今は甘いものではありません。とにかく品質の見極めができなかったら、品質を作れなかったらどうしようもないのです。だからまずその品質について相当な目利きと実力を持っていないと、そもそも利益を作る基盤が整いません。

それからやはり販売管理費の部分です。販管費で言ったら、人件費に関してもそうですが、やはり物価上昇率と同じぐらい上げていかないとこれからなかなか難しいですよね。特に優秀な人はなかなか揃わないし・・・。だからせめて物価上昇率と同じぐらいに上げていくためには、やはりそれなりに攻めていかないと難しいと思います。新しい商品、新しいお客さん、攻めていかないとどうしてもジリ貧になってしまいます。
ですから冒頭申し上げましたように、今、新商品や新しいマーケットが続々と出てきていないとだめなのです。今からそれをどんどん出していかないと攻めになりませんから、やはりそのへんをやっていかないと難しいのではないかなという感じがしますね。
名古屋の方のトヨタの下請けさんなどは、最近は飛行機の部品と作るのです。ボーイングの飛行機の部品なんて作っているんですね。まあ昔から飛行機産業もありましたが・・・。ああやってみなさんいろいろ工夫もしておられるようです。
特に製造業だとグローバルな部分がありますから、そういうところも含めてあちこち目を光らせてチャンスをものにしていかないと難しいのではないかという気がします。

そしてやはり最終的には、少子高齢化とはいっても日本は品質の高さで世界に勝負できる国になっていると思います。本当に良いものは量は要らないのです。本当に良いものは量は要りませんから、そこそこの量で勝負をかけられます。それ以上のこと、それ以外のことをやろうとすると時流に合わないと思います。大きくしようと思っても、この資本市場はあそこまでくしゃくしゃになったら当面立ち上がりません。そんなに金が集まらない。
中国とインドはこれから政治の季節を迎えます。政治が混乱している間は経済はなかなか難しい。ロシアやブラジルという話もありますが、私は同じだと思います。私に言わせれば、ブリックス諸国もこれからやはり大変だと思います。だって根っこはアメリカに輸出して金を稼いでいたわけですから、昔みたいな勢いで、右肩上がりで、ロケットのように持ち上がるというわけにはいかない。
だからそれぞれみんな考えなければいけません。それぞれ考えなければいけないから、構わずマーケットを広げるわけにいかないのです。もっときめ細かくやらなければだめです。この国にふさわしく、あの国にふさわしく、きめ細かくやらないといけないので、とにかく急いだ経営は難しいです。
これからしばらくの間は、急いだ経営、でっかくする経営というのは難しいのです。急ぐと仕事が間違いなく中途半端になります。半年中国に行ったけどだめだから今度はインドネシアだ、それからフィリピンだとか言ったって、専門家も育たないうちに、言葉もしゃべれる人がいないうちにやったって、そんなのうまくいくはずがありません。うまくいたっとしたら偶然うまくいっただけの話です。
ですからもっとじっくり腰を据えないと・・・。うちはどこで勝負するというところにじっくり腰を据えて、5年、10年、20年、30年ぐらいのペースでいかないと、これからはなかなか評価されないのではないかと思うのです。

日本は世界で初めてバブルが崩壊したのではないかと思います。大衆を巻き込んだバブル崩壊を世界で最初にやったのは日本だと思います。ですから外国もいろいろなことを言っていますが、だいたい日本の後追いだと思いますよ。あと10年もすればヨーロッパもアメリカもガタガタだと思います。それこそ今の日本と同じぐらいガタガタになっていると思います。中国も多分同じでしょう。バブルが崩壊すれば日本よりひどいのではないですか。
だからそこまで変化が見えると思うのです。みんな同じ道を歩いているのですから、同じことをやっているのですから、同じ所でつまずきます。その時にやはり人々の気持ちは変わるのです。明らかに気持ちは変わります。
例えばさっき言ったように、日本でも若い人は貧しいからといってとにかくがむしゃらに働かないでしょう。もっと意味あることをしたいと思っているのです。特に20代はそうです。意味あることをしたいと思っている。
だから経営者は若い人の意味あることを実現できる環境をつくれるかどうかが経営の才覚というものです。意味あることを創造することは若い人でもできるけれど、それを実際にお金が回るところまでもっていくのは、これは大人の実力が要ります。大人の実力がなかったら、経済活動、会社にはならない。
何だかんだ言ったって若い人が次を担っていくわけですから、オッパッピーはけしからんとか言ったってそれはしょうがないのです。オッパッピー、オッパッピー言っている子供たちが、やがて目鼻がちゃんとついて、社会人になって、会社を担うわけです。それは初めから排除しても始まりません。あの人たちが元気になれるようなことをを考えていく以外に方法がないでしょう。

それから国というものも随分変わってきます。日本国の国益なんて言ったって、特に経済のことで言ったら一つにならないのです。都会と地方が違うでしょう。北国と南が違うじゃないですか。道路が整備されている所と整備されていない所では全然違うじゃないですか。だから経済の面で言って、国益を一つにしようなんていうのは難しいのです。一つになったのは田中角栄の時ぐらいまでのものです。あるいはIT革命ぐらいまでのものです。
これからはそれぞれです。この地域はこの地域、あの地域はあの地域、それぞれ何かやりたいことがあって、目指すべき目標があるのでしょう。今、九州の方は大陸から工場を戻してきて、製造業基地として頑張っています。あるいは農業、果物で頑張っている地域もあります。それぞれみんなやり方があるので、一律に何か一つのやり方を全国に、全世界にと言っても、帯に短し襷に流しでなかなか商売が安定しないと思うのです。
むしろ地域ごとに、その地域のやり方を活かして、というふうにやらないと難しいと思います。

リーダーシップの言葉の中にも、サーバントリーダーシップという言葉があるのをご存知ですか? 「サーバント」というのは召使という意味です。召使のリーダーシップという言葉があります。これは何もリーダーが自分を意図的に卑下して言う言葉ではありません。要するにいちばん大事なのは現場だということなのです。現場がいちばん大事で、現場をサポートするのがリーダーシップだよ、という考え方です。20年前の日本人と全く同じことを言っています。あれはサーバントリーダーシップというのです。
結局あれでやらないと難しいのです。お客さんが何を考えている、どこに新しいものがある、どこに新しい商売の種がある、どこに金を持っている人がいる、どこに困っている人がいる、何をしたいのか。この本音の話を誰が知っているのですか? それは現場の人が知っているのです。
なおかつ現場の人はやる気がなければだめです。例えば営業マンで、数字に追いまくられていて、もうかなわん、かなわんと・・・。「この数字に到達しないとボーナスは出さんぞ!」と言われて、死にもの狂いで下落するマーケットに突っ込んでいく営業マンなんて悲愴なものですよ。客先に行ったって「とにかくかって下さい!」、これだものね・・・。お客さんと話ができると思いますか? お客さんのニーズなんか聞く余裕なんてどこにもありません。「買ってくれ、買ってくれ。」それがだめなら今度こっちへ行って「買ってくれ、買ってくれ」でしょう。何の情報も入ってこないですよ。
昔からできる営業マンというのは決まっています。のっけから商品の話はしません。「今日は天気が良いですね。おたく、車買ったんですか? 随分新車が並んでますね。あれ、どうしたんですか?」「金ができたんだ」と言えば、「なんで金ができたんですか?」とかね・・・。「昔いたあのお嬢さん、いないけどどうしたんですか? お辞めになった? 定年退職? ああ、そうですか。どこへ行かれました?」とかね、そういうふうに会話しているじゃないですか。それで、この会社は傾いているなとか、この会社は上り調子だなとか・・・。あるいは社長のぼやきの話を聴く。「この間飲み屋に行ってこんな話があってね。いつも来ている飲み屋の友達がいないんだ。なんでいないか聞いたら夜逃げしたらしいんだ。かなわないよな」とか・・・。そうか、この辺まで不況がひたひた来ているのかと、全部情報なのです。
ですからやる気があって余裕のある人が仕事をしていると、情報なんていくらだって集まってきます。そういう情報というのはさっき言った非公式の会話の中で全部出てくるのです。お客さんと営業マンとの非公式の会話、営業マンと経営者、リーダーとの非公式の会話、そういう中に全部出てくるわけです。だからそういう話を聴いていればよく分かるわけです。こっちの話とあっちの話をつないでみようと思えば、それが商売になるでしょう。そういう力がサーバントリーダーシップというやつです。要するに現場がうまくいくように後ろでアレンジするのです。
難しいことは何もありません。二十年前まで日本はやっていたのですから何も難しいあことはなくて、ちょっと前までやっていたことです。

会社はどこで価値が生まれるかということを考えると、会社で価値が生まれる部分は現場なのです。現場で価値が生まれるから、現場が衰退したら絶対に値上げはできません。現場が衰退してしまったら、絶対に付加価値の高いものは売れません。
例えば水1杯だって、ホテルで出そうと思ったら蝶ネクタイをした人が出してくるでしょう。水1杯だって出し方があるわけです。全部そうです。全部場所によっていろいろ違いがあるわけです。ですから一律に何でも安く、安くなんて、それはとんでもない話ですよ。
みなさん、最近東京に来て美味しいものがないのにお気づきでしょう。格好ばかりで美味しいものがない。味の分かる人ならよく分かると思いますよ。
今日も昼、品川へ行く用事がありました。品川なんて駅の向こうにビルがたくさん並んでいるんですね。あれは迷路みたいですね。いや、三菱銀行に行きたいと思ったのですが、なかなか着かないのです。あっちだ、こっちだ行ったって、階段なんかありゃしない。上がって、下がって、食堂に入ってトイレに行こうと思ったら、トイレは外だというわけです。外だといったって簡単にないのよ。だれがあんなものをつくるんだと思います。そして出てきたら飯がまずいのよ。値段は一人前なのだけれどまずいのよ。まずいというのはどういうことかと言うと、そこらへんにあるのと同じものなわけです。冷凍をチンしたような魚の煮付けと、まずい米を炊いたご飯と、レトルトにお湯をかけたような味噌汁と・・・。それでいっちょまえの口をきいて出してくるわけです。別に悪いとは言わないけれど、こういうものを美味しいという人たちがこんなに増えたのかというのが情けなかったですね。
東京も政治と経済と文化、三つの中心でしょう。全部堕落してしまったのです。ホリエモンみたいなああいう成金さん、成金さんは文化が分からないのよ。成金さんは文化が分からないから、格好だけになるわけです。料理屋もみんな成金に合わせた商売に変えていってしまったでしょう。政治もそれに合わせてしまったのだもの、どうにもなりません。
あんなことをやったら、恥ずかしい話、本当に未来がなくなってしまいます。本物が残っていないのです。みなさん、あんなことをしてはだめです。あんなことをやっていたら絶対に値上げなんてできません。永遠に値上げなんてできませんよ。まずいんだもの・・・。上手いものを食っている人は、これはまずいと思います。
だからそんな商売をしたら絶対にだめです。ここにしかないものを狙っていかなかったらどうにもなりません。
ですから外食産業でも、今値上げできている所と反対に値下げしている所があります。値下げしている所なんか一発アウトです。この期に及んで値下げしなければ客が来ないようでは、もうやめた方がいいね。やめた方がいい、本当に・・・。この期に及んで値下げしなきゃ客が来ないようではやめた方がいい。
そんなことをしているなら、まだ余裕があるうちに、実力が残っているうちにもっと攻める商売をやったらいいのです。もっとうまくいくところ、もっとちゃんとしっかり値上げができて・・・。値上げといっても別に人の足元を見るという意味ではありませんよ。少なくともコストは回収して、多少なりとも賃上げができるぐらいなところまでのお金をいただける商売をやるべきですよ。何か実力はまだ残っているのだから、実力とやる気が残っているうちに形を変えていかないと・・・。やったって、やったって値下げの嵐でどうにもならないということをやっていったら、みんな元気がなくなって、朦朧としてきて、何もなくなってしまいます。エキスが抜けてしまいます。そこまで放っておいては絶対にだめで、途中で手を打って変えていかないといけないと思いますね。

ガソリンの暫定税率、今国会で大騒ぎになっていますよね。私はどちらが良いかあえて申しませんが、基本的には、従来から日本では双方金に困った時にはどっちが譲歩するものだと決まっていましたか? 双方金に困った時に譲歩するのは上なのです。それを仁政といいます。「仁」という字があるでしょう。にんべんに「二」と書きます。あれがそうなのです。上も下も金に困った時に最初に譲るのは上なのです。最初に上が譲ると、下は分かって、さあやろうという気になるのです。仁政、仁の政治というのはそういうやつです。
例えば二宮尊徳ってみなさんご存知だと思いますが、あの人は幕末に藩政改革をいろいろやった方です。あの人の改革なんてすごいですよ。まず藩主に会いに行きます。藩主に会いに行って、藩主の精神が悪いとあの人は引き受けないのです。「何かあんた、藩政改革できるんだって? よろしく頼むね。」こんな藩主だったら絶対にやらないのです。
まず藩主に何を要求するかというと、ここまで藩が衰退して赤字になったのは自分の責任だと思っていない藩主の所へは、あの人は一切行きません。要するに土地もあって、農民もいる。種もあって、植えればちゃんと実もなる。なのになんで藩が赤字なのか。それは種籾を活かしていない、土地を活かしていない、農民を活かしていない、経済を活かしていない。活かすことができないから、うまくいかなくて、金が儲からなくて、財政が赤字なのでしょうと・・・。これが分からない人の所はいくら改革をやっても何の意味がないと、あの人は全く行かないのです。
この辺だと日光の今市に尊徳神社があります。あそこの資料館に行くと、いろいろな所の藩主や旗本たちから助けてくれ、改革に来てくれと言われて断った手紙がこんなにありますよ。綴じてあります。手紙を貰うのは好きだったようです。断るのだけれど手紙を貰うのは好きだったらしく、こんな束ねたのが今市の神社に置いてあります。
そうなのです。経営が悪い。政治が悪い。みんな金がない。要するにリーダーの責任なのです。人の力をちゃんと活かしていない。思いをちゃんと汲み上げていない。土地を活かしていない。自然を活かしていない。種を活かしていない。活かすことができなかったリーダーの責任なのだから、まずリーダーが謝ってごめんなさいと金を払って、余裕とチャンスを与えて、そしてみんなでもう1回やり直そうとやるとうまくいくのです。
ですから今みたいな時は、暫定税率をどうするかなんていうのは、そういう原則で言ったら答は分かると思います。そういうことができる人たちかどうか・・・。あの自民党の人たちは、仁なんて何のことか分からないのではないかと思うのだけれど・・・。それはともかく、そんなものですよ。

こういう時、経営者を見てください。どこかの英語学校ではないけれど、やらずぼったくりの安い給料で、トップだけあんなハーレムみたいなことをやっていたら誰がついていきますか? みんなが豊かになった上でならいいですよ。それが1人だけやっていたら・・・。
今、お金を使うといったらどこに使えばいいと思いますか? みなさん、これは自分の会社でちゃんと方針を立てなければだめですよ。人材に使う。設備に使う。技術に使う。市場開拓に使う。金の使う場所をちゃんと考えておかなかったら・・・。攻める場所というのはそうでしょう。金を使うには、手金を含めて、金を使ったらそれがちゃんと実にならなければだめでしょう。金を使ったら実にならなければいけないのです。かまわず金を使ったって、霧吹きで水を吹くようなことをやったって何にもならないでしょう。だめなのです。
お金は戦略的に、ツボというところに使わなかったら絶対にだめですから、金の使い道ほど重要なものはありません。金を貯めようとか、増やそうと思ったって、こんな禁輸の状況ですから難しいです。そうじゃなくて、こういう時は金は上手に使うのです。少ない金を上手に使って、最大の効果を出すのです。これが日本の昔からのお家芸でしょう。
日本は昔からヨーロッパやアメリカに比べたらはるかに小さな資本ででかい仕事をする国です。鉄道の線路がよく言われます。サーカスみたいだと言われます。この貧弱な設備でよくこれだけ列車を動かしますねと・・・。でもそれが日本のお家芸なのです。
例えばホッチキスというのがあります。ホッチキスというのは日本はこうやってやります。最近少なくなりましたが、アメリカのホッチキスって知っていますか? こんなでかいので、紙を挟んで上からバチンと叩くのです。不器用な奴だと思います。あんなでかいのが置いてあって・・・。小さいのでちょっとやればプチッといくのにね。
一事が万事そうなのです。少ない資本をいかに上手に活かすかですから、金の使い方というのもよく考えればいいわけです。何もでかいものを作ればいいというわけではないのです。
むしろ技を磨いて・・・。日本はこの技が大事なのですから、技を磨いて、少ない資本をさらに引き立たせるところに日本の良さが出てくるわけです。そういうのが昔からの日本人の強みですから、ですから金の使い方は今本当に大事です。
ですから金の使い道をよく考えて、少ない金を上手に投資していくのです。投資して、さらにその上で改善をやらないと絶対にうまくいきません。どんな設備を入れたって、改善活動をやらない限り100%失敗します。それは保証できます。なぜかというと、設備なんてあっという間に老朽化するのです。ノウハウはあっという間に盗まれるのです。改善を続けていかない限り必ず失敗します。改善ができる風土がまずできていないと話になりませんので、ご自身の組織がどうなっているか、それはもう1回点検していただきたいと思います。

そしてこれからリーダーシップがどんどん進化していく中で、日本もアメリカも、日本は中央も地方もそうだと思いますが、やはり消費者というか生活者の感覚が強くなっていくと思うのです。いろいろな所で生活者の目線は非常に強くなっていくと思います。
生活者というのはリーダーがいないのです。声なき声です。声なき声だから、交渉するといっても難しいわけです。偽装問題でも何でも、「別に食中毒が起きていないのだから大丈夫じゃないか」と言いたいと思ったって聞いてくれる人がいないのです。すなわち消費者というのは本当にリーダーがないのです。ですから声なき声を聞いて、声なき声に向けて情報を発信していくのが消費者に対するものの考え方でしょう。したがって世の中に対する感度はよく上げていかないと・・・。
ですからリーダーは組織の中のトップであると同時に、声なき声といつも向き合っているんだというこの意識です。それは顧客であり、消費者であり、地域社会であり、ということです。単なる顧客だけでもだめなのです。今、顧客になっていない多くの消費者の賛同も得ないと・・・。少なくともそういう人たちから反感を得てはいけないということです。
このへんの感覚を言うと、本当にリーダーの器量の話になってきます。今、自分の懐に金が増えたか、減ったか。これだけ見ている人は経営なんかできません。リーダーシップをとれません。じゃあもう一つ話を進めて、自分の商品まで視野がいく。「これは俺の商品だ。これは絶対だ。買わない客が悪い。」商品まで目がいく。これでもまだ大変です。自分の商品までしか目がいかないと、お客さんを見つけるのはなかなか大変です。
今うまくいくのは、お客さんのところに目がいっている人です。あのお客さんは何を考えているの? 何を欲しいの? 何が心配なの? 何をしようとしているのかな? こういうふうにしたらいいんじゃないの? お客さんがよく分かっていて、お客さんに合わせた商品を持っていくと随分商売はあります。
さらにもっと外側です。今度は一般的な消費者の目線とか、時代とか、環境問題とか、ずっと視野を広げていくと、経営はもっと安定します。ですから今の時代は、リーダーはどんどん視野を広げないと大変なのです。いきなり潰れるとは申しません。でも大変なのです。要するに見ないでやっていると、いろいろ摩擦が大きいのです。だからなるべく大きな視野を持って、その中の自分だという意識を持って経営していかないと、これから何をやったって大変です。

これだけ乱れていると言えば乱れているのだけれど、むしろ消費者の力はどんどん強まっています。この消費者はいくつか求めているポイントがあります。
まず健康です。今、健康を非常に重要視しているので、健康を阻害するような商品やサービスはやはり極端に嫌がります。この健康は基準がありません。一定の品質基準さえ満たしていればいい、そんなものではなくて、非常に感覚的なものなのです。ですからこれを相手にするのは非常に難しいです。鬩ぎ合いの部分も含めて相手にするのが非常に難しいです。でもとにかく健康を求めています。
それからもう一つは持続可能性というやつです。Sustainability、続くということに対する価値を非常に求めています。尊敬という言葉は長く続くことからだいたい生まれてくるでしょう。ですからやはり消費者も今みたいに明日をも知れない時代では嫌なのです。やはりもう少し安定してほしい。明日は会社も国もどうなるか分からない、年金もどうなるか分からない、こういうのは嫌なのです。もっと安定してほしいと思っているわけです。ですから企業活動も、健康とか持続可能性に対してプラスの貢献をするような仕事をしていくということがすごく大事ですよね。
だから全部が壊れて滅茶苦茶になっているわけではないと思うのです。消費者の力は強くなっているし、少子高齢化で良い物を少しという方向に動いてきているし、健康や持続可能性に関する人々の意識は非常に強いものがあります。そういうものに向けて我々は何をしていくんだろうと考えて、我々の持っている実力を活かしていくということがすごく大事だと思います。

さらに仕事をこれから発展させていこうと思ったら、やはり人間の生物と同じで意思と遺伝子と二つ要るのです。生物は思いと遺伝子の二つでできているでしょう。
まず思いというのは企業理念です。何をやろうかという思いです。ああしよう、こうしようという方向性です。思いがなければ何にもなりません。ただ単に今日の飯を食うためにここにいるという話になります。ですから「なんでこの仕事をしているんですか?」「生活のためですよ。」これがいちばんまずいですね。生活のためなら何でもできる。逆に生活ができなくなったら辞めてしまいますから・・・。どうしていいか分からなくなります。生活のためという発想では、もう企業、組織の運営は非常に難しいのです。それを越える何かをもってこないと・・・。最初から生活のためと言ってしまったら、今は何をして言いか分からない時代です。
二つ目の遺伝子というのがあります。要するにこれは実力という意味ですよね。あれもできる、これもできる、これもやったことがある、これも経験したことがある、これも知っている、いろいろな情報です。これも大切です。経営者、そして会社の中にいろいろな実力が蓄えられていれば、次はああしよう、こうしようと手を打てます。思いと遺伝子、生物と同じで両方要るのです。
不況の時はこの遺伝子を作っていくのです。育てていくわけです。不況の時はいろいろなことにトライして、いろいろな経験を積んで、社員にもいろいろなことをさせて、できることを増やしていくのです。そしてこれがいよいよ商売の新しい幹になると思ったら、金をつけて、人を少し集中投資して、その思いに向けてやっていけばあとの幹ができるわけです。
そんなようなものなので、これからずっと長く世の中動くとしても、そういう意味で思いと遺伝子は大事です。特に今見ていると、遺伝子が衰退している組織が多いです。言われたことはできるのだけれど、それ以上のことは分からないということが多くて、これはなかなか難しいです。
ですからやはりアナログの時代に立ち返り、いろいろやっていかれたらいいと思います。まだまだアナログの実力を持った人が世の中にはたくさんいますから、そういう人たちから十分に継承して、どんな事にも対処できる、そういう力を持っていただけたら何でもやりようがあります。

やはり今年は攻めていかないと難しいですよ、みなさん。本当に・・・。今年守りに入ったら流されますよ。何でもいいですから、とにかく自分がここだと思う方向に向けて行動していかないと難しいです。新商品を出す、新規顧客の開拓、あるいは値上げ、あるいは調達先の変更、お客産の選別、事業の集中と選択、何か今年は攻めていかないと、ただ単にじーっとしているだけだと、年後半から景気は回復するなんて言って何もしないで景気の回復を待っていると何にもないのではないかと思います。流されてしまうと思うのです。それは非常に危険なことだと思います。
世の中の大半は今年はしりもちをついていると思います。大抵の人たちは今年はしりもちをついてしまいます。へたれこんでしまうと思うのです。だって多くの人はたいしたことないと思っていますよ。誰に聞いたって、たいしたことない、何とかなるとみんな思っていますよ。これは何ともなりません。
ですからみなさん、今年は行動したら誰も邪魔する人なんかいませんし、競争なんかありませんから、今年はスパートする良い年です。こういう時に前に行かなかったら、いつ前に行くのですか? みんながやってきてからやったら、みんなが参入してきてからやったら、全部バブルになるだけでしょう。みんなの顔色を見ながら仕事をしていてはだめなのです。みんながよそを見ている時に前に向かっていかなかったら、いつ経営なんか安定すると思いますか? 今みたいな時でなかったら絶対に前に攻められません。今年は退いてしまうのです。ですからどんどんいろいろなことをやってみてください。

それからやはり地域を大事にしてください。今言ったように、これからは国も経済に関して言ったら国益は一つになりません。みんな違います。実にまちまちなので、国単位で一つの国益というのは難しいのです。したがって人の教育にしろ、何にしろ、地域が良くないと難しいです。
教育なんか典型的です。ノーベル賞級の人間を何人育てようという教育よりも、むしろ反対なのです。うまくいかない人を立ち直らせる教育を徹底した方が地域は強くなります。循環なのです。ボトムアップをちゃんとする教育の方が絶対に地域は強くなります。特にこれからそうです。
エリートだけ選ぼうという教育は、今の若い人がまず耐えられないし、それをやっていても全然広まらないのです。むしろ反対です。あそこの地域に行けばうまくいく。誰でも仕事がある。読書き、そろばんから始まってそこそこきちんとできるという教育の方がうまくいくのです。変なエリート主義でやると結局子供はバラバラで、就職した後もバラバラになるのです。ですから地域というのはわりと弱者に優しい方がうまくいくんですよ。
弱者に優しい地域からやはり強い会社は出ます。弱者に優しい地域はいろいろな人が来れるのです。そうすると裾野が広がります。ですからこれから特にそうじゃないかな。弱者に対して優しい時代ですから・・・。
企業は前に向かって攻める所だとしたら、地域は守りを固める所です。弱者が守りを固めて、言ってみれば人の循環を良くする所が地域ではないですか。そうやって役割分担を持って、攻める企業と守る地域、それぞれが役割を果たしていくと、その地域から良い会社が生まれるという感じではないですか。
ここは水戸ですが、水戸らしい会社ってありますか? 水戸らしい会社。「水戸の梅」は有名ですね。納豆も有名ですね。水戸の会社って有名ですか? 京都に行くと京都らしい会社があります。いくつもありますよね。水戸らしい会社ってありますか? 本当はないといけないんですよ。本当はあるはずです。昔はあったはずですよ。
地域経済が本当にその地域に根ざしていくと、その地域らしい会社というのが当然出てきます。それでいいんです。だから誰も真似ができないのです。だから誰も真似ができなくて、安定した持続可能な経営が可能になってくるのです。
したがってこれから先は元気の良い経営者と、地元の方々が一緒になって、みんなで盛り上げていくことがとても大切です。こういう勉強会をどんどん活性化させていただいて、お互い助け合っていただいて、情報公開していただいて、どんどん攻めていくことが大事ではないかなというふうに思っています。

というところでこの辺で10分休憩して、あとは質疑応答にします。とりあえず私のお話はこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

ではご質問にお答えしていきたいと思います。前半の部分に対するご質問と、後半の部分に対するご質問がありますので、前半の方からいきたいと思います。

相場の動向はいかがですか、という話です。こういう話で迂闊に上がるの、下がるの言うと、あの時ああ言っただろうと言われるので気が引けるのですが、総じて言うならば、こういう時というのは乱高下なのです。相場って売っても買っても損をするのです。売っても買っても損をする時なので、相場はやらないのがいちばん良いです。本当にそうなのです。
弱気相場という言葉があります。金融市場には、特に株式市場には強気相場と弱気相場というのがあって、強気相場というのは下がると買い注文が入ってくるのです。下がると買い注文が入ってくる時は強気相場といいます。そうすると下がるとまた上がってきます。弱気相場というのは上がると売り注文が増えてきます。上がると売り注文が出てくるのが弱気相場で、今典型的に弱気相場です。
3月末に向けて、みなさん、日本なんか大変です。日本の株なんて大抵外人が売ったり買ったりしています。今日も何か安いですよね。百何十円安くて終わっていますね。要するに日本の要因ではなくて外人が売ったり買ったりしているから、日本人は振り回されているわけです。これでどんどん3月末に向けて下がっていってごらんなさい。どうなると思いますか? これはかないませんよ。株高になったのは外人のせいだ、想定外だと言ったって経営者はすまないでしょう。とりあえず利益を出すために何か売ってくるのです。
細かい話になりますが、弱気相場に入ったら上がったり下がったりがすごいから一方的にいかないのです。上がったり下がり、上がったり下がりだから、先物なんかで売ったり買ったりしてみんな持って行かれてしまいうのです。同時にマーケットがなくなってくるのです。したがって流動性の低いものは全く売れなくなってしまいます。
したがってこういう時というのは小さい株とか、新しい会社の株というのは売りたくても売れないのです。だから怖いのです。本当の意味で塩漬けになります。株の塩漬けというのは売れるのに売れないのではなくて、売れなくなるものです。あれが塩漬けというやつです。新しい会社、業績の悪い会社、それから小さい会社の株は売りにくくなります。そういうのは外してしまうことです。
業績の良い会社というのは結構暴落するのです。なぜかと言うと、業績の良い会社の株は売りやすいからです。資金繰りをつけるためにみんな売ってくるのです。売れるものしか売れないでしょう。売れるものしか売れないから、安値でも買う人がいるから、業績の良い会社の株というのは結構売れるのです。だからよく売られるのです。くれぐれも気をつけてください。

それから為替については、今ドル安が進んでいます。ユーロも例のフランスのソシエテ・ジェネラルの巨大損失が見つかって以来、結構下がってきました。でも円高の流れなのです。円高ドル安で、だからユーロがどう転ぶかです。ユーロがこれから強くなるのか、弱くなるのか。私はあまり強くならない予感がするのですが、ちょっと分水嶺にきました。
でもドルの弱さはこれはもう全然変わっていません。問題の本質がアメリカで、ブッシュ大統領が15兆円の救済なんて言っていますが、15兆円では桁が足りないのです。300兆円以上の金が必要ですから、そんな金はないわけなので政府の救済策は当てにはならない。
あるのは利下げだけです。利下げだけみなさん期待しているのですが、日本もそうだったでしょう。昔、不動産バブルがはじけて日銀が慌てて利下げしましたが、慌てて利下げをしたらだいたい手遅れなのです。だからあまり効果は期待できなくて、ドルは今年もっと売られるのではないですか。
ですから為替はご注意ください。本当にご注意ください。私はもう1回例の1ドル70円のところにつっかけて円高になると思っています。1ドル79円80銭、あれより円高になると思います。アメリカもよく今までもったと思います。

それから金とかは1回暴落すると思います。資源は全部そうなのですが、昔と随分違うところがあります。
要するに資源の値段というのはどうやって決まっているか知っていますか? 金でも、それから油でも、鉄でも、需要と供給ではありません。現物の需要と供給はあるのですが、それではあまり決まっていないのです。投機の金の出入りで決まっているのです。実は世界に元々投機なんてないわけです。元々金属とか資源はヨーロッパが自分たちで需要と供給を見ながら決めていました。ヨーロッパが需給で決めていた価格決定権を金の力で無理矢理横取りしたのがアメリカだったのです。シカゴの商品取引所に行くと、あるいはニューヨークの商品取引所に行くと、ヨーロッパで値段を決めていたものを自分たちが先物で決めているものがほとんどなのです。あれは価格決定権をアメリカが横取りにきたのです。
例えば金の現物はロンドンで決まりますが、今ロンドンの金の現物の価格決定権はほとんどありません。ほとんどがニューヨークの先物市場で決まっています。これは権力闘争をやっているのです。この権力闘争が今いよいよクライマックスなのです。
ヨーロッパの連中はアメリカをひっくり返して、もう一度自分たちの力で、現物の需要と供給で値段を決めたいと思っています。アメリカはなんとしてでもそれはやめさせたい、俺たちが決めたいと思っています。投機の力と言いますが、実は投機のご本尊はアメリカ政府そのもので、アメリカ政府は言ってみればこれを外交の道具に使っているのです。
例えば今から13年前、油の値段は1バレル10ドルでした。今よりももっと上り調子の景気の良い時になんで10ドルで、今、バブルがはじけたのになんで100ドルなのですか? 昔100ドルで今10ドルなら分かりますけどね、今100ドルで昔10ドルなのです。あれはまさにアメリカが外交の道具に使っていたからです。
先物の市場でアメリカがものすごい勢いで油を叩き売るわけです。もう現物の受給なんかあっという間にオーバーフローさせる金を思いっきり突っ込んで叩き売るのです。そしてロシアを潰してしまうのです。ロシアを破綻させて、ロシアに続く中東も破綻させて、政治の権力を取り上げたのです。財産を切り売りさせたのです。すなわち資源の値段が下がるから、その口座の権利を維持できなくなるから、それを叩き売らせて、それを全部買い取ったわけです。それでロシアは怒って、プーチンが出て来て全部取り返したわけです。ロシアの下にはヨーロッパがいますから、ヨーロッパは昔から苦々しく思っているわけです。アメリカは何をやっているんだとずっと喧嘩をやっていて、今回そのクライマックスなのです。今回はどう見てもアメリカの歩が悪いです。現物の需要が盛り上がってきているのに資源が足りないのですから・・・。
それを先物の連中がもっとつり上げてやっているのだけれど、所詮は言ってみれば投機の金は一つなのです。だから片一方で大きな穴が開けば、上がっていた金もそこに行かざるを得ないのです。すなわち株式とか債券で大穴が開けば、結局そっちの穴を埋めるために値上がりしたものを売らざるを得ないわけです。さっき言ったように船の運賃は暴落してしまっているわけだから、値段をつり上げて穴を埋めようとして、ご本尊はとっくの昔に崩れてしまっているのです。だから連中は慌てふためいて油とか金だとかにカネを思いっきり突っ込んでいるわけです。でもそれでもなかなか上がらなくなってきましたよね。金は多少上がっていますが、なかなか上がりません。
もう少しいってごらんなさい。投機は総崩れになります。結局投機の金というのは日本から出ていったあぶくみたいなもので、中身は何もないのです。ヨーロッパは一生懸命そこまで追い詰めているわけです。今度はヨーロッパが強いです。
ですからここでニューヨークやシカゴの価格決定権を剥ぎ取ってしまって、もう一回ヨーロッパが自分たちで世界中の、特にユーラシア大陸の資源を値決めしようと思っているのです。その喧嘩だから、投機がなくなる時に大暴落するのです。
金なんかもそうです。金なんかもう一つは、中国やインドでバブルが崩壊しているから、連中が売り合わせてきます。
金というのは面白い財産で、例えば資金繰りに困った人が一晩で300億や500億の金を作れるのは金だけです。株式とか、債券とか、いわんや不動産、企業なんてものは、今日金が欲しい、恐慌で金が詰まった、今日300億、500億の金が欲しいから今日売ると言ったって絶対に売れません。ところが金塊、金の現物だけは別物なのです。金の現物というのはものすごく大きなマーケットで、ワンショット300億だ、500億だという売り注文も一瞬で捌けてしまうのです。
世界の中央銀行も、それから世界各国の投資家も、金というのはどういう時に使うかというと、いよいよ金に詰まった時に使うのです。金に詰まった時に投げ売りして、本当に投げ売りできる財産というのは世の中にそうそうありません。非常に限られたものです。それが金なのです。ですからよく見ると分かるでしょう。株が暴落した日に金が叩き売られるのです。あれはみんな資金繰りをつけにきているのです。
おそらくあれはまだまだ序の口で、これからおそらく中国人、インド人が山のように売ってくると思いますよ。まだ連中は今回のバブル崩壊で完全に尻に火がついていない。いきる、死ぬまでまだきていない。もうちょっとです。ああいうのは順番にいくのです。もうちょっとです。もうちょっときたらそれは投げ売ってきます。あれは売り原爆みたいなものではないですか。売り原爆みたいなので、こんなに売り物が出てきたぞと・・・。二十何年間高度成長で貯めた財産をみんな売りにきよったというぐらいだと思うのです。
中国というのは二十何年間高度成長一本やりです。ですから中国には恐慌を知っている経営者というのは1人もいません。不況を経験した経営者というのは1人もいません。政府のトップまで含めて・・・。だから強気にものを言うに決まっています。国家のトップから不況も恐慌もみんな知らないのです。それは強気一点張り以外に方法はないですよ。だからあんなのを信じたら絶対にだめです。
だから連中最後は夜逃げしかないのです。恐慌だとか不況だとか言葉がないのです。知らないのですから・・・。だからおかしくなったら財産を持って夜逃げするしかないでしょう。すごい国なのです。
でも結局最後は叩き売りです。思いっきり叩き売りに出てきます。金でも何でも財産は持っています。ですからそうやって叩き売りして、結局投機のポジションがなくなるのだと思うのです。今金融で投機が潰れたように、商品でも投機がなくなると思います。
そして最後はもう一回現物の需要と供給に戻ると思います。本当の財産になるのはそれからです。永遠の財産となるとしたらそれからですから、投機が剥げるまでは1回どこまで安くなるかというぐらいまで安くなると思います。値下がりしてしまうなと思う人はそれまでに売っておいた方がいいです。でも永遠の財産を持ちたいと思ったら持っていたらいいです。
例えば前例があります。80年前の世界大恐慌当時は金本位制をやっていて、国際金融市場が自由だったのです。結局それで世界が破綻を起こして、最終的にブレトンウッズ体制というので立ち直っていくのです。創ったのは1944年でしたか。あれは金本位制なのです。ブレトンウッズ体制というのは実は金本位制で、同時にその時には投機を完全に禁止していたのです。投機的な取引、金融取引もほとんど前面禁止です。外国に金を投資することも原則禁止なのです。投機を全面的に禁止にして金本位制にして、やっと立ち直ったのです。
多分今回も同じです。アメリカがずっこけるので、ドルも何も頼りにならないから・・・。そこまで持っていたら結構な財産になると思いますよ。だから発想です。どの辺までの財産と思っているかです。資金繰りをつけるための財産だと思っていたら、そこそこのところで売っておかないと、投機が剥げる時に一緒に持って行かれてしまいます。
投機が剥げるのはおそらく今年だと思います。何せ速いです。速い、速い。もうあっという間に300兆以上の金が詰まってしまっているわけですから速いので、あまりもたもたしていると売り損ないます。
それが剥げた後上がります。剥げた後上がるので、そこはプレーヤーが代わります。プレーヤーが代わるのでよく気をつけていただきたいと思います。

しかし油でも、鉄でも、銅でも、もう一回持ち上げる方法があります。それから運賃でも、もう一回持ち上げる方法が一つあるのです。何だと思いますか? 戦争です。今度は海の戦争です。海の戦争なのです。
ホルムズ海峡なんか大型タンカーは出てくる時は油満載で出てくるでしょう。あれは一列縦隊で出てくるのだそうです。ホルムズ海峡で大型タンカー、喫水20メートルあるタンカーが通れる場所は1レーンしかないそうです。だから何も戦争なんて言わなくても、イランがあそこに船を1隻持っていって沈めるだけでペルシャ湾は閉まってしまいます。はっきり言って中東諸国は全然戦争に協力しないで、アメリカ軍は今回は戦争をやろうとしたら空母でやるわけです。あんなの、よく見えますからね。戦争が始まったら蜂の巣になります。アメリカの防空システムは機能しないのです。2年前にイスラエルでアメリカのシステムが動いていていたのですが、ロシアや中国やイランのミサイルがぼこぼこ撃ち込まれてしまって全然機能しないことが分かっているわけです。しかしそれをそのまま使っているのです。ばかな話です。
でも結局何かやりそうな雰囲気があります。今頃になってネオコンの連中がまたアメリカ政府に戻ってきたりして、見ているといかにも戦争を挑発したような話がアメリカ側からどんどんリークされるわけです。
アメリカ軍が動かないと思って、ネオコンの連中はイスラエルをけしかけています。イスラエルにイランに対して先制攻撃をさせようと、イスラエルを脅かしているのです。お前、放っておいたらイランに攻め込まれるぞと一生懸命おどかしています。アメリカは頼れない。だからお前たちから先制攻撃をしろ。走したらアメリカは参戦せざるを得ないと一生懸命口説いています。そういう話がイスラエルの新聞に載るのですから・・・。あれはやりかねません。
そうすると海の戦いだというので、いろいろなものの物価が一瞬もう一回上がります。大暴騰してしまいます。でもアメリカが負けたと分かったら、今度投機が崩壊するから大暴落します。はっきり言ってマーケットはなくなってしまいます。今度戦争をやったら100%アメリカの負けです。勝ち目はありません。
ですから本当に世界はそこまで読んでドルを売っているのです。アメリカが戦争だと一生懸命ドルを売るのです。もうお終いだと・・・。売りが殺到してからでは売れないというので、戦争の話が盛り上がるとみんなドルを売るのです。そこまで読まれているから、もうアメリカはどうにもなりません。だから戦争の可能性はあります。
例えばこの辺でもそうですよ。去年十一月に中国の海軍とアメリカの海軍が睨み合ったなんていうニュースが流れたでしょう。それからアメリカの船を香港が入港拒否したなんていうニュースが流れるでしょう。ああやって海は危ないぞ、海は危ないぞと一生懸命誰かが盛り上げているのです。
悪い奴がいるのです。私に言わせれば本当に悪い奴がいるのよ。自分たちの相場が失敗して、その穴埋めを商品でやろうとして、思いの外景気の減速が速くて暴落が始まって、これはかなわん、もう一回ミサイルの撃ち合いでもして持ち上げたらいいと思ってやっているのがいるのです。本当に悪い奴だね。
そこまでみんな読んでいるから、悪い奴らがやっていることだとみんな分かっているから、世界もそんなにバカではありません。でもあれではアメリカはもうもたないでしょう。ですから乱高下だと思うので、くれぐれも気をつけてください。
とにかくいちばん怖いのは実業の会社です。実業の会社は実際にものを持っていますから、動かしていますから、価格の変動で不用意な損失を食らうとえらいことになります。ですからくれぐれもそこだけは気をつけてください。
それから仮に戦争が起こって物流が途絶えたりした場合は、日本の場合はやはり国ぐるみで考えるでしょう。日本の場合はなんとかみんなで考えるでしょう。でも中国なんかは分からないですよ。みんな夜逃げしてしまうのではないかと思います。あの国は我先に財産をひっつかんで夜逃げしてしまうのではないかと思うんですよ。あの国はこれで不況と恐慌が起きたらどうしますかね。おおいに面白いところだと思います。
ロシアは成金さんですから、今金があるので一生懸命金を使っています。資源も買っていますが、所詮その程度です。世界の覇権を考えているわけでもないし、儲かるといっていろいろ買っているのです。油が値下がりしてきたら元の鞘に収まります。油が値下がりしてきたら、ロシアも金がなくなってくるので静かに元の鞘に収まります。
でもロシアは最終的にイスラムと戦うのではないですか。私はそんな感じがします。イスラエルを本気で潰したいと思っている国の1つがロシアですからね。この間のイラク戦争も、ロシアはアメリカとイスラエルに対してカンカンに怒っていました。ぶっ潰してやると怒ったのです。
そもそもイスラエルという国はロシアの軍事力とイギリスの金で創ったのです。ところがイスラエルがロシアを裏切ったのです。アメリカと組んだわけです。ロシアの軍事力で創ったイスラエルがこの十何年アメリカと組んだわけです。それでロシアはカンカンに怒っています。潰してやると息巻いているのです。だからよく言われるのですが、イスラエルに飛んでくるミサイルはイランからではなくてロシアからじゃないかと言われるのです。
だってロシアの言うことも分かります。ここでイスラエルとか国際金融資本を潰しておかなかったら、またやられるぞというわけです。今は資源の値段が高いからいい。でも資源の値段がいずれ下がってきたら、そしてイスラエルや国際金融資本がそのまま生きていたらまた国を乗っ取られるぞ。今なら潰せる。今潰すしかない。これは彼らにとってみれば非常に真っ当な発想です。
本気でやっていますから、戦争も一旦火がついたら、もしそういうことになればですよ、えらいことになります。
でも長引く戦争ではありません。今度は決着が早いですよ。あっという間に最終決着まで決着がついてしまうでしょう。だからそれこそ原爆もあり得るという予測はあちこちであります。とにかくそれぐらいの難しいところですから、そんなものだと思っておいてください。

 それから不動産価格ですが、今超一等地が暴落中です。暴騰した所が暴落しています。その他は横ばいかやや下がっているぐらいのものです。やはりこれでまた銀行も不良債権を抱えます。暴騰してしまった所はどうにもなりませなん。だってマンションも、家も、事務所も余っているのです。本音で言ったら、もうあんなに要りません。造りすぎてしまいました。今それがどんどん顕著になってきているので、日本も特に商業用の不動産を抱えてしまった所は結構大変なことになるのではないでしょうか。くれぐれも気をつけていただきたいなという感じがします。

 それからお金の借り方の話ですが、基本的にはインフレが進んでくるので、少なくとも金利に対して払えるか、払えないか、この見極めがいちばん大事です。
 今業績の良い所は本当に安い金利で借りています。私の知り合いのある中京圏の会社ですが、この間もある銀行の人が来て、0.8%の固定金利で3年間3億円借りてくれないかとお願いに来たと言っていました。0.8%、3億円、3年間、それは悪い話ではないから借りてやったと言っていましたけどね。銀行の人は、「いや、もうありがとうございます。」優良取引先がないもので、採算割れレートなのだそうです。だからお取引いただけるだけで嬉しいと言っていたそうです。そんな感じです。ですからやはり金利なのです。金利が安くて、はっきり言ってただみたいな感じです。
 反対に、変動金利なんかでやたらに借りるとなかなか大変なことになるので、くれぐれもご注意ください。借金になると確かに借金の金額は目減りします。しかし金利が払えないと持っていかれてしまうので、やはり金利が払える体力があるかどうか、これが最終的に借金がどこまでできるかの見極めだと思ってください。
 住宅ローンもそうです。住宅ローンもやはり払いが止まってしまうと家を持っていかれてしまいます。ですからやはり金利を払える収入があるかどうか。そこが確実であれば住宅ローンは大丈夫です。でもそこが難しい時は、見送るなり、チャンスを見るなりするべきです。
 逆に言うと、本当に良い不動産を買おうと思ったらこれからチャンスなのです。良い家とか、不動産・・・。だからキャッシュを持っているべきです。何もしないでキャッシュを持っていて、本当にものすごい売り物が出てきたらスパッと買うチャンスです。こういう時、必ず超一等地を持っている人が金が回らなくなって密かに売りたいという話をし出すのです。表に出てくる前に、超一等地を持っている人たちが、もうかなわないから誰か買ってくれないかと・・・。だいたいそういう所で何十年に一度かの最高の財産が移動するのです。ですから本当にキャッシュを持って狙う人はこれからが勝負ですよ。キャッシュを持っていて、超一等地が売りに出てきたらそれは買い物です。
それぐらいのものがあるので、キャッシュを持っていろいろやる人にとってはチャンスなのではないですか。今は本当にすごいもの、何十年に一度の買い物ができる時です。
あとはとにかく金利ですね。金利をとにかく安くしておかないと非常に厳しいので、金利のコントロールをしっかりやってください。金利が高いとどうにもなりませんので、そこだけはご注意していただければと思います。

それから経済政策とか企業の合併、株券の電子化、電子マネーということですが、たいしたことはないと思います。
株券の電子化も進んでいません。あれはそれこそ特例法で、無効になる期限を少し延長するかもしれません。特例法で無効にしてしまうと、あとで民法を引っ張り出されて「そんなの無効だ」と言われたらそれっきりになります。まだ判例は出ていないわけです。無効にされた債券は無効である、無効が無効であるという判例が固まっていないのだから、特例法で電子化しなかったから無効だなんて、電子化をしていない株が山のようにあった時には難しいと思います。
ああいうのは勢いに乗ってやってしまったのですが、裁判員制度もそうですが、勢いに乗ってやってしまったのですが、本当に大丈夫なの?という話をみんなしていて、今回の暫定税率ではありませんが、土壇場になってどうしようかとなることが多いと思うのです。 
それから電子マネーなんかもすっかり定着しました。ですからこれ以上どうこうということもないと思います。今電子マネーでいちばんすごいのはJR東日本です。SUICAをやって金が余って余ってしょうがないらしいですよ。あれは前払い機能があるでしょう。だからざっくざっくキャッシュが集まってすごいらしいんですよ。あんまりキャッシュある会社だけど、強い会社だから買収の対象にならないでしょう。外人は手が出せないですね。鉄道会社はすごいですよ、金の成る山を持っているのです。
しかもあれはちゃんと機能しますからね。ピッピピッピやって、ほとんどトラブルがないですよね。よくできています。あの力はすごいね。旧国鉄というのは土木と弱電に強いのです。すごいですよ。世界中誰もあんなこと真似できないのではないですか。

それから経済政策ですが、どこかで金は出ると思います。不況ですから、今年どこかで、選挙があるにしろ、ないにしろ、多分あると思いますが、とにかく金は出ます。
おそらく日銀総裁も武藤さんという日銀の人がそのままなって、財政再建の話とか何とかいろいろ言ったって、全部棚上げで金を出すとなると思います。やはり日本の政府は追い詰められたら選挙が怖いので金を出します。その金の出し方が問題です。
私は東京の方でいろいろやっているのですが、今度金を出すのは最後の金だから、今度の金の使い方を失敗したら国は終わるから、今度金は出るところまでは決まっているのだから、出した金をどう上手に使って、どう上手に投資に回すか、これが大事だというので、いろいろみんなで知恵を集めてやろうという話をしています。
ですからいくところまでいって、金が出て、そこから何か始まるということで、そこから先は未定です。

企業の合併は見ているとあまり進んでいませんね。株がこんな形になって、むしろ大型合併はどんどん頓挫しています。ですから企業はむしろどんどん細かく分かれていく方ですね。
今、全世界株式市場がこんな調子ですから、合併して問題を吸収するということができないのです。だからへんな話、うまくいかないと不良採算部門は切捨てという感じで、会社が切り刻まれてしまうのです。だから怖いですよ。
合併による経済の整理、企業の整理が今できない状態なのです。これは当面変わりそうにないので、特に大型の企業合併は難しいというのが現状ではないでしょうか。

それからFRBもさっき言ったように、日銀も、経済政策、金融政策と言ったって、金利も上げられないし、下げられないというのが実態なのです。ですから何となくバランスを実ながら下げて、それでちょっと様子を見て、ということしかやっていないので、あまりたいしたことは起きないのではないかという気がします。

それから企業経営のことについて申し上げますと、ロハス、健康と持続可能性という言葉ですが、これはやはり根本的に定着させないと難しいですよね。やっている仕事が人々の健康に寄与しているのか。やっている仕事が持続可能性に寄与しているのかどうか。そのへんについて会社としての強烈なメッセージを持っていないとなかなか難しいと思います。何となくやっていたというのでは人が集まらないし、技術も集まらない、金も集まらないと思うのです。やはり自分たちもこういう新しい社会の一員なんだということを明確にアピールしていかないと難しいのではないかと思います。

「市場を広げることは一歩間違えると危険だと思うのですが・・・」、はい、そのとおりです。でもそれをやるのが経営者です。危険なのですが・・・。
だからどういうことが大事かというと、お客さんの話、現場の話をよく聴くことです。こういう時は決して机上の空論で、机の上で案を決めないことです。現場の話をよく聴いて、特にお客さんの話をよく聴いて、社員の話をよく聴いて、現場をよく見て、どこにニーズがあるのか、何を求めているのか、これを現場で聴かなければだめですね。くれぐれも報告書だけ読んで、テレビを見て、机の上で決めないでください。それは非常に危険なことです。
往々にして現場で決めた方向性とテレビを見て決める方向性が違うのです。今非常に大きく違うと思います。どちらが正しいかというと現場が正しいですから、テレビなんかに惑わされることはやめた方がいいですよ。

「建設設計事務所は何をすればよろしいでしょうか?」と書いてありますが、衣食住という言葉があって、衣食住はどんなに不況になってもなくならないのです。はい、衣食住は永遠に続きます。永遠に不滅です。したがって仕事はいくらでもあるはずです。金があってもなくても家はだんだん老朽化してきます。新しいものは必要です。
したがってまず良いお客さんをとにかく見つけてください。これから仕事をしたいというお客さんと接点を持つことがいちばん大事なことです。お客さんが来るのを待っていると難しいです。提案でも何でもいいです。とにかく衣食住は絶対になくなりませんから、新しい考え方を持って何かやりたいというお客さんをよく見つけて、金が集まらなければ金はみんなで調達することを考えればいいのです。
ですから何とでもやり方はありますから、とにかく新しいニーズを見つけて、そういうニーズを持っている人に、あの会社は良いと思われるようになることがいちばん大事だと思います。どんな業種でもこれは言えるのではないか、そんな感じがしますね。

企業理念の作り方ですが、経営者が作るか、全社で作るか。年度目標も経営者が作るか、全社で作るかですが、一般的にはまず経営者が下案を作って、素案を作って、みんなの意見を聴いて最終的にまとめる。これがいちばんオーソドックスなやり方だと思います。あるいは始めにみんなの話を聴いておいて、経営者が素案を作って、これでいいか、それでOKというやり方でもいいですね。やはり経営者が素案を作らないとなかなかまとまらないことが多いと思います。したがって経営者が素案で、みんなで討議して、意見を聴いて意見を汲み上げて、という形が良いと思います。
同時に今、みんなの意見と言ったって、表立って紙を出さなければ意見がないと思ったら大間違いです。声なき声を聴いてください。社員の声なき声、取引先の声なき声を聴いて文書にしていかないと、みんなその気になりません。今、恐ろしがって上に対してはみんな口をきかない時代なのです。ですからその声なき声を汲み取らなければだめですからね。これを怠ってやると、形はできるのだけれど誰もやってくれない、魂の入らないものになってしまいます。それだったらやらないのと変わりません。くれぐれもご注意ください。


それから派遣業界についてということですが、ご案内のとおりなかなか人手不足です。ですから派遣の会社としてどんな付加価値をつけるか、この競争ですね。その会社から派遣された人はこれだけ良いものがあるという付加価値のつけ方ですね。ですからある種教育みたいなもの、本当に意味のある教育ができないといけないのでしょう。その教育は客先のニーズと合っていなければいけませんから、とりあえず人を集めて送り出すような、そういうやり方では無理です。人に付加価値をつける。言ってみれば広い意味での教育産業みたいなものだと思ってやらないと、これからなかなか目の前の問題が克服できないのではないかという気がします。

「お客様にサービスの価値を理解していただくにはどんな方法があるのでしょうか?」ということですが、やはり今、本当に長く続けることがいちばん大事だと思います。長く続けていくことがサービスを理解してもらういちばん重要なことだと思います。長く続かないものはお客さんは信用しません。やはりこういう変化の時だからこそ、長く続いているものということはすごく大事だと思います。
ですから自分たちにできることはこれだけだ、これならできるということを愚直に続けていかないと、お客さんの信頼感というのは上がっていかないのではないですか。
さっきも申し上げましたように、尊敬というのは必ず長く続くというところが下敷きになっています。やはり長く続いていないものはなかなか尊敬の対象までにならないのです。ですからやはり長く続けていただいて・・・。

あとインターネットは非常に重要です。もういまやテレビ、新聞、雑誌よりもインターネットの告知効果の方がはるかに高いです。ですからインターネットでの情報提供、情報開示は十分に行ってください。
やはりものを買う前、どんな商品があるのか、値段の比較、それから使用後の感想、いろいろな所で消費者の人たちはインターネットを使っています。インターネットはやはり甘く見ることはできません。これからのメディアの一つの柱になってきますので、インターネットは戦略的にご活用していただければと思います。

「トップリーダーとして今日から、今から何を最初に始めたらよいでしょうか?」
いろいろなことがあると思いますが、一つ言えることは、話を聴いたらいいと思いますよ。特にまずお客さんね。親しいお客さんから話を聴いたらいいのではないでしょうか。「最近どうですかね?」いつも商談だけやっているお客さんがいても、今日はちょっと商談だけではなくて一緒に飯を食って、これからどうしようかと・・・。どんな感じですか? うちのサービスはどうですか? うちの商品はどうですか? 商談ではなくて、とりあえず話題も決めないで、テーマも決めないで、これからのことについてとりあえず話をしてみましょうよ。ゆっくり話をすると、いろいろ言ってくれますよね。「なんで当社の商品が良いと思っているのか、どこが悪いと思っているのか、ちょっと聞かせてくれませんか?」と言うだけで結構いろいろなことを言ってくれます。あと社員に対してもそうです。
だからとりあえず今すぐなかったら、話を聴くところから始めるだけでもおおいにプラスがあると思いますから、是非やっていただいたらいいのではないかな、そんな感じがします。

なかなか意を尽くせないご質問もあったかもしれませんが、とりあえずお答え申し上げたということですね。
どうもありがとうございました。